世界ふらふら放浪記

雑記と人生の備忘録

静謐なるルイス・バラガン邸

ルイス・バラガンはメキシコを代表する建築家。まるで幾何学的に切り取られたような空間の演出とデザインが特徴の建築は本場メキシコでしか見れません。フリーダ・カーロ同様希少価値のある観光スポットと言えます。

 

 

 

 

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ルイス・バラガンは1900年初頭〜1980年代を生きました。その間にヨーロッパを何度か旅行しているので、作品を見ると時々ヨーロッパ建築に影響を受けたようにも見えます。賑やかでカラフルな色合いが特徴のメキシコ建築よりも、実はワントーン少し抑えめなところもありますが、こだわりと固い意志を持って作られた独自の哲学によって作られたスタイルです。

 

 今回はその建築家、ルイス・バラガン邸を訪れたいと思います。

 

ここは完全予約制です。人気のスポットなので早めに予約しないとすぐ埋まってしまうので気をつけたいところ。

 

 ところが、当日私としたことが降りる駅を間違えるという失態をおかし、しかも間違えたことにしばらく気づかず地図を見て延々と無駄な時間を費やしてしまったので、焦って走って時間ギリギリに到着しました。

 

 

ルイス・バラガン邸は閑静な住宅街の一角にあります。

 

 

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あまりにも外観が質素なので一見ここがバラガン邸とは思えません。

 

 

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しかも玄関がこれ。

 

 

 

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中に入ると玄関の土間も質素。

 

 

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玄関というのは「家の顔」という概念が全く異なります。

 

 

間接照明ももちろん計算され尽くしてのことだと思いますが、あかりは窓から差し込む日差しとこれだけなので夜はかなり暗くなりそうです。

 

 

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バラガン邸の大きな特徴としてもう一つ気づいたのが、どの部屋にもドアがありました。小さかろうが大きかろうが、ドアがあって次の部屋に続くという感じです。

 

そんなことは当たり前のように見えますが、外国の大きい家はいちいちドアがないパターンが多いですから、ここはもしかすると本人のこだわりだったように感じます。次の一手を最後まで見せない仕掛けなのか、はたまた神経質だった(らしい)彼の性格か。

 

 

いずれにせよドアを開ければおっ!となります。

 

 

 

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このパネルがカッコよすぎる。

 

 

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階段を上がって左手にある扉。あそこが二階の部屋につながる扉です。

 

 

 

 

いちいちシャレてます。

 

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なんでもそうだけど、とどまるところバランスなんだって思っちゃいますね。

近頃妙にそう思います。

そのバランスがちぐはぐだと統一感がなくなる。

 でもそのバランスを見極めるのってすごく計算が必要。

 

 

 

まずリビングルームへ移動です。

有名なあれです!

 

 

 

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いや〜感動以外の何ものでもありません。

 

このお部屋、西向きなんですって。

訪れたのは朝の11:30だったのでちょっと光線が足りないですが、圧巻の空間でした。

 

 

 

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バラガン邸を訪れて思ったのが、これまで見てきたメキシコのガチャガチャ感がほとんどないってことでしょうか。

 

賑やかなメキシコのセンスは大好きなんですけど、このお宅にはそういう継承があまりないですね。他のお部屋を見ても思ったのですが、バラガン邸の思想はヨーロッパ建築にすごく影響を受けているとしか言いようがない気もします。もちろん全部じゃない。要所要所にバラガン氏の哲学がしっかり根付いているので、その融合がなんとも興味深い。

 

 

しいて言うなら「空間の間作りと色彩のバランス」が大変おもしろい邸宅です。

 

 

 

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ピカソを好きなのも大いに納得です。

 

 

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なんとなく神々しさを感じるこの大窓の十字は単なる補強じゃなく、彼の宗教心からなる十字架に見立てているのはもはや疑いがないような気がしています。

 

 

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(バラガン邸は完全予約制でグループになってガイドさん同伴で内覧します。シャッターチャンスの猶予がほぼなく、満足のいった写真がないのが本当に残念。あんまり長く時間かけてるとガイドさんが次の説明にいけないのでお待たせしてしまう羽目になり、迷惑かけたくない病の日本人としては大忙しの内覧となりました)

 

 

さて、先ほどの大空間リビングの反対側は書斎になっています。

 

 

 

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象徴的な窓。

 

 

 

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浮いてる階段。

 

 

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実際バラガンはこの部屋で時間を過ごすことも多かったとか。

 

 

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当時の写真。

 

 

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自然光をふんだんに取り入れるときれいですね。何もかも計算され尽くしてる気がする。

 

 

 

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書斎からリビングを望む。

 

 

 

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ルイス・バラガンは生涯独身でしたが、背の高い女性を好んだのだとか。

 

 

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さっきのエントランスに戻って、次のお部屋に移動します。

 

 

 

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このパネルの作品がとにかく個人的には心を打たれました。

世の中にこんな美しいものがあるのかと、今見ても思います。ほんとにきれい。

 

 

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バラガンは熱心なカトリック信者だったので、オブジェも宗教的なものが多い。

 

 

 

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繊細な人だったんだろうなと見てて感じます。

 

 

 

 

 

オーディオルームがあるのには参りました。あえて壁を天井まで接触させていないのは音楽を階下の書斎でも聴けるようにとの配慮もあるし、ゲストが来た時にヒソヒソ話を聞き逃さないようにするためだ、とガイドさんが言っていたような気がします。

 

 

 

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窓からの風景。床に落ちる影もいい感じです。

 

 

 

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寝室。

 

 

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バラガン氏はすごく背が高い人だったそうなのですが、ベッドが小さいです。

 

 

美しい聖母画ですね。

 

 

