世界ふらふら放浪記

雑記と人生の備忘録

「印象、日の出」の真実

土曜日はモネ展の初日、上野の東京都美術館に行ってきました。
久しぶりの印象画巨匠の展覧会なのでとても楽しみにしていました。
また、パリへ行った時は必ず足を運ぶマルモッタン美術館所蔵品が続々やってくるということで、さらに期待は膨らみました。


目玉はモネの有名な作品、「印象、日の出」。



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去年マルモッタン美術館ではこの作品を大々的に取り上げ、大きな展覧会を開催しました。その時に発表された「『印象、日の出』の真実」というとても興味深いテーマを、モネ展初日の記念イベントとして開催されていましたので、ついでにそれも聴いてきました。「日の出」の真実ってなんだろう?

マルモッタン美術館の副館長さん、マリアンヌ・マチューさん(すごい美人)を招いてのこの作品の実証と歴史、どのようにして著名になったのかの軌跡を詳しく語るものでなかなか興味深かったので忘れる前にメモさせてください。




1)いつ描かれたのか
実はこの絵、これまで「日の出」と言われたり「日の入り」と呼ばれたり諸説があり、この絵の中の太陽は朝なのか夕方なのかの議論がずっとなされていたそうなのですが、当時モネが滞在したこの港のホテルを発見し、気象天文学的に検証したところ、描かれたのは1872年の11月23日午前7時頃であることが判明したので、これは「日の出」つまり朝がモチーフになっていると確定されました。
このあたりが真実その一、のようです。
簡単に書きましたが、ここまでの検証には相当長い道のりがあったようです。


2)タイトルについて
もともとこの印象、日の出とはモネが作ったわけではなく、タイトルを尋ねられた時にモネが適当に「『印象』にしとけば?」と伝えたことでこのようなタイトルになりました。また、この作品は印象派展第一回出展作品で、これがのちの印象派(Impressionism)と呼ばれるきっかけになった、というのは有名な話なんですが、興味深いのがこの絵は当時全く人気を博さず、むしろ駄作として倦厭されてきたという事実です。
ここも真実その二、かな。


3)なぜ駄作として世間に認められなかったのか
筆のタッチが早すぎて審査員からはとても雑な下絵に見えたそうなんです。もともと下書きなしで描いてるらしいんですよね。確かにモネの作品の中でもこの絵はとてもタッチが薄めでなだらかな油彩のように見えます。彼の画風が確立されるちょっと前の時代に書かれているので、作品だけじゃなく画家としての腕っ節もまだ未完成という雰囲気があったという説は大いに納得がいきます。当時は「サンラザール駅」と「チュイルリー公園」の方が知名度が高く高値で売れたそうです。


4)どうして日の目をみたのか
ナントカさん(忘れた、Bで始まる名前の人)というコレクターがこの作品以外にもいくつかモネの絵画を所蔵していて、1940年あたりに第二次世界大戦の戦火から逃すためにまとめてフランス郊外のお城の礼拝堂に全部隔離したんだそうです。ここにはパリ中の美術館からも同様に絵が集められ、その多くはルーブルの所蔵品がメインだったそうです。そして戦争が終わったあとにこの作品は他の作品と一緒に「セット」でコレクターから正式に仲良しの夫婦がいたマルモッタン美術館へ寄贈されました。つまり、まったく雑に扱われていたってことですね。セット売りの中の一作品だったのですから。
このあたりはすごく丁寧に説明していたので、もしかすると真実、その三かも?

しかし、その後なぜこの絵が日の目をみたのかという肝心なところはそういえば言ってなかった!
真実、その四は「日の出」の朝霧の中へ。。
今度マルモッタン行ったら思い切って聞いてこようかな。





昔かいた記事(別に読まなくてもいいです)
「ニースの港」ベルト・モリゾ
マルモッタン美術館2010












ちなみにモネ展「印象、日の出」は10月18日までの展示、そのあとは入れ替わりで「サンラザール駅」がやってきます。だから、また行かないとならないのです。
(サンラザール駅は何度も観てるしもういいかも)

個人的にはちょっと今回の展覧会は不服です。マルモッタン美術館って本当に質の高い美術館なので、どうせならもう少しまともな作品持ってきてほしかったというのが本音。モネの初期と後期の、しかももはや(こう言っちゃなんですが)雑に書きなぐった睡蓮の習作(のように見えるもの)ばかりだったし、モネって睡蓮以外にも山ほどすばらしい作品がありますから、マルモッタンほどの力のある美術館ならもうちょっと努力できたのではないのかしら。



以上。



(特別付録)


モネで一番好きな作品
モネの「かささぎ」
(ちょっと照れくさいことかいてるので読まなくてもいいです)


これはマルモッタンじゃなく、オルセー美術館所蔵です。
オルセーの所有するマネやゴッホセザンヌドガロートレックなどのコレクションがすべて三階に集約されていたのですが、この作品はそういった印象派のコーナーではなくて、当時は美術館一階にあるドラクロワなどの大御所の大作に紛れて置かれてました。今思うと不思議ですね。
改築工事してから、今はどのフロアに掛けられているかは不明です。