世界ふらふら放浪記

雑記と人生の備忘録

海外で暮らそうか悩んだときにまず考えること

 

先日ラジオを聴いていると、ドイツに20年住んで2021年に日本へ完全帰国した女性がゲストで出ていた。ドイツに20年かあ。ちょうど2000年の頃といえばEU統合した頃だから、その20年の間にいろいろなことがあったのだろうなあと思いながら、20年の重みは並大抵のものではないと考えた。今は分からないけど、私が外国で暮らしている頃、日本という国はものすごいスピードで進んでいる国だったから、ほんの数年でも日本で暮らす日本人との知識や能力にとてつもないギャップがうまれ、自分の不甲斐なさと実力のなさに頭をぶん殴られるような衝撃に帰国後は日々打ちのめされた。そんなことも知らないのかと蔑まされたりもした。日本の当たり前は自分にとって当たり前ではなかったから、ついていくのに数年は苦労した。

 

事実、一度日本に帰国を決めて戻ったものの、日本ではまったく使い物にならない現実に打ちひしがれ再びイタリアに戻ってくる日本人もいた。それはそれで「それでいいのか!」とも思ったけど、つまりは海外生活が長くなると完全に逆転現象が起きて日本の進化についていけないまま自己否定感に陥り、「いままで何をやってきたんだろうか」などと思い込む人が周りにまあまあいた。多分だけど、2000年のあたりはIT革命の真っ只中だったので余計そう感じたのかもしれない。

 

 

 

でもそれもひと昔前の話だし、私が住んでいたのはイタリアだったし、昨今G7からはもうイタリア除外でいんじゃね?なんて思ってたらちゃっかり日本も除外枠の仲間入りになってるし、完全に今と昔では異なっているから、もしかしたら今こそ海外に行った方が吸収できることが多いのかもしれない。

 

 

そんな激動?の中をドイツで20年住んだ方が言っていたメッセージがとても印象的だった。

 

「もし今海外で暮らしてみたいと思うのなら、何もかも生活を変えてしまう前に観光ビザの範囲内の期間でまずは数ヶ月暮らしてみるのがといいと思います。数ヶ月の滞在ならそこまで気負いもせず気軽に旅行に行く感覚なのでストレスやプレッシャーもない。日本の生活をすべて捨てる必要もないから負担も少ない。まずはその数ヶ月の滞在で、その風土に合うか、海外生活に順応できそうなのかを試すプチ留学がおすすめですよ」

 

 

さすが伊達に20年もドイツに住んでない。本当にその通り。

 

海外生活って結構孤独だし、自由であることを引き換えにする代償もそれなりにある。もちろん数年経ってくればだんだん変化して現地の生活にうまく順応していくのだけど、無理な人は何年住んでも無理なものは無理。東京に4年住んだイタリア人は最後まで日本が好きじゃなかったし(いつも自分の国と比較しては文句ばかりだった)、イタリアに4年住んだ日本人の友人も最後までイタリアを好きになれなかった。長く住んだからといってその国が好きになるかどうかは別問題だから、数ヶ月だったら楽しい思い出とちょっぴり辛かった日々を抱きしめて終了するくらいがちょうどよかったりもする。語学は必須。語学は全てを解決してくれる。本当に重要。やればやって上達するに越したことはない。

 

もちろんそんなお試しプチ留学を飛び越えて、一切合切を捨てて長期滞在めがけるものアリ。自分もそのパターンだったから。片道の航空券を買って、大量の荷物を船便で送り、夢を描いて飛び込んだ。期待が大きかった分、どん底に落ちて辛かったけど。

 

夢はかなうものだと本気で思ってた。夢や希望も数年経ってくると生活に明け暮れやがて薄らぎ、なんのためにここにいるんだっけと気づけばいろんなものを見失っていった。振り返ればその記憶はいつも雨が降りしきる冷たい冬の初めのローマの風景で、たくさんの車のライトが雨で霞む渋滞のコロッセオ外周をバスの中から眺めながら、異国に住む疎外感みたいなのを感じた。

あれを孤独というのだろうと今なら思う。

 

 

 

 

「そんな苦労をしたらもう海外とかうんざりしませんか?自分も留学時代の4年間は結構辛かったです。寒い部屋で震えて過ごしたり、お湯の出ないシャワーに苦しんだり、給料も日本ほどもらえないような生活レベルにまた戻りたいなんて思いませんよね」と言われて確かに嫌だと思った。

 

でも、やっぱり将来引退したら海外で暮らしたいと思っている。

 

あれは朝早くついたパムッカレで焼きたてのパン屋にいく途中だった。

あれは湿り気の多い小雨の降りしきるまだ薄暗いハバナの朝だった。

朝を告げるニワトリがなんどもなんども鳴き続けるその声を聞いて「ここは日本じゃない」という現実にものすごい安心感を感じるのだった。

そう思うたびに海外に暮らしたくなる。

 

 

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パムッカレの朝(トルコ)

 

 

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ハバナの朝(キューバ

 

 

 

安い不動産を探して小規模のゲストハウスをやってみようか、オフシーズンは住むところに困っている学生に賃貸しようかなどと考えてもいるけれど、さきほどのドイツ在住20年のメッセージを聴いて、私もはたと立ち止まり、「とりあえず夏の間の数ヶ月暮らすことを数年繰り返してから決めてもいいのかな」と思いとどまることにした。事実その方が気楽でいい。

 

 

とにかくこれしかないと決めつけないで、自由な選択肢をたくさんもっておくと楽しみが増える。

何をチョイスするかは後で決めればいいから。