フランス、パリの北にあるポワシーという小さな町に、建築家ル・コルビジェが建てたVilla Savoye(サヴォワ邸)があります。1931年に完成したこの建物は20世紀の最も優れた建築物として今もなおたくさんの学生や建築家から支持を受けています。
うんちくはあとから言うとして、まずはその全貌から。
これはサヴォアさんというお金持ちが「オレ、パリの郊外に別荘が欲しいんだよね。パリのアパートは確かに何かと便利だけど、日当りが悪いし気持ちが塞いじゃうから」といって、当時売れっ子だった建築家ル・コルヴィジェに設計をお願いしたのがきっかけ。
ル・コルビジェさんは新鋭の建築家であり、現代建築のさきがけとなった一人であるのだけど、そのエキセントリックな発想は当時の人々からあまりウケがよくなかったようで、サヴォアさんも最初は気に入っていたのだろうけど次第に遠のき、戦時中は進駐軍の基地として勝手に使用されていたというから驚きです。
さて、中に入りましょう。
一階はガレージになっているのですが、現在はショップになっています。
ここで入場チケットを買います。
入り口はスロープがあるのでそれをゆっくり登って行くとメインの二階部分へつながります。
リビングです。
天井からぶらさがっているアルミで覆われたつり下げ式ランプがとても異空間に見えました。
もう一つの特徴としては、このお庭とリビングの一体感と開放感。
天井の高さ、空間の取り方、配色など全てが計算しつくされています。こういうのを見るとつくづく建築とは数学のように足したり引いたりいろんな哲学があるのだと感じます。理数系がダメな私は憧れの境地です。
キッチン。
私はコルビジェさんの設計したキッチンはとても好きです。
窓がたくさんあって戸棚もあって、備え付けのテーブルが大きい。
白のタイルも清潔感あふれているし、何よりこの連続したひと続きの窓の開放感。
これはぜひとも参考にしたい。
さて、おとなりはゲストルーム。
このトイレは大きなクローゼットで囲われており、天窓から太陽の光が入るようになっています。
お部屋の大きさはそれほど広くない。
ベットを置いたらもうそれで終わりそうな感じ。
ここは息子たちの寝室だそうです。
コルビジェのスタイルはこういう「突然クローゼット」みたいなのが多いです。これは間仕切りとしても機能していたのは言うまでもありません。
息子たちのバスルーム。ただし、ゲストルームともつながっているのでどちらも利用できます。
息子たちのトイレ。
この廊下のブルーの壁に注ぐ光の加減が、安らぎだけじゃなくワクワク感も作り出すので、廊下はこの建物の中でもお気に入りのスペース。あとはこの直線的な感覚も好きなんだと思う。
バスルーム。
サヴォア婦人の寝室。
これは私が一番気に入っている空間。
婦人の部屋から庭につながるドアがあります。
庭はリビングともつながっています。
とても開放的で日差しがたっぷり注ぎ、自然の木々がすっぽりと建物を覆うようです。それにしてもこの窓の広がりは芸術的だと思わずにいられません。
当時はこの天井の雨漏りがすごかったといいます。完成後も何度も何度もコルビジェは修理改築に足繁く通ったとも言われています。また、戦争後には3度の大きな大改築を余儀なくされ、今はこのように展示建造物としてコルビジェ財団がしっかりと管理運営しています。
パリ郊外のイル・ド・フランスののどかな風景。ヨーロッパはこういう田舎の景色にも癒されます。
下のお庭は大きな吹き抜けになっているのが見えます。同じ庭でもこのような段差を使って空間を区切るという発想はアアルトも同じようなことをやっていました。
お庭を降りて中に入ります。
建物中央には立派な螺旋階段があります。
ドアの隙間からはチラっとリビングを望むことができます。
一階に下ります。
事務所があります。
お手洗いがあります。
水道は今でも使えます。
改めて、サヴォア邸全景。
昔のサヴォア邸。
あとから知りましたがこれは守衛室だそうです。これは昔の写真ですが今も同じ場所に同じように建っています。敷地入り口に入ってすぐにあるのですが、はじめ、これがサヴォア邸かと思ってすごいビビりました。
サヴォア邸まではバスで移動となります。
田舎だし、あまり頻繁にバスもこないのでしばらく待つことになります。
ポワシーという駅につきます。
ここがサヴォア邸までの出発点です。
これが駅です。ポワシー駅です。
そばのスタンドでホットサンドを頼んだのですが、10分ほど待たされたのでその間ブラブラしていました。黒人さんが多いですね。パリ市内とは違って少しガラが悪いです。パリは市内よりも郊外の方が時々怖く感じることもあります。(以前ゴッホゆかりの地、オーベルシュルオワーズを訪れた時もそうでした)
ポワシーまでは高速電車で行きます。地図の下の方にはベルサイユがありますね。このあたりがいわゆるイル・ド・フランスという郊外地帯のようです。セーヌ川は意外と長いですね。
いかがでしたか。
私はこれをまとめながらとても楽しい時間を過ごしました。あらためて写真を整理したらどの写真がどこだったかを思い出すことができたので、とてもすがすがしいです。
また、ちょいちょい分かると思いますが、あまりにも定規で引いたような直線的なデザインが多かったので写真を撮るのに苦労しました。どうやっても斜めに撮れてしまう。あとで編集すればいいや~と思ってその時は撮りましたが、結局めんどくさくなって適当に載っけてしまいました。あと思うことは、もっとお天気の日にくると見え方がもっと違ったと思います。私が訪れた日は雨が降りそうな曇り空の肌寒い日でいかにも秋の一日でした。写真はシャッタースピードと絞りを調整しながらかなり明るめにわざと撮ったのでそれほど感じないかもしれませんが、普通に撮ればかなり暗くなります。コルビジェの建築理念の一つは「採光」であり重要な要素ですから、夏の太陽が照りつける日に来たらもう少し違う表情がみれたかもしれません。
このあとパリのアパートに戻ってからエクレア食べました。
そしてそのあとはローマから来ている友達とクレープ食べに出かけました(前回の記事参照)。結構いっぱいいっぱいな一日だったんです。
ブルターニュクレープ TY BREIZ
では最後の最後に、少しだけ動画を撮ってきたのでどうぞ。