世界ふらふら放浪記

雑記と人生の備忘録

ロング・グッドバイ/レイモンド・チャンドラー

私が村上春樹さんの翻訳した海外文学を読むのは多少贔屓している部分も否めない。

だけど、村上文学を愛する以上、彼の手がけた作品を素通りするわけにはいかない。

なぜなら、彼の優れた翻訳能力と作家の手腕が、過去のあらゆる古典文学に息を吹きかけ的確に現代に蘇らせてくれるからだ。その手法には毎回驚かされるし、彼自身が大きく影響を受けたと思われる作品もいくつかある。それを読んでいると、私が好きなポイントと当然オーバーラップするので読んでいてとても楽しい。
その「楽しさ」こそが読書の醍醐味だと思うわけである。



そしてこれは久々に「先に進むのがもったいなくなる」本だった。


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(あらすじ)
私立探偵フィリップ・マーロウは億万長者の娘シルヴィアの夫テリー・レノックスと知り合う。
有り余る富に囲まれていながら、男はどこか暗い陰を宿していた。何度か会って杯を重ねるうち、互いに友情を覚えはじめた二人。しかしレノックスは妻殺しの容疑をかけられ自殺を遂げてしまう。が、その裏には哀しくも奥深い真相が隠されていた。(※裏表紙から抜粋)



何が面白いかって、はっきり言うとこうである。


「登場人物全員の面白さ」


これに尽きる!!!



謙虚でマイルドなテリーを筆頭に、どこかに秘め事を抱えているアル中三流作家、誰もが振り返る美女のその妻とその姉の二人の姉妹、腹黒いメキシコ人の使用人、マスコミに姿をみせない億万長者の主、謎めいた三人の医師、凶暴で手のつけられない使用人に横柄な警察官。

でもやはり、どこまでもクールでハードボイルドな私立探偵フィリップ・マーロウの存在がこの本に大きく貢献しストーリーそのものを牽引している。




村上さんはあとがきで「この本は数え切れないくらい繰り返して読んだ。その後も折節に触れて時には日本語、時には英語で、時にはスポット的に読んだりしたこともある」と書いてあった。
ロング・グッドバイ」を読み進めながら、私も子供の頃に夢中になった本を何度も何度も思い出した。この本はそれほどどこか懐かしい感じのタッチがするのである。
そしてその雰囲気を十二分に発揮された村上訳はさすがだとしか言いようがない。
これまで村上氏の翻訳は全部とはいかないまでもマメに読んできたけど、サリンジャーライ麦とチャンドラーのロング・グッドバイは太鼓判を思いっきり押したい。










ちなみにこれは子供の頃に死ぬほど繰り返し読んだ愛読書。


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まさに「愛読」を貫いた一冊と言っても過言ではない。


チャンドラーの本とこの本をリンクさせるのはどうかと思うけど、幼い頃に受けた衝撃の大きさで言ったら同等。