世界ふらふら放浪記

雑記と人生の備忘録

ローマほのぼのストーリー(爆発編)

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ローマでの生活。
私は学費をせっせと稼ぐ為に、学校が終わった後はアルバイトをしていました。
場所はローマ、テルミニ駅に程近く、4ツ星ホテルやバックパッカーの安宿がひしめき、更にはローマでも有数の「絶対近寄りたくない場所」にあたる危険な界隈。
なぜそんなとこで働いていたかというと、答えは簡単。
「他に働くところがないから」

ある日。
私がアルバイトを始めて一週間が経った頃。

ボスが言った。「スペイン広場に行ってくるから、あとを頼むぞ。」
私とその他従業員。「はいよー。チャオ~。」
ボスはモトリーノ(バイク)に乗ってブルルルル~と夜の街へ消えた。

いなくなったら、もうそこは天国!!
みんなでお喋りに花を咲かせ、エスプレッソのテイクアウトをし、baci(バーチ:画像参照)を食べ散らかし、更にはお客をひやかし(ひどい店員)やりたい放題!!
さて、時計の針が20:00を指す頃には、同僚達もチラホラ帰り始め、残るは私と他一名。
井戸端会議はまだ続きつつも、なんか臭う。

ふと気付くと何やら外が騒がしい。
お店のモニターで外の様子を伺うと・・・・・。

「ガスだーー!ガスが漏れてるーーー!!」
え!?
店先に行ってみると、まん前に駐車してある車から煙が出ている。
そして爆発処理班みたいな作業着を着た男性が数人、車の下を工具みたいなのを構えながら不審げに覗き込んでいる。その周囲は人だかり。
あれよあれよと言う間に消防車が2台駆けつけ、ドラマみたいな黄色いテープを車の周囲に張り始めた。
「これ、まずくない?」
車だけじゃなく、お店もすっかり包囲され、店内に残された私達。
ボスに電話せねば!
プルー。プルー。「あ、ボスですか?あのー・・・車がー・・・ガスでぇー・・・」
(注;わたしは当時イタリア語をそんなに流暢には話せなかった)
「何ィ?なんだか分かんないけど5分で着くからそこで待ってろ!!!!!」
危険を察知したボスはガチャと電話を切る。
同時に消防士が顔面蒼白で店内に入ってきて「君達!何をやってるんだ!早く逃げろ!」と叫ぶ。
でもお店のドアの閉め方が分からない。何せ働き始めて本当に間もないので、と言ったら
「命が惜しくないのか!!!」

そりゃあ、惜しいっすヨ。
そこまで言われたら逃げるしかない。お店を二人でカバン一つで出て、テープの向こうの人だかりに紛れる。車はいよいよ爆発か。煙がモクモク大きくなり大騒ぎでパトカーまで現れた。
「おそろしい町、ローマ」なんて思っていたら・・・・・

ブルルルル~。
どこからか、聞き覚えのあるエンジン音が。

そう、それはうちの「ボス」。
ボス、ホンダのモトリーノでマッハで登場して、その黄色いテープをぶち破って店の前(すなわち車の隣)へキキー!と斜め体勢で停止。
コートをさっそうと翻して更にマッハで店に入る。
「ボスぅ~」と叫んでも聞こえるわけもない。しばらくして爆発寸前かと思われる車の前にボス現れる。
そして私達を見つけた瞬間、彼が叫んだ一声は・・・

「お前らなにやっとんじゃこのすっとこどっこいが~!!」
ボス、鬼の形相でダッシュで近寄ってきて私達の襟足を捕まえて群集の前からつまみ出される。
「車がー・・・・ガスでー・・・ドアがぁー」相変わらず全くイタリア語で説明が出来ない。
「うるせーこのクソガキめが!何を考えて生きてきたんだコノヤロウ!」
「えっとー・・・」
「レジから離れて外に出るとはどういう神経してんだメス犬が!この隙に泥棒が入って店を荒らしたらどうする気だったんだこのトンチキ野郎めが!」
「トンチキ野郎って何て意味ですか?」(←まだ理解してない)
この会話、この姿を群集にさらしながら店に引きずられる私達。
そこで延々とお説教。

そこで本日のボスの格言。
自分の部屋で裸でいた時に誰かが入ってきたら防御するのが当たり前だ

なんか分かったような分からないような、結局私達もふてくされて夕飯に出されたピザを黙々と食べた。

どんなに危険を顧みても、命が惜しくないのかと言われたら逃げるのが普通です。

けれど、ボスの価値観は、どんなに危険でも店を空っぽにしていくのは非常識。となるわけです。

ちなみにうちのボスはユダヤ人でした。
その後日本に連絡をして「ユダヤ人の歴史(上)(下)」を送ってもらったのは言うまでもありません。

■このストーリーには一切誇張表現はございません。全て真実に基づいたノンフィクションです■

あ、車は結局爆発未遂で終わりました。単なる故障だったみたいです。ローマらしいオチ。
Ci vediamo alla prossima volta.(ではまた次回にお会いしましょう)