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窓は調光できるように四つに区切られていました。これ、メキシコ式らしいです。

 

 

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全部閉めます。

 

 

 

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この十字も偶然じゃないと思います。

 

 

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ベッドサイドランプがおぼろげです。

 

 

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こっちは客間。すごく気持ちのいいお部屋でした。

 

 

 

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ゲストルームが抜群にイケてると、おもてなし度がぐっとあがる。

 

 

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さっきのお部屋にも馬の置物や写真があったから、馬がお気に入りだったみたい。

 

 

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 ここも寝室。こっちが本人の寝室だったかな。忘れちゃった。

 

 

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 バラガンは毎朝6時に目覚め7時に起きるを繰り返したのだそうです。

 

 

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それにしても全てにおいてほとばしるセンスの良さ。

 

 

 

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このお部屋には一つ秘密がありまして、窓の下に小さい小窓があります。

これだけは説明の英語が全くわかりませんでした。

二回繰り返してましたがそれでも全然わかんなかった(猫の出入り口じゃないよ)。

知ってる方がいたらコメントお願いします。

 

 

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バスルームもタイル張りで清潔感ありました。

 

 

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浴槽のデザインとかもさりげなくかっこいい。 

 

 

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それにしてもよく配置とかできるなって感心します。わたしなんてペンキの色を選ぶのにも三年かかるし、家に飾る絵をどれにするか決めるのにも数年かかるというのに。

 

ちょっと理解できるんですが、かなりこだわりの配置なんだと思いますよ。

 

 

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さて、ここから屋上へ出ます。

 

 

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そこにはまるで一つの絵画みたいな空間が広がっていました。

 

 

 

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有名な作品の一つですね。開放感があってお天気のいい青空に映えます。

 

 

 

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意外なのが、生前はこの壁の色を何度か塗り替えているらしく、昔からピンクではなかったということです。

 

 

 

ビビットなピンクもいいけど、

 

 

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曖昧な肌色もすてきです。床の色と絶妙なグラデーションになっています。

こういうどこにもなさそうな色味がたまんないね。

 

 

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ああこの抜け感。

 

 

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この絶妙な抜け感こそがこの家の大きな特徴だなと思います。

 

 

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屋上の写真もっと撮りたかったけど時間切れ。

 

 

 

次は一階に降りて食堂に行きます。

 

 

 

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とにかくコレクション全てにおいてセンス良すぎ。

 

 

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ここはお客様用のダイニングで、普段はもっと狭いダイニングを使っていたそうです。

 

 

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バラガン邸もう一つの秘密。

部屋のあちこちに丸いオブジェがよく置いてあります。

 

 

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これは神経質なバラガンが意図的に置いたミラーみたいなもの。ゲストが家にやってきた時、彼らの行動をこれでいつでもこっそり見れるようにしていたそうです。よそ者が家にいるだけで心配でしょうがないんでしょうね。

 

 

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カーテンの陰になってますが、窓際におかれている瓶もバラガン本人のこだわりのポジションなのだとか。

 

 

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この家ではめずらしく天井からぶら下がっている照明がありました。反射されたデザインも美しいです。

 

 

 

 

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ではお庭へ。

 

 

 

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なかなかのお庭です。ちょっとした雑木林みたいになってます。

 

 

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そこからリビングを望んでみましょう。

 

 

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すごい壺コレクション。

 

 

 

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ちょっとした滝もありました。水の音を楽しんだのでしょう。

 

 

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ルイス・バラガンは成人してから建築に目覚め開花した人。

それって天才肌としか思えません。

 

 

 

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お庭を抜けてアトリエへ。

 

 

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このアトリエは比較的きれいだったので最近リフォームしたのかな。

 

 

 

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直筆の設計図。

 

 

 

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窓からみる景色だって絶対に計算しているはず。

 

 

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ルイス・バラガンは1988年代まで生きてこの自宅で息を引き取りました。当時のメイドさんはいまもここに住んでいて、一部住居は非公開となっていました。

 

 

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これはお家にあったコレクションの一部。アッシジの聖フランチェスコ

普段はガイコツを持ったりはしてないので(笑)、きっとこれはメキシコで作られたものではないかと予想します。

 

 

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バラガン氏はメキシコのグアダラハラという町の出身。

この証明証?にもその地名が書いてありました。

 

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ちょっと変わったガラス瓶のコレクターだったようです。

 

 

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この建物を一言で形容するならば「静謐」という言葉が一番しっくりくる。

外部からの雑音を一切シャットアウトし、光がさして影を作り、時間が無音で過ぎ去る。

明かりが細く差し込む十字架の窓や、庭を望む大窓と静寂。

 

 

 

 

 

 

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 きっとそれらが安らぎを与えたはず。

 

 

 

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間取り図はこちらから

CASA LUIS BARRAGÁN

 

 

 

 

Casa Luis Barragan

General Francisco Ramirez 12-14, Colonia Ampliacion Daniel Garz

Ciudada de Mexico CP11840

 

 

要事前予約 ※以下2018年情報

入場料400ペソ(約1,900円)

撮影料別途(これは現地で当日払います)

 

 

なんと公式HPに一部日本語が追加されていました。

www.casaluisbarragan.org

 

 

 

当日邸宅を一緒にまわったグループの中に、私以外の日本人が3人いました。

一人は誰よりも熱心に写真を撮っていたのでかなりのバラガンファンとお見受けし、あとの二人はメキシコシティ駐在のご夫婦でした。ご夫婦はもうすぐ日本に帰国するので、その前に観光地を歩いているのだそう。事前予約をご存知なくて困ってらっしゃいましたが、係りの人が特別にグループに入れてあげてました。時にそういう計らいもあるみたいです。