世界ふらふら放浪記

雑記と人生の備忘録

夕暮れ



バラデロ日帰りツアーが終わってから、イングラテッラホテルの前まで送ってもらい、その後ホテルに帰る途中お夕飯を食べなくてはならないので、その辺にあるお店に立ち寄った。


お店といっても、ハバナは私のような数日しかいない土地勘のない観光客が外食するところがほとんど見当たらなくて、ただぶらぶら歩いて気乗りのしないお店に無理やり入ってバサバサのパンか生焼けのハンバーグを食べるしかないのだけど、今回は鶏肉のから揚げがおいてあったので嫌だったけどとりあえず食べないと死ぬので入る。


すると、お店の人が「うしろに日本人がいるよ」と教えてくれて振り向くと女子一人旅が一人で(まずそうに)食事をしている。お店の人に言われた以上声をかけずにはいられなくて、「こんにちは」というと驚いたように食事の手を止める。


彼女はまだ若くて20代くらい。見かけも格好もいかにも日本人なんだけど、よく一人で頑張ってこの若さでこのタフなハバナにやってきたなと感心する。その年代だったらフツーはパリとかニューヨークとかソウルとかなんじゃないかなと思うし、見た感じも薄汚れたバックパッカーとはちょっと言いがたいまともな服装だった。だからこんなしみったれたよくわからないカフェというか食堂で、一人でテーブルに着席して食事をしていてなんだかすごくかわいそうになってしまった。余計なお世話なんだろうが。


ハバナって食べるところ探すの大変じゃないですか?
と聞くと、
「そうなんです!ほんとに全然ないです!」

それ、おいしいですか?
「うーん、そうでも、、」

ホテルはどこなんですか?(←個人的にはこれが一番興味ある)と聞くと、なんだか旧市街からはずれた遠いところの下宿にいると言っていた。

なんだかな~。。。。。。感がヒシヒシと漂い、言葉は少ないけれどハバナ疲れを共有したような気がした。

大変ですね、遠いとここまで出てくるのに。
「はい、徒歩で30分かかります」
大丈夫ですか?治安とか、気をつけてね。
「はい!」

そういってお別れをした。


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チキンと脂っこいフライドポテトを紙袋にいれてもらって、とりあえずすぐホテルに帰る気分にもならず、まだ薄ら明るい夕暮れの海岸沿いを歩くことにした。



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ガイドブックやいろんな書き込みの通り、ハバナの人々が大勢集まり思い思いの時間を過ごしているみたい。波は穏やかだけど大して気持ちよくもない。ハバナって不思議。





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さっそくみんなと同じようにその辺に座ってチキンを食べる。インスタントのから揚げ粉の味がする。どこで食べても同じような味だなと思いながらモグモグしていたら、一人のおじさんがニヤけて声をかけてきた。

「どこからきたの?」
日本。
そういうと、急に顔色を変えて「おい、そのチキン一個よこせ」と言われる。
初めからそういえばいいのに、親しげなふりなんかしちゃってさ。

私は何もいわずに紙袋から一番脂っこそうなチキンを取り出して無言で渡す。
おじさんも無言で受け取り、どうももいわず立ち去った。

そこで知る。
なるほどね。
ハバナは外で飲み食いするとこじきにたかられるんだ。
気をつけよう。

ということで、食べるのをやめて散歩する。

ハバナでは考えてみると外で飲み食いしている人がいないかも。
そんなことしてるのは外国人くらいなのかもしれない。
なんだか食に関するカルチャーの違いというか、生活レベルの差をちょっと感じる。
でも実際のところはどうなのか知らない。
私はどのみち数日間しかいないただの通りすがりの観光客なのだから。








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ハバナのことは事前にいろいろ調べてきては見たものの、実際のところは来てみてもよく分からなかった。私はこれまでいろんなところを旅してきたけれど、こうも大陸が違うところにはあまり来たことがないからなのかもしれない。


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こないだもラジオでキューバを旅した人が絶賛していたクラブを検索してみたら、単に観光客向けのショーをやっているお店で自分はそんなところに行きたいとも思わなかった。本当はもうちょっと地元の人が行くような、素朴で小さなバーとかを経験してみたかったけど、リサーチ不足なのか世間知らずなのか、いずれにせよ意欲もなくなってしまった。




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ハバナを良く言う人は大勢いる。

でもごく少数にちょっと気質が合わなかったという人もいた。その理由は彼らのサービスの悪さが主な原因で、その理由はおおかた「社会主義だから」と言った。

でもその考えは少し違うと思う。
秩序のない国はどこに行ってもあるし、不便なことのほうが当たり前なんだと思う。社会主義であることが彼らの足かせになっていることは多々あるとは思うけれど、旅行者が感じる違和感と彼らの政治的背景はそこまでかかわりがないんじゃないだろうかととても違和感を覚えた。社会主義だから、という言い方はいささか都合がよくて差別的な言葉のように感じてしまう。




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完全に暗くなると帰り道が怖くなるのでホテルに戻ることにする。
すると後ろから歩いてきた現地人にいきなり大声で「中国人!」とからかわれた。

アジア人を見れば全員中国人だといまだに思っている教育レベルの低さを改めて感じるのだけど、ここは昔のイタリアのようだという錯覚にも陥った。あの頃のローマの街角が、ハバナを歩きながら何度もフラッシュバックする。そんなふうに、過ぎ去った過去や一瞬の瞬間は、時を経てもこんなところで思い出したりするものなんだなと考えたりもした。こういうことを反芻するのは一人旅の良さでもあると思う。


ホテルまでのスラム街を歩くと突如モダンでおしゃれなレストランが突然出てきて、こっそり中をのぞくと西洋人が思い思いのおしゃれをしてお酒を飲んだりしている。Tシャツとジーンズにスニーカーの自分は、結局いつになってもこのスタイルで、旅をしてもどこか疎外感を感じるなとも考えたりした。こんなふうに孤独をかみ締めるのも一人旅の良さだと思う。少なくとも自分はそういう孤独はみんなが言うほど嫌いじゃない。

別にいいじゃん、なんだって。
そんなふうに思うのも心地がいい。
それはそれでとても自分らしい。






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「とにかく歩く。そうすることで自分を取り戻す」
野村訓一さんが以前ラジオで言っていたけど、本当にその通りだと思う。
見知らぬ町で、誰もいない場所で。

それはけして旅だけに限ったことじゃないけどね。
そうやって、こらえて飲み込む方法はそれぞれあったほうがいい。



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ハバナ、無言の一人旅。

なんかいろいろ微妙だった。
今だといろいろ笑えるんだけど。
年をとったらもっと笑えるかも。