世界ふらふら放浪記

雑記と人生の備忘録

<セルビア> ディナーのあとで

さて、市内観光のあとは友達のご実家から夕飯のご招待!


お父さん、お母さんと感動の再会。
思った以上にまだお若くて驚きました。
そしてお母さんが流暢に英語を話すことを、息子と娘は知らずに仰天。
お母さん、「だってあなたたちと英語で話す必要なんかないじゃない」ってまあそりゃそうだけど。


これ。


セルビア流のおもてなし。

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お客様がいらしたら、コップいっぱいの水と杏を蜜で煮詰めたものを振る舞うのが一般的。スプーンで杏をすくって食べ、お水を飲み、スプーンをコップに入れて終えるという儀式みたいなもの。スプーンをコップに入れるのは日本ではあまりお行儀がよろしくない行為だと言うと、ここは日本じゃないんだから大丈夫!とのことで、遠慮なく突っ込ませていただきました。


これは友達のアパートでも同様に振舞ってくれました。

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ほのぼのした習慣ですね。



ではさっそくお母さんの手作りディナー。


コンソメスープ ポレンタ入り>
このスープは三日三晩煮込んだもの。相当美味しいです、とんでもないです。
ポレンタとはパンをふやかしたようなもので、東欧や中東の人がよく食べます。

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<ローストビーフ、(多分)マッシュルームソースとポレンタ添え、サラダ>
このソースがとんでもなくおいしい。


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そして最後のデザート。

ここから事件が始まります。
セルビア通信でも少しほのめかした、人生で初めての体験。



これ、なんだと思う?お兄ちゃんの質問から。

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ムース?
ゼリー?

答えはりんごのコンポート。
りんごをくりぬいて、松の実とナッツを牛乳で煮詰めてペースト状にしたものを詰めて焼いてます。周りには生クリームがぎっしり。お兄ちゃんはうっとりした顔で僕の大好物だと微笑んでいます。


私ですね、松の実あんまり得意じゃないんですよね。でも食べれないことはない。お母さんの手作りはおいしいなあアハハなんて談笑しながら食事を終え、伝統的なバルカンコーヒーをおいしくいただき、日本から持ってきたお土産おひろめ大会をし、帰宅の時間となりました。


実家から友達のアパートまでは歩いて約15分。観光がてら夜風に吹かれて歩いて帰ることに。さようなら~と言って気持ち良く出て、外に出たら無性に手の甲と手のひらが痒い。痒くて痒くて仕方がない。手のひらが痒いってどういうこと?なんて思いながら気にせずおしゃべりを続ける。ベオグラードは夜道に一人で歩いても平気なの?と聞くと、場合によるけど基本OKだよ、と言っていた。そのうちすごくかわいい繁華街に着いて、アコースティックギターやオルガンが流れ、とっても素朴なビアホールやレストランが立ち並ぶ界隈を抜ける。トランペットが響き、あれがセルビアの伝統管弦楽だと説明を受け、そのビアホールの薄明かりでふと自分の右腕を見てみたら、腕の裏側の柔らかい部分がまだらに腫れて真っ赤になっている。

それを見てやっとわかったんです。
あのデザートにくるみが入っていたことを。




はじめに言っておきますが、くるみを食べれば大抵すぐに反応がでるのですぐにわかります。だから人生においてくるみを食べきったという経験がないのでその先に何が起こるかなんて私には知る由もありませんでした。


だんだん顔から全身が腫れて熱を帯びてきて、汗がたくさん出てきました。友達に、ねえあと何分くらいで家に着くの?と聞くとあと5分くらいという。そうこうするうちにその声がだんだん遠くなり聞こえなくなってフラつき始めます。外は暗いので友達はまだ私の変化に気づいていません。すると角のバーから友達の知り合いが声をかけてきて、自己紹介が始まっちゃったんですが、その時です。

私の視界が、オールカラーから真っ赤に変わりました。血の色みたいに。夜なのに。
そしてモヤがかかったように目がかすみ始めました
これが何よりもすごく恐ろしかったです。
目から血が出てるのではないかと思いました。
そしてこのまま失神するんじゃないかと思いました。

そして同時に友達もバーの灯りで私の顔を見て変化にやっと気づく。
すごく顔が腫れている、一体何のアレルギーだったの?と聞かれ、「くるみ」と答えたら、さっきのデザートにはくるみが山ほど入ってたって言うんですよ。。。

がーん。
がーん。
がーん。

私は普段からそうなんですが、多少体調悪くても結構頑張っちゃう方なんですけど、そのかわり不調を訴えるということは本気で限界を超えた時だと思ってもらっていい。今がその時だと思って友達にとても具合が悪いと訴える。
(この辺りから我々の会話はイタリア語になっていきます、お互い母国語でもないのに)


私の腕につかまんなさい!と言われ、彼女の腕にしがみついてフラフラ歩き、家について時計とかピアスとか全部取ってベットになだれこみ、しばらくして気持ちが悪くなってトイレで吐いてまたベットに戻る。手の痒みはもう通り越したけど、体全体に感じるとても不快な腫れ感とナイフで切り刻まれるような経験したことのないほどの腹痛。友達は家族に電話し、お兄ちゃんはドクターを呼べと言ったらしいのだけど私がそれを拒絶し(すぐ治ると思った、確信はないけど)もがき苦しみながら耐えてみた。友達がアレルギーの薬をくれたけどすぐに吐き出しちゃったのでそれが効いたわけじゃないのだろうけど、30分我慢したら、スルッと痛みが引いてきて、やっと正常に戻ることができました。


これ、アナフィラキーショックっていうらしいです。
日本に帰ってから知りました。
くるみを食べた時に感じるいつもの唇の腫れ、喉の痒みなどはレベル1。
今回のような気管支の腫れ、湿疹、吐き気、耐えられないほどの腹痛という症状はレベル2。3までいくと気管支がもっと腫れて気道が詰まって腹痛は自己制御しきれなくなり呼吸困難になって死ぬらしいです。本来はすぐ病院に行って、アドレナリン注射をブスっとしてもらわないとダメみたい。


いつもはすぐにくるみ反応が出るからすぐ食べるのストップできるんですが、どうして今回は食後しばらくしてから反応がでたのでしょう。

アレルギー物質は火を通すことで分解されて成分が少し化学変化するそうで、今回はそのせいで反応が鈍かったのでは、という日本の友達談。そういう化学博士みたいな知識が私には全く欠如しているので後から聞いてゾッとしました。だって煮詰めたくるみなんて食べるようなシチュエーション、一般的にありませんもん!!
ただ実は食べながら、これくるみじゃない?って何度か思った。思ったけど、松の実が似たような症状を起こすし、くるみだったらすぐに反応するはずだからこれは松の実のせいだと思って完食したんです(←日本人だわ~)。


私がどれだけお母さんの手料理を楽しみにしていたか。せっかく作ってくれたのにこんなふうになった自分に罪悪感を感じ(←日本人だわ~)、どうか黙っておいてねと腹痛にもがき苦しみながらあれほど念を押したのに、結局伝えられてしまいました。ま、当然か。


ということで、せっかくの1日がくるみ大事件で幕を閉じるという結末に。


翌朝、顔の腫れはだいぶ引いてましたが、両手がグローブみたいにパンパンに腫れて数日引かなかったです。

恐ろしい経験でした。