世界ふらふら放浪記

雑記と人生の備忘録

INTO THE WILD

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イントゥ・ザ・ワイルド 2007年 アメリ
監督・脚本:ショーン・ペン
出演:エミール・ハーシュ キャスリーン・キーナー ヴィンス・ボーン



(あらすじ)
ヴァージニアの裕福な家庭に育ち、アトランタの大学を優秀な成績で卒業した一人の青年の冒険物語(実話)。
1992年4月、一人の青年が家を出て、身一つでアラスカを目指す。





いやはや、ちょっと驚きました。
1992年っていったらつい最近のことじゃないですか。それなのにここまで非現実的なことをやってる若者がいるという事実にちょっと衝撃を受けました。なんかストイックな青年なんです。「僕はお金も地位も名誉もいらないし、競争なんてしない。アラスカへ行ってみたいんだ」とひたすら北を目指すしがないバックパッカー。水は川から汲んできて、肉は野鳥とかを銃で撃ってむしって食べる。移動しながら時々は街へ下り、短期のバイトをして小金を稼いで最低限の生活に必要なツールを揃えながらひたすらに駆け抜けていく。

映画では恵まれなかった家庭環境が彼をそうさせた、的な印象を与えていましたが果たしてそれだけだろうか。





自分探しの旅?そんな安っぽい理由なんかじゃないような気がする。


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端的に言うと、「地位とか名誉とか出世とか精神的・物質的な欲を全部捨てて、そうやって全てをかなぐり捨て、人間という存在を丸裸にして、人は自然に回帰していくことが一体どれだけできるのだろうか」という疑問にたった一人で挑戦した青年の冒険物語と言ってもいい。


ヘミングウェイの短編小説に「二つの心臓を持つ大川」という物語があって、やはりこの主人公も山中にこもって一人で自給自足をするのだけど、この映画はそれの更にハード版。ヘミングウェイ1920年に書いた短編よりもはるかに過酷な自然回帰を1992年にやってしまうのだから、どこか現実離れしていたとしか思えない。


無限に広がる大自然のそこはかとない美しさと懐の深さを目の当たりにしたらどれだけ人が虚しいかを、そしてそこへたどりつくことによって本当に自分が強くなれたという実感をかみしめるためにひたすら歩き続けているような、そんな青年の勇気と意志の強さ。


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しかし、孤独だけが彼を囲っていたわけではない。
その旅の途中でたくさんのいろんな人とすれ違っていく。



パートナーの温かみを教えてくれたヒッピー夫婦、
若さゆえに頭でっかちな偏った考えになってはいけないと教えてくれた木材所のオーナー、
どこか自分と同じような壊れやすい心をもった少女、
そして自由奔放な彼を本当の肉親のように理解し、我が子のように信頼してくれた老人など。



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人間は究極の孤独へと挑戦することで真の幸福にたどりつけると信じていた彼が最期に気付くこと。



「幸せが現実となるのはそれを誰かと分かち合った時だ」




人が無力だと感じるとき。

それは自然と死を目の当たりにした時。それ以外の理由はまやかしでしかない。





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とてもいい映画だった。


自分のツボにグーッとくるような、後からこうやって思い出すともっとしみてくるような感じがした。

時間を重ねれば重ねるほど熟成しそうな映画なので、また10年後にみたらもっと違う感覚になるかも。

ショーン・ペンのセンスにもすっかり脱帽してしまった。