世界ふらふら放浪記

雑記と人生の備忘録

ワンス アポン ア タイム イン アメリカ

この映画、1984年の作品です。
大昔にレンタルで借りたのですが、観る時間がなく返却してしまったやつ。
なんかすごく疲れている時こういうのを観たくなるのは我ながら不思議です。

結論。

ものすごーく、良かった。3時間47分、飽きることなく魅せてくれました。


ワンス ア ポン ア タイム イン アメリカ(1984 米・伊合作)
監督 セルジオ・レオーネ
主演 ロバート・デ・ニーロジェームス・ウッズ

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(あらすじ)
舞台は1920年禁酒法の時代。幼い頃から連れ添った仲間たちとの闇社会で生きていく様を描く。
友情、暴力、恋愛、生と死、裏切りなど、マフィアギャング映画とは切っても切れない縁の内容てんこ盛り。
とは言ってもメロドラマみたいな展開は一切ないので、大人向けの映画ですね、完全に。

1. リアリティー
この映画はすごいですね。何がすごいって、あまりにも生々しいんですよ表現が。暴力シーンから言うとスコセッシの方が迫力ありますが、レオーネの方は迫力というよりも生々しい。でもそれが真の姿であり、リアルなんだろうけど。暴力や性描写、大胆であればあるほどリアリティーに近づいていくので嘘っぽさやわざとらしさは一切ない。

2. 悲哀
全体的に漂ってます、悲哀。もうこれなくしてこの映画は語れないんじゃないかと。
強く激しくなればなるほど悲しみがどんどん増していく。
冷たくなればなるほど内なる痛みが聞こえてくるよう。
主人公ヌードルス(デ・ニーロ)の根底にある孤独は、繊細で深くていつも小さく震えている感じがした。
彼は子供の頃、幼い仲間の一人を銃殺された仕返しに相手をメッタ刺しして刑務所に入る。
彼には忘れられない辛い過去と、切ない過去があった。
それは、死んだ仲間の最期のセリフと幼い頃から恋心を抱いていたデボラ。

「どんなに辛くても悲しくても、君を思い出すことでそれらを全部乗り越えてきた。」

生涯の中で唯一、彼が本音をさらけ出す。

けれど彼女には二人の世界はけして交じり合うことがないと知っている。

だから彼ではなく、自分の夢を選択する。

どう気持ちが重なったとしても同じ道を歩けないもどかしさをなぐさめあうように、帰りの車の中で二人はキスをする。ところが突然ヌードルスは抵抗する彼女に無理矢理暴行を加えてしまう。必死に抵抗し泣き叫ぶ彼女と自分の中の不安にどう折り合いをつけていいのか分からないヌードルス

結局残ったのは、最悪の結果、究極の絶望と自責の念、そしてぽっかりと空いた心の空洞だけ。

一人道路に佇むヌードルス・・・。その孤独な姿に胸が詰まる。

一番やってはいけない最低なことをやった、最高に悲しくて最高に優しい人。


3. ボタンの掛け違い
友情を信じて疑わなかったヌードルスとマックス(ジェームス・ウッズ)。しかし時を経て二人の価値観が次第に変化していく。常にトップであることが幸福だと信じる至上主義のマックスと、かたや誰も信用せず幻想も抱かずに地味に足場を固めていくことが最善であると考えるヌードルス。二人の溝はどんどん深くなっていき友情と人生の価値観の違いがラストでは思いかげない展開へと流れる。


4. ラスト
最後にヌードルスがニヤリと笑うシーンで終わります。
これこれ。

あの笑みの意味は一体何だったのだろうか。


実に深い謎解きである。

電車の中や誰かの会話を上の空で聞いている時や帰り道、とにかく考えてしまいました(←暇人みたい)。

私なりの解釈は何通りかあるのですが、もしその一つが本物だと仮定した場合、この映画・・・言葉では表現できないくらい「ずっしり重い」映画になります。あえて付け加えるならば、冒頭に説明したラフのあらすじに、後悔、皮肉な運命、汚さが加わります。言ってみれば、これもある種人の根底ですからね。







デ・ニーロがすごく良かった。この人が表現するヒューマニティはとても悲しげで、そつがない。
こういう役をやらせたら右に出る者はいないと思う。素晴らしかった。

この映画には当然ハッピーエンドはありません。っていうかなりようがない。

当時のイタリア系、ユダヤ系移民はどうしても低層社会の中でしか生きていくことができなかった背景があります。また、この映画はマフィアではなくあくまでもギャングなので家族の絡みが全くでてこないですね。この点についてはマフィアものとは大きく異なる点です。NYのユダヤ社会という線引きされた閉塞的社会の成功の意味とは、地位と名誉の至上主義にあると考えるマックスの信念も当時に置き換えてみればごく自然なことなのかもしれません。


とっても切ない余韻が数日続いた映画でした。
この深さを知る為には、大人になってから観た方が分かりやすいでしょうね。
音楽はお馴染みのモリコーネです。