世界ふらふら放浪記

雑記と人生の備忘録

タクシー

これはもうだいぶ古い話ですが、昨日聴いていたラジオでポルトガルもまだ似たような状況だとのことだったので話したいと思います。


ローマでのバイト時代の話です。



通常イタリアは20時になれば問答無用でお店が閉まります。19時30分過ぎてお店に入ると嫌な顔もされるし、時にはもう出てってくれ的なことを言われることもあります。私のバイトは社長がユダヤ人だったのでとにかく商売根性がガツガツしていて営業時間がとにかく長い。昼間11時~夜23時まで営業していて、シフト交代制で働くのです。また、私たちは観光客相手を商売としているので、彼らが観光地をまわっている昼間は結構暇で、夜ホテルに戻ってきてディナーに出かける前後のお買い物客を狙いとしていたため、夜の方が多忙でした。また、当時はツアーでやってくる日本人観光客の添乗員さんを営業して団体で立ち寄ってもらって、売上の何パーセントかをお渡しするということもやってました。あの頃は日本人観光客も多かったので、1日に団体がいくつもやってくると、やれバラまき用のレザーのしおりだとかキーホルダーが飛ぶように売れ、我々日本人はその接客のために雇われていたようなものでした。あとは日本人特有の勤勉性も買われて、レジ周りも任されるようになりました。


従って、夜番で働くとお店を出るのが23時を過ぎたり、深夜0時になったりすることもザラで、家に帰るバスがなくなる時は社長がタクシーに乗って帰っていいと言ってくれました。



イタリアのタクシー、流しはほぼいません。だから、公衆電話から呼ぶしかありません(当時携帯はcodice fiscaleというマイナンバーみたいなのがないと持てなかった)。当時はソーニャというイタリア人のおばあちゃんと私の二人が家路が近かったので一緒に帰っていました。タクシーを呼ぶのは私の担当です。


まず、タクシー会社に電話して待ってる場所(または住所)を伝えます。そうするとタクシーの名前(日本でいう号車)を告げてくるので、その名前が表示されているタクシーを見つけて乗るのです。名前は色の名前が多かったような気がします。viola7とか。それが助手席の扉のところに表記されていて、そのタクシーを見つけたらこちらから駆け寄っていくというイメージです。

イタリアのタクシーはほぼボリますが、ただボるだけじゃなく遠回りしてメーター稼ぎをします。だから大方のイタリア人は自分のお気に入りのマイルートを運転手に告げることが多い。ソーニャは道にうるさかったのであれやこれやで運転手に指示をし若干疲弊させ、運転手も本当なんだか嘘なんだか言い訳をしながらよせばいいのに違うルートを行くものならソーニャの逆鱗に触れ車内で大ゲンカ、というパターンもすごく多かった。。。もうそうなるとイタリア人同士にお任せ。私はsto in zittaなのでした(黙り込んじゃうってことです)。基本的にイタリア人は老人に優しいから運転手はそこまでじゃないんだけど、とにかくソーニャを怒らせたら大変なんですよ。そっちの方。




もういっこ、小話。


深夜にヘタなイタリア語の外人女性から「タクシーをXXホテルまで一台お願いします」、なんて電話がかかってきたらいかがわしいイメージありませんか??きっと運転手もそう思ってたと思います。事実、テルミニ駅のそばは夜になると、堂々と女性が立つ代わりに客引きがうろついておりました(堂々と立ってる女性は無所属新人の素人、玄人は表舞台には立たない)。私たちが観光客を相手に商売をやっているのと同じ理由で、彼らにとっても夜のホテルこそが商売なわけです。またそれにホイホイついていく男性も結構多かったので、いいビジネスですね。

当時その界隈の客引き担当は髪の長い南米系の背の低くて浅黒いおばさまでした。
さすがに挨拶するほどの仲ではなかったけど、あちらもこちらも「お互いがここで何をしているのか」を分かり合っていたので、縄張りをけっして荒らすようなことはしないし、こちらもけっして邪魔をしません。下手に深入りも当然しません。ただ「黙認すること」が重要でした。



だからタクシーをホテルのロビーで待っているとそのおばさまの縄張りにガッツリ侵入していることになるのです。たまに「あれ?あなたここで何やってるの?」という興味本位の目で見られることもありましたが、ソーニャがいるのですごく心強かったし、タクシーを待っていることに気づいてくれればやっぱり黙認してくれました。ホテルのフロントも従業員も、我々がご近所であることはほぼ分かっているのでけっして悪い目にも遭いません。もちろん一歩外に出ればどんな場所でも自己責任です。でも彼らの縄張りの中でおとなしくルールさえ守っていれば絶対的な安心感を感じました。
※これは実は社長のおかげでもあったのですが、その話はまたあとで





時々客引きと客がタクシーに乗りたがってる時は、暗黙のまま譲ってやることもありました。その時はもう一度タクシー会社に電話をかけて一台手配してもらい、15分か20分か辛抱強く待つのです。






客引きってすぐ分かります。
うつむいててゆっくり歩いてます。
特に用事もなさそうに。
ずーっとウロウロしてます。
目は伏し目がちですが正気です。












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ここがその界隈です。


普段は夜でも明るいし四つ星ホテルが並ぶエリアですから、
一見危険だとは分かりにくいです。


それがイタリアです。




タクシーを一台呼ぶのですらあの頃はドラマがあった、という話でした。








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おわり。





(追伸)
ホテルのエントランスのところにたまに国旗が立っていて、社長の5歳になる息子がお店に遊びに来た時にグズり始めたので、気を紛らわせようと思って「ほ~らあそこのホテルをみてごらん。旗があるね」と言ったら、「(旗)Bandieraのrの発音が悪い」と注意されました。どうもすみませんね!