世界ふらふら放浪記

雑記と人生の備忘録

ギター弾きの恋

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ギター弾きの恋 1999年 


(あらすじ)
実在のジャズギタリスト、エメット・レイの破天荒な人生のお話。以上。


最近ホッとしたい時は迷わずウッディ・アレンの映画を手に取ります。
何度も言いますが、完璧にはまってます。

原題「Sweet and Lowdown」のLowdownはエメットのことで、Sweetとはその恋人のハッティを指してます。
ウッディの、毎回ながらシンプルなオープニングとエンディングが大好きなのですが、このタイトルのつけ方も同じくシンプル。だから邦題のつけ方に問題がある。そもそもウッディの作品全てをフェリーニ風の邦題にすればきっと印象はもっと変わる気がするんだけど、いずれにしてもこんな素敵なタイトルが「ギター弾きの恋」などと変化してしまうのは実にもったいない話だ。

で、肝心の感想としては正直言ってあまりおもしろくなかった。
これはウッディのオリジナルの脚本ではあるけれど、彼が生み出したストーリーではなく一人のギタリストの実在の話だし、個人的好みが分かれても仕方ないのかもしれない。



1.エメットの恋人
洗濯屋で働くハッティ(サマンサ・モートン)は子供の頃高熱にうなされてから口がきけません。
女遊びとお酒と遊びに目がないエメット(ショーン・ペン)は、彼女が口がきけないのを知らずにナンパしたのがきっかけ。「会話が出来ないからつまらない」といいつつも、素直で純真で話の聞き上手なハッティといるのが何となく居心地が良くなり、二人は同居を始めます。
ところが、何でも言う事を聞いてくれるハッティをよそに、エメットはお金を湯水のように遊びに使い、貯金も底をついてしまいます。天下無敵の自由人!

しかも質素な生活をしているハッティにむかってエメットはこう言います。

「今日から贅沢はやめだ~!電気も消せ!」
「・・・・・」(ハッティは口がきけないので無言)
「ああそういえばお前。確か病院に通ってるって言ったな」
「・・・・・」
「明日から獣医に通って倹約しろ!!」(←こういうセリフまわしはいかにもウッディらしい)

ひどい(笑)。
エメットって、本当に失礼極まりない人なんです。身近にいたらうっとおしいでしょうが、映画の中では憎めません。


「俺と結婚したいなんて言うなよ。俺はフリーなギタリストなんだ。常に自由でいなくてはならないのさ。」

この姿がまた・・・カッコわる!!(笑)


2. エメットのいきがい
彼が唯一心から愛する事ができたのはギターだった。
ギターを奏でている時だけは誰しもが彼の才能を認めないわけにはいかない。
彼は天性の才能を秘めたプレーヤーでもあったのである。

ショーンペン自らギターを弾いてます。
めっちゃくちゃうまい。
と思ったら、実際の録音は吹き替えらしいのですが、それにしてもお芝居がうまい。
この人って歳を重ねるごとに味のある演技ができるようになってますね。
素晴らしかった。


3. エメットの誤算
彼はその後、つかんだニセ札をハメットの枕元に置いて彼女を捨て去ってしまいます。
そしてあるとびきり美人な女性ブランチ(ユマ・サーマン)と瞬間的に恋に落ち、なぜか結婚を決意してしまいます。ところがそれも長続きせず、エメットは、ハッティの元へと戻る。

いつもの桟橋で、いつものベンチで、二人は再会をする。
エメットは「ついてきたきゃくりゃあいいさ」と言うと、ハッティはメモに字を書いて渡す。

そこには「わたしはもう結婚してしまいました」と書いてあった。

いつも彼女はそこにいて、いつも自分だけを見てくれていると、エメットは信じていたんですね。
だけどそれは全くの誤算でした。
気付かないうちに時は流れ、同時に確信も水に流されてしまっていたのです。
それに気付かないのは彼自身ただ一人だったというわけ。


彼がプレーヤーとして活躍していた時代の後期、ハッティとの復活が果たせなかった頃の、
エメットのギターは完成された素晴らしい演奏だったと、ウッディを初め数々の著名人が語ります。
悲しみが音となり表現される。
皮肉にも全てを失った後で、彼は最高の演奏家になったわけです。

ただその後は消えて行方不明になってしまったとのことでした。

ジャズをこよなく愛するウッディ・アレンにとっては
彼の演奏だけでなく、破天荒でワガママな彼の個性とその才能のアンバランスさがまた魅力的だったのでしょうね。

かっこわるくたっていいじゃないか。

そんな感じがしました。
全然ありでしょ。
時にかっこわるくてもいいんです。

P.S ハッティ役を演じたサマンサ・モートンが実にかわいくて泣ける。
全て表情で演技するその姿は素晴らしすぎてこっちの方が言葉を失うくらいだった。