世界ふらふら放浪記

雑記と人生の備忘録

10月の夏休み

先週の後半から遅めの夏休みを取りました。

あいにくのお天気でしたけど、平日に連休を取るのってすごく気持ちがいいですね。
おかげさまでとても気分転換になりました。




丸くてかわいい西郷さん。


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今日の目的はこれ。




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ポスターにある「階段の聖母」はミケランジェロがまだ十代だった頃の作品で、ギルランダイオの工房に弟子入りしてのみをトントン叩いていた頃のもの、当時は彼の知名度を上げるきっかけになって高く評価されました。フィレンツェのカーザ・ヴォナローティ(ミケランジェロの生家)に所蔵されていて、「木彫りのキリスト」という作品と一緒に保管されている、とーってもとっても貴重な門外不出の作品といっても過言ではありません。ルネサンス時代の彫刻がこうやって海外に出るのはまったく珍しいことです。最近やたらやってくるようになりましたが、もしかすると美術館も財政難なのかもしれませんね。印象派絵画の作品展はむしろドル箱ですから別ですけど。


フィレンツェといえば、メディチ家謳歌した「ルネサンス」の発祥地なだけに、ウフィツィ美術館やピッティ宮殿、アカデミア美術館、メディチ家礼拝堂、サン・ロレンツォ教会、など言わずと知れた世界屈指のルネサンス絵画の宝庫なのですが、このド地味なカーザ・ヴォナローティも忘れてはなりません(忘れ去られがちです)。もしかして市の運営じゃなくて個人所有だったのかなあ?この場所が分かりにくい上に、当時は開館日が限られていて更に開館時間も短い。たしか、13時で閉館しちゃうような感じだったので、迷子になった私は焦ってギリギリにたどり着いた記憶があります。館内は赤いビロードの壁に展示されている神々しい14~15世紀の作品の数々にすっかり心酔し、震えるほど感動したのを今でも忘れることができません。更にレオナルドの絵画も鑑賞し、ペルージャの家に帰って同居の大家さん(30後半くらいの女性)に、どこほっつきあるいてたの!とえらい怒られたことも忘れられません。大家に縛られるくらいなら別の家に引っ越そう、と思ったきっかけをどうもありがとうって感じでした。

 過去記事「汚い家」

(↑別に読まなくてもいいです)


話がそれました、ミケランジェロ展に戻します。


いろいろ彼の作品を観てきた私ですら感動してしまったのが本人の直筆の手紙。
おそらく初めてみたと思います。
イタリア語は読み解くのにとても難しかったので、おそらく当時の言語は古語になってしまっているのだと思われます(イタリア語には遠過去形という文法があり、今では昔話の本やオペラにしか使われない活用形がありますが、それに近いものと推測しています)。
ゴッホの手紙みたいに「おい、絵の具がないから金送ってくれよ」という類いの内容かと思いきや、意外と真面目な内容の手紙が多くて興味深かったです。字はゴッホとは比較できないほど達筆でした。あの時代の人ってきっちりしてるんですね。字を書いて読めるっていうこと自体裕福で恵まれた地位の人という証明ではありますが、あんな字を書くのは職業柄なんでしょうか。それともそうやって書くことが一般的だったのでしょうか。そんな疑問が浮かびました。


今回のミケランジェロ展、もう一つの目玉は「システィーナ礼拝堂」の解説もたくさんあったこと。
天井画の中で最も美しいとされている「デルフォイの巫女」の原寸大があったりして!感激です。

システィーナ礼拝堂は天井画に旧約聖書新約聖書の創世記、ユダヤの占い師、巫女が勢揃いしているのに対し、祭壇正面の「最期の審判」はその名の通り天国と地獄が描かれ、中央にキリスト、左にマリア、周りに十二使徒が描かれています。それの説明が細かく展示されていました。


(流し読みOK)



国立西洋美術館は今のところ日本で一番好きな美術館です。
自分の好きな作品がいっぱいあって、凝縮されているからです。
なので常設展でも見て帰ろうかな、と思ったところでこれ発見。


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これがまた非常に興味深くて、図録買って週末家でずっと読んでいます。


建築家というよりも画家である点から彼の思想をなぞっていくかたち。
知らなかったことが山ほどあって、いちいち「へぇ~」「ふぅ~ん」「ほぉ~」「うう~ん」の繰り返し。


絵画というのはそれこそルネサンスで花開き、ジワジワと変容して現代に至っているわけですが、個人的にはとりわけ偶像支配から自然派にかわり美化されたものから写実的なもの普遍的なものへとかわっていく分岐点、つまり1900年代初期あたりにここ数年非常に興味があります。なんでかというと、はっきりいって「よく分からないから」です。



これだけの貴重な資料を日本で、しかも日本語で読み解くことができるのはまたとない機会だと思います。



そのあと上野界隈をブラブラ歩いて帰ろうかとしていると、ちょっと気になっていたお寿司屋さんを発見。「寿司屋のくせにネコがいて不潔」というネガティブな口コミがあったものの、様子を見に通り過ぎたら確かに野良ネコが数匹表にいてジッとしていましたが、店内は大盛況。これは見逃せない魂が疼きます。あまりお腹も空いてないし、言うほどネコも気にならなかったしちょっとだけ食べて出ようと思い、中に入ります。




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20時までは半額が売りなんですが、20時までは二貫ついてくる、というカラクリです。
お腹いっぱいになっちゃうからそんなに食べられないけど、安いだけじゃなく半端なく美味しかったです。


「赤貝、騙されてみたと思って食ってみな」というおやっさんの一言に渋々食す。

一貫目は普通にお寿司で。
次はちょっと炙った赤貝を何もつけずにそのままで。
これが信じられないほどの絶品。
あまりにおいしくて涙が出そう。
赤貝は今が一番美味しいんですって。


そしておやっさん、しばらくして何となくこういった。
「うまくいかないのが人生だよ。人生ってのはうまくいくわけないんだから」

サバは?と言われて、サバはあんまり得意じゃないんですというと、
「あれだな。本当にうまいサバ食ったことないんだな」って言う言葉に思わず笑ってしまう。


シャリはぎっちり握らずにフワッと出てきますので手でいきます。
どれもこれものすごく美味しいです。


隣りにいた若いカップルの女子は貝が全般ダメなんだと言うと、おっちゃん、「食ってみてダメだったら次から食わなきゃいい。だけど何事もやってみないと何も知らないまま終わっちまうよ」って、なかなか含蓄がある。



またおいで、と言われたので真に受けてまた行きます。



そしてこの日の夜にみた映画「take this waltz」。



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ものすごくいい映画だった。
主役のミシェル・ウィリアムズっていう女優さんがよかったなあ~。
それとは別でこの映画の主人公みたいな後悔は絶対にしたくないなと心の底から思いました。



この映画のエンディングで「何かが物足りないと思うのが人生だ」というセリフが、寿司屋のおやっさんの言葉とシンクロして、なんとなく憂いのある一日となりました。



ちょっと長かったけど
ここまで読んだ人、エライ。

夏休みパート2もあるのだけど、気が向いたら書きます。