世界ふらふら放浪記

雑記と人生の備忘録

キースジャレットトリオ/ジャパンツアー最終日 May,10,2007

もうね。
最高でした。

キースのコンサートを観るのはこれで3度目ですが、トリオは初めて。
だから今回の来日を知り「絶対に行かねばならぬ」と強く思った理由は以前述べましたが、
予感は見事に、見事に的中でした。

イメージ 1




まず会場で気付いた点をあげると・・・
・演奏者と観客の呼吸(集中力)が限りなく一致していた
・観客の年齢層が実に広かった(ソロではさほど感じなかったけど)
・相変わらず外人さんが多かったし、うちの社長もいた(思わず隠れちゃった!)
・隣に座っている男の子二人組はレッチリのファンだった
・演奏後「ほんわか」気分が持続している人が実に多かった(口々に「よかった」と連呼していた)


感想を一言でいえばこれ。
実にエレガントで躍動的!!!!

最初でいきなり『bye bye blackbird』をキースが弾き始めた時は鳥肌が立ちました。この曲はあらゆるミュージシャンがカバーしていて(以前私も美術ネタ記事のタイトルに使用した事もありますが)キースの演奏バージョンを聴くのは初めてだったんです。しかもちょうどこの曲が入っているCDを買った直後だったので、それを生演奏で聴けるとは・・・。

その他 『Smoke Gets in Your Eyes』 『Butch and Butch』 『My Funny Valentine』 『Straight No Chaser』(この時は会場の一部が歓喜でどよめいた)などなどのスタンダードが続きました。
かわいらしいゲイリーの、けれど締めるところはビシッと締める渋いベースソロ。
ジャックのドラムソロは・・・・・言葉にできない。観ていて自然に微笑んでしまうくらい。興奮しました。
かっこよかった~!!

このトリオの演奏は奇跡に近い。

キースのピアノは、実際見ると分かるんですが、やっぱり天才です。
10本の指が恐ろしいほどに猛烈な勢いで鍵盤を駆け抜けていきます。
そしてピアノが柔順なワンちゃんになったみたいに彼の鼓動に呼応していく。
この一体感は奇跡としか言いようがありません。ピアノはもはや物質ではなく、息をしているんです。躍動!これは毎回観る度に必ず感じる独特の空気です。他のピアニストをみてもそこまで感じる事はない。

だけど目を閉じて聴くとそのテクニックはどこか、はるか遠くへ飛んでいき、思い描くは自然体の風景。

ある時は、月夜の下のさざ波みたいな静寂のこだま。
ある時は、真っ赤な大輪の花がスローモーションで開花していくようにドラマティック。
これが繰り返し繰り返し、頭の中でフラッシュバック。特に演目後半からラストにかけて。

この人の演奏するピアノにはストーリーが存在していて、『Straight No Chaser』ので出しもそうだったけどまず即興(インプロヴィゼーション)から入る。聴いていると「あ、あの曲なのね」っていうふうに繋がる。まるで天から啓示を受けたような神々しさ。そしてそれに優しく重なっていくゲイリーとジャックの演奏。ピアノを弾きながら独自の世界や空間を音を通して築き上げていくタイプなので、型にはまったスタンダードが好きな方には向いていないかもしれない。


つまり何が言いたいかと言うと
キースジャレット率いるトリオは、音楽を超えてもはや芸術だという事です。

東京奇譚集』という本で村上春樹がトミー・フラナガンの演奏を聴きにジャズバーへ行った話を思い出した(実に羨ましい話。そういえば村上さんもフラナガンのファンだったな)。そこで「今日彼が、あの曲を弾いてくれたらいいのにな」と思っていたら、突然彼は誰も知るはずのない、そのマイナーな曲を弾き始めた・・・というくだりがあった。不思議な偶然の一致。。


なので会場で私も念じてみた。
「It's All in The Game を演奏してくれないかな。」
私が愛してやまない曲の一つ。これを聴くだけで幸せ度MAXまでいってしまうくらい。
でもこれはピアノソロなので弾くことは現実ありませんでした・・・。

ついでにもういっこ感じたこと。
「場末の酒場などで、一度このトリオを聴いてみたかった!」
お酒をちびっと飲みたくなったんです。
ジャズはコンサートホールではなく、やはり酒場がピッタリだと思うのです。

というわけで。
彼について誰が何と言おうと誹謗中傷を浴びようと非難されようと、私は一ファンとしてこれからも聴き続けていきたいし、おばあちゃんになったら程よい熱さの玉露をすすりどら焼きでも食べ、犬と一緒に縁側かなんかで日向ぼっこでもしながらこういう音楽を聴いていたい。

でもこの前救急車にひかれそうになったので早死にタイプかも。
まぁいいや。

"GOOD NIGHT, GOOD MUSIC."



おそまつ君。