ルノワール展に行ってきました。
個人的にルノワールはあまり得意じゃないので全く期待しないで行ったのですが、
これがもう期待以上でして、ものすごく感動して帰って来ました。
じゃ、羅列します。
字ばっかりですみません。興味なければパスで。
1)ルノワールは陶磁器の絵付けだった
これは初めて知りました。職人だったのですね。
2)初期作品は黒を基調とした色合いがすごく多い
おそらく当時の流行です。仲良しの友達にマネがいますが、マネも黒を基調とした作品をたくさん書きました。
3)ぼかし技法の効果
この方は「ぼかし技法(スフマート)」が何よりも得意です。驚くべきはそのぼかし技法を従来のような遠近効果に使うのではなく、全体にぼんやり感を施し人物の表情を明確に描いて対比させることで、立体的且つ強調しているのです!
これ、ほんとすごいです。
4)大胆な構図
あとは人物の大胆な構図です。これが絵に大きなインパクトを与えています。
これはフツーのようでフツーじゃないです。才能ないとできません。
例えば今回の目玉作品だった、ムーラン・ド・ラ・ギャレット。
中央の女性はグッと斜めを向いています。
しかも手前の男性は観る側の一番手前のポジションのくせに後ろを向いています。
とんでもなく斬新です。
この手前の三角形の形をした人物と左背後にいるカップルの動き、たった二つだけで全体の絵に躍動感を生み出しているのです。
そしてこの絵、ものすごくデカいんです。
ダイナミックで迫力満点。
お祭りの様子が鬼気迫ってくるような、圧倒的な存在感です。
そんでもって、3)で述べたポイントも気をつけてみてみてください。
グ~っと絵にリズムが生まれます。
今度はこっち。
ぼかしまくりです。
再び3)で述べたポイントに注目。
そして単純に美しいです。
ルノワールの描く絵はどれもこれも愛らしくて平和な雰囲気ばかりです。
画家の浅ましさや不安定感がどこにも見受けられません。
だから万人ウケするのでしょうが、観るものの心を奪う方法は単にそのイメージだけではなく、彼の技法のセンスがかなりモノを言っている気がします。私はそのいかにも大衆的な作品のイメージがあまり好きになれませんでしたが、今回ちょっとその印象がガラリと変わりました。
次。
ムーラン・ド・ラ・ギャレットのあたりから10年後は色調が明るくなります。
赤茶色のような暖色を多く使った作品がとても増えます。
モネもそうでした。晩年は真っ赤な睡蓮を描きなぐっていました。
で、この構図です。
背後の女性がグイッと体をひねってピアノに手をついています。
しかもキャンバスの幅をいっぱい使って大胆に描かれています。
実に立体感が出て強調されてきますね。
これこそがルノワール。
構図のセンスがハンパないのです。
4)のポイントはこういうことを言います。
そのどれもが女性が多く、どれも愛らしくて可愛い。
実際のモデルをある程度脚色している感がかなりありますが、それでもこれだけ可愛く描いてもらえるなら私もお願いしたいところです。
(ゴッホにお願いするともしかしたらとんでもないことになりそうだし)
しかも彼の風景画がこれまた素晴らしかった。
ルノワールの風景画なんて初めてみました。
夏の日差しと明るさががまぶしいほどに伝わります。
そしてこの独特の平和的な雰囲気と静寂。
しばらく身動きが取れないほど魅入ってしまいました。
ぼかし技法はルネサンス期のレオナルド・ダ・ビンチが発祥と言われていますが、時を経てそれを自己流にここまでアレンジできた画家はルノワールくらいかもしれない。数々の印象派は独自のスタイルを作り上げてきましたが、これだけボヤってる絵はルノワールの特徴ですね。あと3)と4)のポイントは間違いないです。
そしてオルセーだけに、オマケも豪華。
「アルルのダンスホール」
いいねえ~~~~。
いろんな画家の絵をみたあとにゴッホを見ると、彼がいかに天才の更に上をいく天才だったかがよくわかります。明らかに一線を画していますよね。真っ黒い線で縁取られた輪郭で絵を描くあたりも斬新だし、ルノワールの絵みたいに少女が媚びを売るかのようにほっぺたピンクにして笑ってもいません。おそらく主張したいポイントが全然違うんです。
ルノワール展、とても満足でした。
作品数もさほど多くないので、観て疲れることもありません。
考えてみれば小さい頃から絵というものはなんとなく身近にあったので、久しぶりにそれを目の当たりにしてそれだけでなんだかジーンとくるものがありました。
なお、ここに書いた内容はあくまでも個人的主観によるもので、なんら専門的な裏付けもなければ参考した文献もありませんので事実に相違があったらすみません。
おわり