世界ふらふら放浪記

雑記と人生の備忘録

おいしい生活

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おいしい生活(2000年 アメリカ)
ウッディ・アレン
トレーシー・ウルマン
ヒュー・グラント

おもしろかったー。何度も笑ってしまいました。
ウッディ・アレンって本当に笑いのセンスだけじゃなくてリズム感のある人ですね。
本当に尊敬してしまいます。

(あらすじ)
前科のある強盗歴を持つ夫と、ネイルサロンで地味に生計を成り立てている一組の夫婦。ひょんな事から一獲千金の大金持ちになり華々しく社交界デビューをし、生活は一転する。が、二人とも周囲の高貴な会話についていくだけの教養も知識もセンスもなく、気付けばそんな二人を大きな破綻が待ち受けていたのであった・・・そんな男女の姿を描いた、りっぱなコメディー。


1. ウィットに富んだキレのあるジョーク
何がおもしろいかって、あのジョークです。アメリカ人とかヨーロッパ人ってジョークをオブラートに包んで話すことが多いけど、この人は本当に包み隠さずダイレクトなんですよね。我ら毒舌にめっぽう強い日本人には物足りないと感じる人もいるかもしれないけど、そういう背景を知っておくと彼のストレートさが何となく分かると思います。

そうそう、ウッディのジョークにはボケとツッコミが存在しています。


2. 「知識と教養のなさ」を演じる
もうこの映画で何が良かったかというと、ウッディの価値観で捉え演じた中年夫婦のなりたち。
売れたクッキー屋をフランチャイズにし、瞬く間に量産化大企業へと拡大して社交界デビューを果たすのですが、何と言っても知識と教養がまるでないので全く話についていけないんです。それに気付いた妻が一生懸命丸暗記しながらやれ読書だ、絵画だ、オペラだと教養を深めようとするんですが・・・土台無理なんです。
真似事と感受性は全く相容れない。

ハンナとその姉妹」という彼の80年代の作品で、絵を買いに来たロックンローラーに画家がこう言うシーンがあります。『なに?!ソファーの色に合った絵が欲しいだと?ふざけるな、とっとと帰りやがれ!!』

こういう脚本を書いているウッディだから、今回のお話はそういった彼の言わんとしている事の、ズバリ逆回転バージョンでしょう。
皮肉っていると言っても、そこにあまり厭らしさを感じないところがまたウマイ。
彼の普段の映画はいつもインテリアもBGMも、歩く街角でさえ実に見事な彼のハイセンスが所狭しと溢れています。けれど今回は全く似つかわしくない(センスのかけらもない)インテリアとファッションセンス。

これ、わざとなんですよね・・・・・・わざと外してるんです。

そして「彼にとってはありえない生活」を自ら演じているんです。

うーん、やるなぁ~!!

ストーリーは単純だけど、別に何かを啓蒙したいとかそういう意図ってぜんっぜんないんだと思う。
ただ単に「ある一組の泥棒を家業とする夫婦がいましたとさ」って感じなんだと思う。
そこを一応起承転結つけてるけど、全体的に転結がおもしろいんじゃなく、教養を持つことが唯一欠けているとしたらそこを何とか身につけたいと必死に頑張る奥様と、「もう俺ついていけないよ~」とペプシやポップコーン食べて、「化学調味料が入った中華料理。こういうものが食いたくなるんだよ。」などと言いながら相変わらず頭の弱さで結果に結びつかないどうしようもないことを考えている夫の・・・やっぱり会話がおもしろい。

そこには超インテリのウッディ・アレンの、いつもの毒舌「君達のような人たちはどんなに富を得たところで教養なんて養えないのさ」という半ば諦めに近いものと同時に、「それでも世の中の様々な人間模様があって、そんなものがなくたって十分ハッピーに生きていける世界もある」って言ってるような気がします。肯定もしないけど否定もしてない。この2つのバランスを、とっても素敵にコミカルに描いている映画でした。(こういう優れたセンスの映画が他にあったらぜひ教えて欲しいな!)

それと、これは全くの私見ですが、そういう種類の人を世間は好奇心の目で見ちゃいますよね。だから皮肉っているのは意外と、見ている側の私たちにも向けられているのかもしれません!(ウッディなら考えそうな事です)


始まりとラスト。
この人の映画は昔のも今のもそうだけど、バックが真っ黒で始まり真っ黒で完結に終わるんです。
彼のこだわりは現在も変わってないし、そういうのってちょっとカッコイイなって思います。

タイトル「おいしい生活」→原題 Small Time Crooks
なんで邦題がこんなヘンテコなのか、さっぱり理解できません。さりとてこの原題を訳すのは確かに難しいかもしれない。うーん、うまい言葉が出てこないけど、広義で「ちっぽけないかさま師」かな。私のネーミングも全くイケてないですね(笑)、売れなそう!(でもこの原題、ちょっと奥が深そうです)


いろんな意味が凝縮されているけれど、軽いタッチの素敵な映画でした☆彡