世界ふらふら放浪記

雑記と人生の備忘録

日曜日の朝

パリに到着したのは土曜日の夜。
万が一のフライトディレイを考慮したのと、その日は宿泊するアパートの大家さんから鍵を預かるために待ち合わせをしていたので、あまり遅くなってもいけないし夜も遅いと治安の面も心配だったので、相乗りの送迎サービスを手配していた。タクシーみたいにメーターを気にすることもなく、チップも不要。片道約4000円程度だしそれほど高くもない。到着ゲートでドライバーが私の名前を書いたボードを掲げて待っていてくれたので、すぐに車に乗って空港を後にする。とてもスムーズだった。
 
 
「まっすぐ行けば30分で送り届けることができるけど、すこし遠回りしてもよければパリの市内を通って簡単な夜の市内観光ができるよ。」とドライバーが言うので、好意に甘えて夜のパリをドライブしてもらうことにした。ハイウェイを抜けて市内に入る幹線道路を通り過ぎた頃にドライバーが言った。
「左手の奥をみて。サクレクール寺院だよ」
 
胸が詰まる思いだ。
初めてパリに来てサクレクール寺院を見た時は、その想像以上の存在感にすっかり魅了されてしまった。
そこからパリを一望できることだって知らなかった。
日本での生活にすっかり疲れ果ててしまいリセットする意味で1ヵ月パリに暮らし始めた時も、アパートの窓からほんの少しだけ見えるサクレクールのライトアップされたうろこの屋根はとても幻想的だった。その風景を毎晩見る度に、ささくれた気持ちがとてもとても癒された。
 
そのサクレクール寺院を車の中から見た時に、私はパリに来たんだと実感した。
 
 
 
その日は偶然にもパリは「白夜祭」で盛り上がっていた。実際パリが白夜になるわけではないのだけど、一部のミュージアムはオールナイト営業、様々な広場ではイベントを開催しており、とにかく人、人、人。凱旋門の周囲は大渋滞、セーヌ川にかかる橋という橋には大勢の人で溢れ、ノートルダム寺院の前も押し寄せる人並みで、我々の車も完全にスタックしてしまう。お正月みたいだね、とドライバーに言うと「正月よりひどい。いくら無料で美術館に入れるって言ったって、僕なら10ユーロ出して空いてる時に行ったほうがいいね」と言っていた。
 
 
ノートルダムの前を通ったらバラ窓が青白く光っていた。
「あぁみて。ちょうどバラ窓が光ってる。あれを見れるなんてラッキーだよ」と言われたけど、なぜラッキーなのかは分からない。写真を撮ることに夢中になってしまい、その後は別の話になってしまったので聞きそびれてしまった。
 
 
 
 
 
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今回の滞在先もアパートにした。
本当はプチホテルとか憧れで、毎回パリに行こうと思うたびに今度こそはと思うのだけど、つい自由な方を選んでしまう。好きな時間に起きて好きな時間に好きなものを食べ、好きなものを買ってきて料理したりコーヒー飲んだり洗濯したり。そうなるとアパートになってしまう。ずっとそういう生活が長いから、一人でいる方が気楽なのだ。そしてそれを寂しいことだとも思わないし、むしろ自由を満喫しすぎてわがままになってないかの方が不安だったりする。
 
 
最初にパリに来た時は、モーベル・ミュテュアリテにある今にも朽ち果てそうな無残なユースホステルだった。
次にパリに行った時は、バスチーユの薄暗くて汚くて寒いユースホステルだった。
三度目にパリに行った時は、ラ・シャペルのドラッグの臭いがするアラブ人が住む怖い屋根裏部屋だった。
そして四度目の今回は、北マレ地区にあるアール・ディ・メティエにある小奇麗で治安のいいアパートにした。
こうやって書くと、少しずつステップアップしてる感じがして我ながら嬉しい。
 
 
ドライバーさんには家の近所で下ろしてもらい(一通で家の前まで行けなかった)、大家さんに電話をし家の前で待ち合わせた。そこで鍵と家賃を払い、家の中を簡単に説明してもらい、ようやく一人になったのは深夜12時を過ぎていたから、その日はすぐに寝た。目覚まし時計を忘れてきたのに気付いたのだけど、携帯電話がちゃんと朝にアラームを鳴らしてくれたので、目覚めたら朝の7時だった。
 
 
 
 
パリの朝7時は日本のと違う。
シンとしていて、物音一つしない。
外もまだ薄暗い。
だけどその日は思ったほど寒くもない。
そっとベットから出てシャワーを浴び、戻ってきてカーテンをそっと開けると、朝日はもうすっかり上がっていて驚くことに10月とは思えないすっきりとした青空が見えた。
 
 
 
この青空をみた時の嬉しさたるや・・・。
 
 
 
 
今日は間違いなく、お天気のいい最高の日曜日であることを確信したらいてもたってもいられなくなった。
 
とにもかくにも、私はお天気の良いパリが大好きなのである。
 
 
 
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かくして、さっそく支度をし、今日のプランを再確認し、部屋を出た。
 
旅先の初日はいつも緊張する。
何度も来てるパリだってそうだ。
だけど、その緊張がいつかほどけて見知らぬ場所が馴染んでくることも知っている。
その為には、ただひたすら、自分が街に飛び込んでいくしかない。
 
 
そして毎回思うのだけど、
 
 
ヨーロッパにいるとホッとする。
 
 
これだけは紛れもない事実だ。