世界ふらふら放浪記

雑記と人生の備忘録

ジョルジュ・ブラックの静物画

先日ボストン美術館展に行ってきたのですが、
その中でかなり印象的だったのはジョルジュ・ブラック静物画でした。
 
今まで、ジョルジュ・ブラックはどちらかというと「とっても苦手」な部類で、美術館でピカソのとなりに置いてあると「うわ!でた!暗い絵!!」と心の中で思ってました。色が暗いだけじゃなく、なんかこう・・・奥に秘めるものも合成される色調やかたち、影も何もかも暗いからダメだったんです。
 
 
 
 
ボストン美術館展の最後の締めは、ラトゥール、マティスに並んでこの作品が・・・。
 
 
 
 
 
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桃と洋梨と葡萄のある静物 ジョルジュ・ブラック 1921年 (油彩、カンヴァス)
 
今日ブラックは20世紀美術のもっとも重要で革命的な様式上の発展であるキュビズムを、ピカソと共同で創始した人物として主に知られている。1921年の本作は、第一次大戦後のブラックの様式を代表する作例である。
 
長い水平の構図を有するこの絵画は、さまざまな方向から落ちる影によって、薄い黄色や黄土色、明るい茶色に変化する面を背景としている。カンヴァスが黒で下塗りされていることで、その上に置かれた形態が浮き彫りとなる効果が生じている。テーブルの表面については、厚く塗った茶色の絵具に櫛をかけることで木目の質感を表そうとした。葡萄はスポンジのように柔らかな、明るい緑の絵具で描かれており、黄緑色の皮の厚い洋梨はそれとは異なるごつごつとした質感を持たされている。対照的に、柔らかそうな桃は黄色と橙色の羽毛のような筆致で薄く塗られ、布を表す青と白の帯で囲まれている。画面全体の色彩の調和は抑制的であり、青と黄、緑がより中立的な色彩を背景にうまく引き立てられているため装飾的である。
ボストン美術館展 図録より抜粋)
 
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何度観てもかっこいい。
 
となりにあるラトゥールの静物画は本物そっくりの美味しそうな桃がいくつも描かれているのに対し、こちらはかなり抽象化されていますが、ものごとというのは見たままのことだけが事実ではなく、その表現はいかようにでも変化していくのであり、こういう作品を観て「ハッ」っとなるのは多分画家の意図する何かにシンクロしたからなんだと思います(勝手な想像だけど)。だってそうじゃなければ、私は素通りするところでしたから。
 
 
「きみ、一体どういう絵を描いてみたいんだ?」と聞かれたら、私はラトゥールじゃなくて間違いなくこっち。
 
 
 
 
 
 
ということで、ジョルジュ・ブラックの作品をいくつか調べてみたら、
静物画果物シリーズはとてもクールであることが判明しました。
 
これなんかもかなりシビれます。
 
 
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みればみるほど吸い寄せられる。
 
 
 
 
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こういうのを観てると全く飽きません。
 
 
光と影の対話は一体どのように行われたのだろうかとか、モノをどういう方向から見つめてこういう結論になったのだろうかとか、一枚のカンヴァスの中に含まれている哲学を絵と一緒に考えることはとても楽しいですが、美術館を出ると結構グッタリするときもあります。絵は癒されるものだけとは限らないからです。
(モネの後期の作品なんかは特にそう)
 
 
 
 
 
 
静物画果物シリーズといえば、個人的にはセザンヌとか好きですけど、ジョルジュ・ブラックも次からは私の脳みそのお気に入りリストにいれることにしました。次に美術館行く時はチェックすることにします。(でもブラックの作品はほとんどがあの薄暗いロボットみたいな絵ばっかりなんだけど)
 
セザンヌ静物画って好きだなー。絶対にセザンヌにしか出せない世界だ。
ゴッホだったらガチガチのリンゴを描きそう。
 
 
なお、ボストン美術館は美術が好きな方ならぜひ訪れてみてください(本場ボストンなんて野球ファンじゃない限り滅多に行けないぞ!)。ちょうど現地の美術館が改修工事を行ってるらしく、それで日本に60点もの作品がやってきたとのこと。アメリカのお金持ちがわんさか買い集めたコレクションだけあって、本当はもっとボリュームがあるとは思うんですが、日本で観れるのはこれが限界なのかもしれません。だけどよくまとまっていて分かりやすくおもしろかったです。かなり集中して楽しめました。
 
チャオ。
芸術の春。