世界ふらふら放浪記

雑記と人生の備忘録

ポール・オースターの世界へようこそ

私が愛してやまない作家を挙げてみます。

1. 村上春樹
2. ジョン・アーヴィング
3. ポール・オースター

では次に、「お願いだから終わりがこないで」と思ってしまうほどおもしろいと思った本を挙げてみます。

1. 月と六ペンス(サマセット・モーム
2. カラマーゾフの兄弟ドストエフスキー
3. ロング・グッドバイレイモンド・チャンドラー ※今読んでますがもったいなくて先に進めない

では次に、「ついうっかり次の駅まで行っちゃった(しかも朝)」ほど熱中した作家を挙げてみます。

1. 村上春樹
2. ジョン・アーヴィング
3. ポール・オースター


くどいけど、「読んだら必ず泣いちゃう本」はこれ。

1. 遠藤周作(『王妃マリーアントワネット』『女の一生』)
2. 吉本ばなな(ただし『ムーンライト・シャドウ』に限定)


「繰り返し読みたくなる作家」はこちら。

1. 村上春樹
2. 遠藤周作
3. ポール・オースター


というわけで、このマイ調査でも分かるとおり、ポール・オースターは私の大のお気に入りなのです。
アーヴィングは都度レビューしてきましたが、今回はオースター一気レビューしたいと思います。しかし、全部読んだ作品を毎回一つずつ掘り下げるのは面倒くさいので簡単にレビューします。





『ポール・オースターの世界へようこそ』

彼の初期の作品を読んで胸を鷲掴みにされるようなショックが走りました。これは衝撃だった。

その、いわゆるニューヨーク三部作と呼ばれるのがこれ!


■ニューヨーク三部作「シティ・オブ・グラス」「幽霊たち」「鍵のかかった部屋


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この三冊は文句なしに読んで完敗しました。

どの作品も一見普通のミステリーなんですが、深い哲学思想のトリックが仕掛けられているからです。
他人を追いかけているはずなのに、その第三者がいつのまにか『自分自身』になっていくあたり。
ストーリーの中に出てくる赤いノート、主人公の名前、レッド、ブラック、ホワイトなどの効かせ方。
自分の潜在意識を知らない間に掘り起こされているような感覚。

ちょっと今まであまりであったことがないような衝撃です。
主人公はあくまでも主人公なんだけど、いつのまにか第三者になっているんです。




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これは・・・これも・・・たまらなく面白くて、駅を2回飛ばして遅刻しました。
なんか人の哀しみとか優しさとか、ジワーッとくるんですよね。どこかハートウォーミングでどこか悲しい。
オースターはそういう作品を作るのにかけては本当に上手い。アーヴィングとは違う感覚だけど、この人の場合はまず背景に初期の暗い三部作とデビュー作「孤独の発明」で徹底的に深い底に入ってますから、その後の作品を読むと余計そういうあったかさがしみるんです。苦しみを通り過ぎてたどり着いた暖かさみたいな、物悲しい孤独感があります。

自由の女神に子供の頃登った話が出てきます。
今は途中までしか登れないけど、昔はてっぺんまで行くことができた。そこで一緒に登ったお母さんが具合が悪くなって倒れちゃうんだけど、「本当の自由は上まで行っちゃったら自由じゃなくなるんだってことを学んだよ」というジョークがすごく印象的だなぁと思ってそのまま読み進んでいったら、最後にこの自由の女神がキーワードになって再び出てくるあたりでもう完敗。



■ムーン・パレス


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この作品もそういう意味ではコンセプトというか、感じる気持ちはとても近いですね。
人との触れ合いや家族のサークルを失った一人の若者が本当の意味で自立していくお話なんだけど、これもオースター独特のストーリーテラーぶり。おそらく初期の作品に比べたらもっと大衆向けになっており読みやすいのではないかと思います。私はこの作品も大好きです。


■偶然の音楽


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これは破壊に向かっていく内容です。
それまでの道筋を、ゆっくりと丁寧に描ききっています。
見えるようで見えない謎の恐怖と「救われない」話。
読んだあと思わず「う~ん」と感嘆の声を出してしまいたくなる展開。


■孤独の発明



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これは、誰かに助けてもらいたいくらい分かりにくかった。
一部と二部に分かれていて、一部は比較的分かりやすい。息子の立場からみた父の姿を描いた作品で、地味に生きる不器用だけど寡黙でまっすぐな父の姿がまるでシルエットのように浮かび上がるようなイメージ。具体的に主人公が生き生きと活躍するわけではない。ところが第二部に関してはお手上げ!難しすぎて・・・。


■最後の物たちの国で


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この作品も特殊です。以前りぼんさんのレビューを参考に「ザ・ロード」という本を読んだのですが、それに近い寓話のようなストーリーです。なぜ、社会が滅びたのかは誰も知らない。だけどそこ、から物語が展開する。どんどんどんどん究極のゼロに近づいていく物語。希望を失って先も見えない社会で必死に生きていく様子を淡々と描いています。



■トゥルーストーリーズ

エッセイです。
個人的には彼の小説は大好きだけど、エッセイはあんまり興味ありません。


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■スモーク


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これはオースター原作の映画ですね。既にレビューしてます。私が最も好きな映画です。



一番初めの「シティ・オブ・グラス」以外は全部柴田元幸さんの翻訳です。
ご自身も「オースターの本を訳すのは楽しい」とおっしゃっております。

今年に入ってからこの初期の作品を読んで完全に参ってしまい、これまで読んだわずかな彼の作品だけを読んで分かったつもりだったけど、実は大変な誤解をしていたんではないかと思い、自分で『ポール・オースター月間』と名づけてひたすらオースターを読みまくりました。

読んだあとの感想としては、別に間違っていたわけではなくオースターの別の一面を見たことによって、本の内容にも深みが増したといったところでしょうか。ひと通り読みたかった本は読んだのでいったん終了です。



おそらく私はどこか影のあるような、そんな小説が好きなんだと思います。

人が歩く道程には石ころのように小さな幸せや孤独や笑い・悲しみが転がっていて、それらが敷き詰められた道を歩いていくのが人生だと考えます。これらの本はそういった歩く過程の中にある、ほんのワンシーンに過ぎないのです。また、きっと心のどこかで似たような記憶を持っている誰かがいるかもしれない。

ポール・オースターはそんな心のすみをそっと撫でるような表現力というか説得力のある物語を書くんですよね。

一言で言うなら、彼の持っている世界観に共感できるんだと思うんです。おこがましいですけど。





ずっとオースターをレビューしたかったんですが、量も多いし言いたいことを書いていくとどんどん難しくなっていくし、いつものようにサラサラと言葉が出てこなくて、ブログなのに超真剣!みたくなっちゃって考えるだけで疲れちゃうのでおざなりにしていました。でもこれでスッキリ!

というわけで、オースターレビュー終了。
『孤独の発明』の内容を助けてくれる人、いれば気長に待ってます。
(しかしもう一度読むとなると若干拒否反応がおこるくらいキツイかも)



ちなみに、村上春樹さんのレビューはまだする予定はありません!
愛は『井戸』のように深く、レビューなんて恐れ多くて出来ないのです・・・。
一体どんな言葉で表現すればいいというのか。


チャオ。