<再掲>
この時のことは今でもよく覚えていて、「ねえねえオジサン」のこともそうだけど、早朝のパン屋さんまで歩いて行った道中の朝の静けさみたいなのを毎年思いの出します。日本のちょうど5月の爽やかな初夏のような日と、パムッカレの朝のヒンヤリとした空気感が郷愁を誘い懐かしくなります。
けたたましく鳴くニワトリの声を聞いて、「思えば遠くに来たものだ」としみじみ感じたのでした。
トルコ デニズリ(パムッカレ)2013年5月
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パムッカレに行く前にこのような書き込みを発見。
早朝4時に着くような時刻表を組むなアホー。
と思ったのですが、ちゃっかり私も早朝5時に着いてしまった。
それには一応理由があって、パムッカレの滞在時間は半日しか取っておらずさっさと次の町へ移動したかったので、できるだけ朝早く着いた方が時間を有効に使えると思ったので気も焦ってこれに乗ったのだった。
しかし、朝の5時は想像以上にまだ暗闇。
24時間開いていると聞いていた観光地は8時からしか開かないという事実も判明。
なので、唯一開いてた休憩所のようなところで日が明けるのを待って、観光地のオープンと同時に入れるようにスタンバイすることにした。
<ここからは休憩所で過ごした3時間の間に起こった話です>
休憩所では携帯でfacebookをみたりちょっと寝たりして過ごす。他には15人くらいの旅行客が同じように時間を潰している。
全員バス族で寝不足なのでみんな何も言わない。
パムッカレの観光地が開くのは朝の8時。
それまであと3時間。
手を洗いたかったので2階に行くとそこは食堂になっていてガラーンとしていて誰もいなかった。
窓の外にはプールと客室が見えたところで、ここは事務所ではなくホテルなんだと知る。
誰もいないと思ったのに私が通り過ぎたあとにゴトッとわずかな音がして人の気配がしたので怖くなってすぐに下に降りた。
休憩室ではやはりここにも笑わないトルコ人がいた。
流暢な日本語で話しかけてくるのだけど、けして笑わない。
いろんなツアーやバスを巧みに勧誘してくるも、こっちも寝起きなのでできればそっと1人にしておいて欲しいなと思う。
「近くにパン屋があるからそこで朝食でも買ってきて食べるといいよ」と言うので、教えられるがままにパン屋を探しに行く。
プールを囲むように客室が並んでいて、どこもカーテンはしっかり閉まっている。
一見キレイそうに見えるけど、実物の建物は刑事コロンボの映画みたいに古めかしい。
そしてとても静かで、なんだか誰もいないみたいで不気味だ。
ゴミとか古いタイヤとか転がってる汚い裏道を抜けて歩くと車道に出た。
だんだん空が白み始めてきたし、ニワトリもけたたましく鳴いている。
見ると立派なとさかを持ったニワトリ。
絵に描いたようなニワトリ。
朝を告げる鳴き声。
これがパムッカレの朝か、と思いながらパン屋に着く。
中に入ると確かに焼きたてのパンが売ってある。
かまど担当のおじさんにも写真撮るよ、と声かけるとちゃっかりポーズ。
とりあえずトルコの定番ゴマ付きパンを買う。
お礼を言ってまたホテルの休憩所に戻る。
サービスのコーヒーを頂くも、この上なくマズいけど無料だから文句も言えないので黙ってありがたく頂く。バスのクーラーの寒さがまだ抜けないからなんでもいいので熱いのが飲みたかった。
だめだ。
パンが喉を通らない。
食欲がない。
食べるのをやめてパンをしまう。
日が出てきたので外に出る。
痛かった膝がもっと悪化してきたし、まだ体が冷えているので少しでも太陽の光にあたりたい。
犬もきっと同じ気持ちなんだな、と思って撮りました↑
(このあとここに太陽が燦々と降り注いできました。犬は知ってるんですねちゃんと)
さっきのトルコ人は依然必死にお客をつかまえては売り込みを続けている。インドネシアっぽい風貌の学生の団体が捕まっていて、やれパラグライダー乗れだのオプショナルツアーがどうとか、見ているだけでうんざりするような勧誘を受けていた。
それを遠目でみて味のしないコーヒーをチビチビ飲んでいると私のところにもやってきた。
「吉祥寺でトルコ料理やをやっている兄に会いに一度日本に行ったことがある」というので、じゃあ写真撮ってお兄さんにあなたの元気な姿を見せに行くよ、と言うとやんわり断られた。
(その時は??だったけどあとになってウソだったんだということに気づいた)
すると今度はもう1人のリーダー格がやってきて私のパムッカレでの一通りのプランを聞いてくる。お昼にはもう出ちゃうよ、というと「パムッカレ日帰りなんてお前バカかよ」と言われる。「カラハユットには行くんだろ?」と聞いてくるのでそれなに?と尋ねると「お前バカじゃないのか?地球の歩き方に書いてあんだろ。ちゃんと読めよ。半日じゃパムッカレなんて何も見れないだろうが」(全部日本語)となじられる。
なんかだんだん胡散臭く感じるし、気分も悪い。
一方では観光客が2人、ここのホテルに早朝チェックインしてシャワーを浴びさせてくれないかと交渉するも「今日は満室だ。11時以降じゃないと部屋には入れられないしお前達はシャワーを浴びることもできない」とここでもなじられている。
なんか息が詰まってきたので気分転換に近くを散歩しようと外に出る。それを見たさきほどの口の悪いトルコ人が「ねえねえ(←これ口癖みたい)。どこに行くんだよ」と後ろから呼びかけてくる。ほっといてどんどん先に進む。
パムッカレにはきた。
だけど今自分がどこにいるのかも分からない。
インフォメーションセンターが近くにないから市内地図もない。
だけど私はただちょっと歩きたいだけなのだ。
自分がどこにいるかなんてあとで調べればいい。
歩いているとすぐにバス会社のオフィスを発見。
ここはちょうど探そうと思ってたとこだったのでちょっとホッとする。
(りっぱなお留守番の犬もいる)
そして通りをはさんだすぐ横には知る人ぞ知る日本食レストラン「ラム子の食堂」が!
