世界ふらふら放浪記

雑記と人生の備忘録

恋文/連城三紀彦

ある日。

晴れた昼下がりに、殿方が言う。
「昔付き合っていた彼女に会ったんだ。彼女は余命が短いことを知らされた。昨日あいつを病院でみたら、雪みたいに真っ白だったんだよ。今じゃ身よりもいないし、たった一人で死期を迎えている。同情なんかじゃなく、
俺あいつに惚れる。最期の時間を一緒に過ごしてあげたい。だから離婚してくれないか。」

初めは怒り心頭だった奥方もしばらくしてから、着のみ着のままで出て行った殿方へ、生活費と手術費用の足しにと、これまで二人で貯めていた貯金を彼に渡してこう言う。

「これ、2,382,500円。残高の18円は私の気持ち。預かっておくから。」

「・・・・・・俺、最高の女と結婚してたんだなぁ。」

それから数日後、奥方は意を決して離婚届を渡す。


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殿方は言う。

「最高のラブレターもらった。」


純愛文学がさかんに流行していた数年前。
普段は恋愛モノってあんまり読まないんだけど、この本だけは別格。
この前久しぶりにまた読んで、前回とはまた違う感動を受けてしまいました。

この短編小説は出てくる登場人物が「そこはかとなく優しすぎる」んです。
近くにこんな人がいたら、「メッ!!」とお説教したくなってしまうほどにお人よしで頑固。

これは大分前にドラマ化もされました。
むちゃくちゃ評判悪くてね(笑)。周りの女性陣からは大ブーイングもいいとこでした。
殿方の心理が理解できないと口々に言っていたけど、世の中なんて理解できない事だらけのような気がしまふ。


でもね、本当の深い優しさとは真の強さの裏返しなんじゃないだろうかと思うんです。

私はなぜかこれを読むと、冬のストーブみたいにあったかくてポカポカとした優しい気分になります。



連城さんの「恋文」。
その他の短編も読ませます。じわーっと染みる、良い本・・・。

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