世界ふらふら放浪記

雑記と人生の備忘録

クラッシュ

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この映画を観た後の、あの暗い気持ちたるや。

「クラッシュ」(厳重注意!:クローネンバーグの方じゃないよ!)は、本当にレビューするのが難しいのでちゃんと出来るか不安。ちょっと頑張ります。

この映画はジャンルで言うといわゆるヒューマンドラマです。
<登場人物>
①白人女性(冷え切った夫との関係や人間関係に絶望を感じ、ヒステリックになっている奥様)
②白人警官1(黒人を毛嫌いする非道警官)
③白人警官2(まだ柔順な清い心を持った警官。②の相棒)
④黒人番組プロデューサー(仕事に成功し、裕福で幸せな生活を営む、俗に言う「勝ち組」)
⑤南米混血系奥様(旦那様を溺愛する④の奥様)
⑥黒人職人(鍵修理屋さんを生業とし、幸せな家庭を持つ一般的な階級)
⑦黒人ゴロツキ2人組(「車泥棒」を生業とする、下級階層)
⑧ユダヤ人親子(雑貨屋を営む移民親子)
⑨黒人刑事(生き別れた弟を探す)

これらの登場人物がリンクにリンクを重ねて展開するストーリー。全員主役と言っても過言ではありません。

私の見た、この映画のテーマはこれだ!

<1. 人種差別に対する価値観の壁>
これは間違いなく要素に含まれています。しかもかなり殺伐と描かれているので一見印象深いかもしれません。黒人社会だけでなく、ユダヤ人や中国人などの移民難民、いろんな問題を抱えているアメリカが浮き彫りにされてます。しかし、私が思うこの映画の本当の言いたい部分はこれじゃない。

<2. 人間関係の不条理さ>
例えば今日、スーパーでふとすれ違った男性に「変な顔」と言われたら、女の子なら誰しもが傷つくと思います。気にしないつもりでも、たまたま「最近イケてないな」と思っていたらなおの事、それがトラウマとなり友人に「誰か紹介するね」と言われても、飲みの席で「私はどうせ変な顔だもん」とうつむきっぱなしで「暗い人」というレッテルを貼られるかもしれません。
しかし、時をスーパーに戻すと、その女の子に暴言を吐いたその人は、実は好きで好きで仕方なくてたまらなかった片思いの女性に「あなたなんて全く興味ないんだけど。」とズバリ言われてしまい、相当にショックに打ちひしがれている時に、たまたま通りがかったスーパーで、全然変な顔でもなくむしろかわいいくらいのその女の子に行き場のない気持ちを小さな復讐に変えただけだったのかもしれない。

この映画はそういうストーリーです。
何気ない一言、何気ない行動、何気ない瞬間や偶然。
それらが黒い尾を引いて、話は大きな悲劇となっていくのです。

でもそういう偶然って日常にすごく、当たり前のように溢れている。
例に挙げたスーパーの話みたいに。
言いたいのは「常に相手の立場に立って考えよう」などというような博愛主義的思想ではなくて、
(もしそれが本当にその瞬間に出来たらその人は神様だ!)
こういう不条理なものの上に世の中成り立っているという事。
悲劇が起こってしまう。
でもそのきっかけって実はほんの些細な出来事であったり、誤解の産物であったり、自分の弱さであったり他人の不幸が招いたものであったり。
どうにか出来ればいいけど、どうしようもできないものとか。

これって本当に悲しい事だと思います。
でもそれが現実だったりする。
そもそもが不平等で不条理なものなんです。

でも・・・けして救われない訳じゃない。それが次のテーマ。

<3. 人間の二面性>
この映画がまだ救われる可能性を持っているとしたらここ。
前述のようにどんなに生きていく事にドロップアウトしかけても、過酷な選択を強いられても、または非道な行為をしてしまったり、自分の弱さを肯定せざるを得なかったとしても、
「人は優しさを包み込む心がある」。
初めに挙げた登場人物全員に悲劇が起こると同時に、もう一つのこの一面があるからこそ救われる。見事です。これを表現できたこの映画に惹かれたのはここです。

ただしこの映画はハッピーエンドではありません。
かと言って絶望的な終わりでもありません。
悲しいだけ。

(⑥鍵修理屋の黒人男性が娘の小さな女の子とベットで話した会話)
「お父さんは小さい頃からかぶっているケープがあるんだ。でもこれを君にあげるね。」
「どこにそのケープがあるの?」
「見えないのかい?これは透明のケープなんだよ。これからはこのケープが君を守ってくれるからね。」
そう言って鍵修理やのお父さんは娘に見えないケープを渡す。

(⑥鍵修理やのお父さんが⑧ユダヤ親子のお父さんに銃で撃たれる時)
「パパは大切なケープをもう持っていないの。今は私がそれを持っているからパパを守らなきゃ」
そう言って引き金を引いた銃口の前にいるお父さんへ彼女が向かって走るシーン。
そして修理やのお父さんに銃を向けたそのユダヤ父の気持ち、その経緯。全部ひっくるめて考えたら泣けた。誰かを失った時と同じくらい泣きました。

「クラッシュ」というタイトルは、そういった人々の人生での「出来事=クラッシュ」となぞらえているそうです。そして日常の、ある意味「当たり前」な出来事を、ものすごく深く表現しています。

こういう映画が好きな人には、お勧めします!
この類があまり好きでない方には、あえてお勧めはしません!

何となく言いたい事は言えた様な気がするので(ほんとかな)ここらで締めます。
分かりにくかったら流して読んでもだいじょーぶ(・ε・)


タンタカターン!次回は遂に第一位の発表です。