ありとあらゆるブログでの評判はかねがね聞いていたけどまさかこんなにあっさり見つけるなんて自分でもビックリ。ここはトルコに嫁いだ日本女性が経営していて、バックパッカーにとってのオアシスのような存在らしい。看板犬のゴールデンレトリバーもいるはずだ。
おや?
もしかしてあのねそべってるワンコロべえがそうかも。
両手揃えちゃって。
かわいいんだから。
しかも近くに貼ってあったポスターの犬とよく似ている。
ちゃっかりモデルもこなしてたりして。
そうこうしているとバス会社のオフィスからおじさんが出てきたのでさっそく情報を確認してみると、出発時間はお昼の12時40分。そして値段はさっきの勧誘よりも安い。さらにはなんとラム子さんのご主人だという!口の悪いトルコ人にしつこく勧誘されたと言うと首を大きく左右に振って「あいつはダメ。いいからこっちにいなさい。その方が安全だから」と言う。その神妙な表情と口調にウソはないと咄嗟に判断する。
疑いの余地なし。
バスチケット即購入。
荷物を預かってくれるそうなので、さっきのホテルに取りに行く。
忍び足でこっそり部屋に入り、そーっとスーツケースを転がしていると、後ろから「ねえねえ」という声が聞こえる。
しまった。
ばれた。
さっきの口の悪いトルコ人だ。
「どこに行くんだよ」
あ、えーと・・・市内観光!
「じゃあこれ置いていけばいいだろ?」
あ、えーと、いや、やっぱりちょっと持って行こうかな。
「どこまで行くつもりなんだよ」
ダメだ。
これ以上ごまかせない。
そこで、他でチケットを買ったのでそこに荷物も移動しないとならないと正直に告げると、そのトルコ人は烈火のごとく怒り始めた。
「早朝5時に疲れたお前達に休むところを与え、温かい飲み物を与えてもらったのは誰のおかげだ?人に親切にしてもらったのに、お前のやってることがどういうことかわかってるのか」と大声を上げる。
やっぱり。
どおりでずっと自分の中で「信用できないセンサー」がずっとまわってるわけだ。
ご好意はとても感謝していますどうもありがとう、とお礼をしても全く納得してもらえずますますヒートアップして文句を言ってくる。
正直私はとにかくウンザリな気持ちだった。
11時間バスに乗ってきた。
まだ寒いし眠いし関節もずっと痛いまんま。
朝っぱらからわけのわからない外人と揉め事なんてまっぴらごめんなのだ。
それまでずっと日本語で話していたけどここはわざと英語に切り替えてバッサリと会話をぶった切る。
私はあまり体調が優れないみたいだし、あなたとケンカするような気力なんかどこにもない。
そう言って踵を返してホテルをあとにしたのだった。
わめく声はしばらく聞こえていたけど、あとを追ってくるようなことはしなかった。
オフィスについてことのいきさつを話すと、どうしようもないとおじさんが言う。
「あいつらは卑怯なやつさ。wifi、コーヒー、休憩室。彼らがいつタダって言った?奴らはあとで全部請求してくるのさ」といい、バス会社に置いてあった日本人の旅の手帳をみせてくれた。全部で3冊もあったので全てを閲覧することはできなかったけど、口の悪いトルコ人の様々な悪行が綴られていた。
バス会社のおじさんは、彼らをトルコの恥だと言った。
どうして彼らを糾弾しないのですか?と尋ねると、おじさんは少し黙る。
そして言った。
「みんながインターネットに書き込めばいいのさ」
おそらくここにもあるんだと思う。
暗黙のルールが。
他人の商売に口出しちゃいけない紳士協定が。
一般的にはみえない境界線が。
そしてそこには絶対に立ち入ってはいけないことを。
どうか他の人たちが泣き寝入りしないためにも。
早朝5時のパムッカレにはどうぞご用心を。
カッパドキアから深夜バスでくるとデニズリの高速道路で降ろされ、そこからミニバスでパムッカレの一角に到着して降ろされます。そこに待ち構えている日本語がおそろしく流暢な中肉中背のトルコ人がいますが、どうか気をつけて。ただボッたくるだけならまだしも、強引で一方的です。一緒にいるトルコ人、レセプションの男性もみんなグルですのでできれば関わらない方がいいです。
騙し騙されも時には仕方がない。
でも、安易に騙されるようなことはしてはなりません。
きっぱりと自分の意志を表現することは海外では当たり前のことですから、
違うと思ったら違うとはっきり言いましょう。
自分の身を守るのは自分だけなので。