世界ふらふら放浪記

雑記と人生の備忘録

夏への扉/ロバート・A・ハインライン

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(あらすじ)
時空間を越えたタイムトラベル青春群像。
物語の主人公「ぼく」は友人と共同経営をし、様々なロボットを開発していた。しかしある日、その友人と婚約者に裏切られた「ぼく」はコールドスリープ(冷凍保存延命)と呼ばれるシェルターに入り、何十年も先の未来に生き返ることを決意し、2001年に再び蘇る。その未来には、自分を裏切った友人、過去に発明していたロボットがさらなる発展を遂げ、会社は見事に大きく成長していた。



読んだあとで知ったんですがハインラインっていう作家さんはSF作家で有名らしい。また、この本は1968年に日本で刊行されたものなので、もう50年も前の作品になります。

実はSFとかあまり得意な分野ではないので大丈夫かなと心配になりながら読みましたが、残念ながら私はちょっと相性がよくなかったです。beabea図書館では基本的には気に入った本だけを選定してアップすることにしているので、本来はこれも載せないつもりでしたが、いくつかとてもかっこいい文章表現があってそこだけはとても気に入っているので載せちゃいました。



たとえば・・・・



コネチカットの冬と言えば、クリスマスカードにふさわしいだけだ。あの冬もピート(猫)はいつものように、自分のドアを開けてみてドアの向こうに不愉快極まる白いものがあるのを見つけると(やつはバカじゃない)、ぼくをせっついて人間用のドアをあけさせた。人間用のドアの少なくともひとつは、夏の世界に通じているとピートは信じて疑わなかった。ということはそのたびにぼくは、やつといっしょに、十一のドアをひとつひとつぜんぶ開けてみせなければならないということだ。ドアを開けてやって、ピートがその向こうは冬であることを納得すると、また次のドアのところへ行く、そしてひとつ開けては失望するたびに、ぼくが天候の管理を誤ったのだと、やつの非難はますます厳しいものになる。
諦めたピートは家の中にいるが、体内の水圧にがまんしきれなくなると、やむなく外に出て行く。戻ってくると、足の裏にくっついた氷が床板の上で小さな木靴のような音を立てる。やつはぼくを睨みつけ、氷をすっかりなめてしまうまでは、喉を鳴らしもしない・・・そして次に外にでるまでは、ぼくと仲直りをしてくれるというわけだ。

だが夏への扉の探索をやつはあきらめようとはしなかった。

1970年12月3日、ぼくもいっしょに夏への扉を探し続けていた。






うーむ。

なんて爽やかで軽快な表現なんだろうか。とてもかっこいい。




この本のいたるところにこういうクールな表現がたくさんちりばめられていて、古臭さをまるで感じない、現代作家の書いた話なのではないかと思ってしまうほど斬新だった。





もしこのような未知なる想像力を軽やかに表現する文学が現代ではお目にかからないというならば、

こういう古き文学こそが永遠の現代文学なんだ、と思わずにはいられないような気がします。
(個人的には近頃のほとんどがそんな感じだと思ってます)