世界ふらふら放浪記

雑記と人生の備忘録

朗読者/ベルンハルト・シュリンク

この本、大分前に本屋さんに並んでいましたがこの度ケイト・ウィンスレッドが主役で映画化されたので、
まずは原作を読んでみようと思って手に取りました。


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結構重たかったです。


(あらすじ)
15歳だった少年の主人公「ぼく」は、20歳も年上の女性ハンナと恋に落ちる。
そしてしばらくたったある日、彼女は本を朗読して聞かせて欲しいと求めてくるようになった。
しかしある日、彼女は突如として姿を消してしまう。たくさんの謎だけを残して・・・。


このお話は2部構成になっていて、

1部は都市の離れた男女の恋愛
2部はホロスコートの戦犯問題

といった感じで大きく展開がかわる。

まず読んで思ったのが、1部から2部までの道のりがあまりにも展開が急すぎてとまどったこと。
何がそれほど主人公をかきたて、何が気に入らないのか。
おそらく著者の実体験に基づいてる部分もあるのでしょうが、ちょっと独りよがりになりすぎていて分かりにくかったというのが正直な感想。

だけど時々、この本が描く情景がまるで切り取られた一つの風景みたいに美しくて、
それはなかなかステキな表現だったと思う。


(以下抜粋)
「それは、ぼくの記憶に焼きついているハンナの姿の一つでもある。ぼくは彼女の姿を記憶の貯蔵庫に保管し、心のスクリーンに映し出して変わりもせず、使い古されてもいないそれらの映像を眺めることができる。ときには、ずっと彼女を思い出さないでいることもある。でも彼女の姿が再びぼくの意識の中に浮かんできて、心のスクリーンに何枚も映し出され、ぼくがそれを眺めずにはいられないようなときがあるのだ。」

あぁぁ~これぞまさに『瞬間紀行』です!
私が言わんとしていることがこんな文章で表現されている。


「自転車をこいで前を走る彼女の後ろ姿を見ながら、初めはスカートの裾が車輪にからんでしまうんじゃないかと思って心配をしていたが、そのうちその心配も不要であることが分かり、風になびく彼女の長い髪と流れるスカートの裾を見ているのがとても楽しく心地よくなってきた。そして、その姿はいつまでも思い出す彼女の記憶となった。」


なんて絵画的な表現なんでしょう。



一度離れ離れになった二人なんですが、その後あることをきっかけに再会します。

そして、彼女が文盲であることを知った「ぼく」は、カセットテープにたくさんの朗読を吹き込んで、刑務所にいる彼女へ送り続けるのです。

これは一見ラブストーリーですが、ちょっと違うような気がします。
何か埋められないものを必死に埋めようとしている、
または足りないものを必死に補おうとする者同士の精神的な結びつきを意味していると思いました。


映画だったら確かにドラマティックになるかもしれませんね。楽しみにしています。
そして私が気になったこの時系列の段差を解消してくれていることを期待します。