世界ふらふら放浪記

雑記と人生の備忘録

グラン・トリノ

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グラン・トリノ 2008アメリ
監督: クリント・イーストウッド
主演: クリント・イーストウッド、ビー・バン、アーニー・ハー、クリストファー・カーリー 、 コリー・ハードリクト

(あらすじ)
朝鮮戦争で深い痛手を負ったウォルト(イーストウッド)は一筋縄ではいかない頑固ジジイ。妻に先立たれ、残った息子家族とも全く折が合わず、亡くなった妻の友人の牧師とも口を利かない。更に徹底的な愛国心の強いアメリカ人で(自分もポーランドの移民を先祖に持つくせに)、かなりなレイシストぶりを発揮している困った人。
しかし、隣りに引っ越してきた中国系アジア移民の家族と触れ合うことで少しずつ心がほどけていく。


と、大筋のあらすじはこんな感じなんですけど、何と言ってもこの映画は二部構成になっていて、そのラストの最後のとどめが感動的でした。


一言でいうなら


「ずっと引きずっていた過去を身を持ってつぐない、生と死がいかなるものかを教えてあげたオンボロのヒーロー」


こんな迷惑で自分勝手でどうしようもなく優しい頑固ジジイなんて、今の世の中にいないぞ!

ただしクリント・イーストウッドをのぞいてはね。





私は幼い頃彼の西部劇のイメージが強すぎて最近まで苦手だったんです。ダーティー・ハリーやらせてもマディソン郡やらせても無数の疑問符(??????)ばかりだったんですが、「ミスティック・リバー」「ミリオンダラー・ベイビー」で一気にその長い間の誤解が解けまして、硫黄島も観なくちゃいけないねと一人つぶやいてみたりしています。

人の心の温かみ、現代の希薄な家族感だとか、低生活層の移民の現実とか、将来のない若者の現代の姿であったりとか、それをあえて不公平に主人公の目線からばっさり斬ってます。全く押し付けがましくなくて自然ですね、お見事。更に笑えるところもあるし、すごく納得できるところもある。社会派な感じも見え隠れしているのです。

また、生と死についてもちゃんとラストで落とし前をつけています。
まだ若くこれから生きていく者への前途と希望を沈黙で語り、
それまでの過去を清算するウォルトの生き様は「らしい」の一言。


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個人的には主人公のウォルトが大好きです。
多分自分も歳とったら頑固一徹バーさんになる自信あります。
頑固で気難しくて世間に呆れていて自分が世界で一番まともだと思っている。
だけど、本当は美味しいものに目がなくて、口数も少なく口も悪いけど根は優しい。
マメに芝を刈り、愛車のグラン・トリノを磨いて眺めながらビールを飲む小さな幸せ。
そばにはちゃんとなついている大人しい老犬のラブラドール・レトリバー

いいじゃないですか!!


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第一、78歳でこういう作品をイメージできるところがすごいです。姿勢も語りもまだまだハッキリしている。
とてもご立派です。
エンディングはグラン・トリノが海岸沿いを走る。
BGMはなんとジェイミー・カラム!このジャズピアニストはデビュー時代からウォッチしていただけに私としても誇らしい(ファンではないが)。なんて名誉なことなんでしょうか・・・。しかも出だしはイーストウッドご本人が歌っていたように思うのですがどうなんでしょう。
いずれにしても、なんとも素晴らしい余韻のまま最後まで浸ることができました。


すごくよかった。

クリント・イーストウッドの世界観にまた一歩近づけたような、そんな気持ちにさせられました。

ちなみに「荒野の用心棒」は父親の大好きな映画です。

(追伸)
これを書いた後に思ったんだけど、私の周りにも「ウォルトさん」が一人います!すごく似てる!!
しかも、その人が「夢をかなえるゾウ」を貸してくれたんですよ(笑)。