世界ふらふら放浪記

雑記と人生の備忘録

変身/フランツ・カフカ

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カフカの「変身」を読みました。
ここにご紹介した画像はオリジナル本の表紙のようですが、これを見た時にあまりにもイメージ通りだったので嬉しくなったから載せました。ものすごい完成度の高い小説だったので非常に読後感がすがすがしいです。すぐにカフカの別の本が読みたくなったので本屋さんに行ってきます。






(あらすじ)
ある日、グレーゴル・ザムザは目を覚ますと、その体がいつの間にか巨大な毒虫に変わっているのに気付いた。


これね、いろんな解釈があると思います。
歪んだ社会主義の残存が彼を苦しめたとか、変容の謎解きだとか多分いろいろ解釈があると思います。





私がシンプルに感じたのは、

・おとぎ話のような要素があること
・虫の表現があまりにも生々しくて気持ち悪かったこと(終始ゴキブリを思い浮かべてしまった)
・とても孤独であるということ




ザムザが虫になってしまってからは、虫ですから人間と会話もできなくなってしまったので
家族は突然そんな姿になってしまった長男を完全に突き放すようになってしまいます。

そんな家族を驚かせないように、彼は毛布の下に隠れてみたりとても気を遣って彼らを労わるのですが、想いは伝わることもなく、彼を隔離し毎晩のように家族会議をして頭を抱える家族の会話を聞きながらザムザは罪悪感を覚えていくのです。ヴァイオリンがとても上手い妹を学校に行かせてやるのが彼の夢だったのに、今では一家の稼ぎ頭だった自分に代わって働かざるをえなくなった妹の姿をみて心を痛めます。

また、彼らの様子を隔離された部屋でずっと伺いながら、人間だった頃にかなえられなかったいくつかの過去を思い巡らしては後悔をするのです。

そして・・・

彼を唯一信じてくれていたかわいい妹の裏切り。
信じてくれようとしない母親。
最期は父親が投げたリンゴがあたった傷のせいで命を落としてしまう。


だけど、彼は最後まで誰を恨むことなく無心のままでこの世を去った。



私はこの本を読んでいる間、まるで自分が部屋の明かりが少しだけもれてる暗い廊下の奥にいるような気分になりました。そこからはザムザの家族の姿ははっきり見えないんです。声だけがサワサワと聞こえるような。


おそらく、それがこの本が紡ぎだす「孤独の世界」なんだと思います。


不思議なのはその中にもどこか平和な安らぎもある。






もし私が映画監督の才能があって今ここでこのように思ったことを表現できる力があれば、
私はこの一時間で読めてしまう短編小説を、とても悲しく美しく描きたいと思うことと思います。




そんなのできっこないですけどね。