世界ふらふら放浪記

雑記と人生の備忘録

パク・へヨンにみる再生と希望

 

コロナによるロックダウンの頃から韓流ドラマにすっかり沼っていて、以来いろんな作品を観てるのですが、ここ最近はパク・ヘヨンという脚本家のドラマにすっかり感動してしまい、長いドラマを二本立てで観てしまった。

 

韓国のドラマというと、財閥の御曹司やお嬢様が出てきて誰かが亡くなったり絶体絶命の大ピンチの時にパートナーが現れて救ってくれるという大王道の恋愛モノか、幼い頃から苦しい思いをした少年が大人になって報復していく復讐モノが定番ですが、この脚本家の作品の設定はそれらと全く異なります。

 

何も特別なことは起こらないし、財閥の子でもない。ごくあたりまえの平凡な人生を生きている人たちの再生と旅立ちの物語は、ラスト最終話に向かうまでまったく目が離せなくなる。そして最後は期待を超えてしっかり伏線回収して終わる。韓国ドラマのよさってそこに尽きるのではないかと思う。心の琴線をなぞるどころかゴリゴリ掘り起こされて、なぜだか自分も自分に正直に生きていこうという気持ちになるんです。

 

 

 

Netflixで配信中。

 

パク・ヘヨン作品① 私の解放日誌

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7話まではほとんどセリフもなく退屈で惰性で観ていたものの、そのあと後半の追い込みがすごくて最終話号泣。そしてラストの素晴らしさに拍手までしてしまった笑。すごく地味なドラマだけど個人的には歴代ナンバーワンかも。

 

あらすじ

特に目立つわけでもなく友達もいない、社内でも嫌われていて上司からはパワハラを受け誰からも認められていない平凡でつまらない日々を過ごすOLと、ある日突然実家の工務店に住み込みで働き始めた無口な謎の青年の物語。二人とも多くは語りません。初めは空虚な時間を埋めるために歩み寄っていったはずが、やがて存在そのものが心を埋めていくようになります。過去を詮索せず、孤独を寄り添い、いつからか信頼を築いていく姿は本質的な人間関係の絆そのものを彷彿させます。彼が彼女の名前を呼ぶシーンがよく出てくるのですが、初めはあんなにぎこちなかったのにやがていつも笑顔になってとにかく嬉しそう。「俺は君の名前を呼ぶのが好きだ」というセリフにとんでもなく好きがあふれてます笑。二人はこれまでの生活から抜け出して一からスタートすることを決めます。そして彼もすべてを捨てて彼女の元へ向かいます。ラストはその途中で終わるのですが、その清々しさといったらもうなんとも言えませんでした。人生を変えてくれるような出会い、あるといいですね笑。

 

決めセリフ、山ほどあります。

胸に響く言葉、山ほどあります。

 

 

主役は「涙の女王」(すっごいおもしろかった)でこれまた感動旋風を巻き起こしたキム・ジウォン。相手役のソン・ソックもとにかくはんぱなくかっこよかったです(髪の毛短いほうがいい)。好き嫌いが大きく分かれると思いますが、これはまさに大人向けのドラマと言えるでしょう。

 

 

 

 

 

パク・ヘヨン作品② マイディアマスター 私のおじさん

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会社のドロドロした出世群像と、歳の離れた男女の恋愛とも友情とも言えない関係性にラストまで全く目が離せない。人と関わることの大事さや温かみなど、まるで自分も忘れていたことを思い出させてくれる。

 

あらすじ

社長でもある元後輩の嫌がらせにより会社のエリート街道から外された窓際族のある男性はある日貶められるための罠をしかけられる。それに加担した謎の派遣社員は社長と共謀しスパイとなったが、こっそり仕掛けた盗聴器で日々の暮らしの様子を聞いているうちにその男性に心を動かされていく。

 

人というのはみんな言わないだけでそれぞれ少なからずいろんなことを抱えて生きているわけですが、誰にも言えないその苦しみや孤独に寄り添い合いながらお互いが縛られてきたその苦しみから最後は解放されていくという素晴らしいヒューマンドラマでした。

 

このパク・ヘヨンという脚本家のドラマに共通して言えることは、世の中のはみだしもの(マイノリティ)に寄り添っていて、彼らはみな他人には言えない隠し事を待っていること、生きていることに希望を待てないこと、人に期待をしていないこと、自分を愛せないこと、感情を抑えてずっと我慢して生きていることなどが特徴であり、そして必ず最後はみんなが答えを見つけ出して一歩前に進んでいくのです。私たちの日常に、小さくも確かな希望や勇気をくれるような物語の構成に胸を打たれました。

 

「マイディアミスター」のラストで言うセリフ、人間というのは自己治癒力が備わっているというセリフにはグッときてしまった。

 

幸せになろう。それが一番の恩返しになる。

 

お互いがいつかまたどこかで偶然会うことがあれば、目を逸らすのではなくきっと笑顔で挨拶を交わせるようになろう。

 

けして同じ道を歩むことだけが幸せじゃない。自分のことを一番理解してくれている人がどこかにいて、それぞれの幸せを願って別々に生きていくことも新しい愛のかたちなのではないかと私は思いました。

 

また、正論というのはその通り正しい論理なのだけど、日頃私たちはその正論を否定しがちに生きていないだろうか。でも、だけど、しかし、というように、できない理由で正論を押し込めてしまっているような気がするのだけど、誰かを守りたいと思う感情は大いなる正論であり勇気である。そしてそれが誰かの心を揺さぶるのだと思います。

 

 

コロナ前は韓流ドラマに全く興味を持てませんでしたし、観るようになっても途中で挫折したものも確かにいくつかありますが(ラブコメが苦手)、とにかく役者の力量もそうだしストーリー展開がうますぎる。人間ドラマはもちろんのことサスペンスドラマなんかも秀逸です。日本ではもうこういうドラマは作れないかもしれない。エンターテイメントの世界では完全に負けたと言っても過言ではないでしょう。韓流ドラマには人の心をつかむ絶対的な法則がどこかにあるような気がするのですが、それが何なのかはいまだに分かりません。

 

 

今後もこの脚本家の作品をチェックしていきます!

 

 

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余談ですがAmazonプライムでやっていた「エキスパッツ」というドラマも最近の一番のヒット作品でした。

 

時間を起こした加害者と被害者、それを取り巻く家族や友人の人間関係をとても切なく描いています。そしてほぼ全員国籍が異なるんですね。誰かの母国にいるわけでもなくほぼ全員が外国に住み、不遇な環境で生きている。正解は誰にも分らない。そんな悲しみを人はどうやって乗り越えていくのだろう。それがテーマでした。

 

 

エキスパッツ

youtu.be

 

 

ハリウッド映画にとどまらず、こういった佳作を配信で観れるようになったのは良い時代だとしみじみ感じます。監督はルル・ワンという中国系アメリカ人。とにかくすばらしかったので今後も要チェック。

 

それにしても日本語のひどいサブタイトル「異国でのリアルな日常」とありますが、まったく関連性ありませんのでご注意を。これだけ読むと、駐在妻が香港で散々な目に遭っているというように聞こえますが、物語には一切関連しません。。。