世界ふらふら放浪記

雑記と人生の備忘録

朝の苦行


さて。

前日に「絶対使わないと決めていたクレジットカード」を使って滑り込みでキューバ屈指のリゾート地への日帰りツアーの申し込みを済ませたので、「多分いつも以上に何もなさそうな日曜日のハバナ」を脱出することができて胸をなでおろしたのもつかの間。


集合は朝の6時にイングラテッラの建物の前で。


という言葉が私にとっては呪いの言葉以外の何物でもなかった。

5月末のハバナ、夜明けは朝の7時頃。

スラム街ホテルからイングラテッラまでは徒歩で約10分程度。

その10分のスラムを抜ける徒歩道がとんでもなく、怖い。

昼間でもちょっとやだなと思ってるくらいなのに、明け方とはいえまだ真っ暗なその道を10分歩くなんて、地獄を歩けと言われているような気持ち。


タクシーを呼ぶ、という手もあったけど、歩いて10分程度の距離のためにタクシーが朝の5:30に来るなんて思えない。どうせキューバ人も肩をすくめてあんたバカなんじゃないというに決まってる。仮に承諾しても寝坊して来ないとかありえそう。ここは都会じゃない、ハバナなのだ。当たり前が当たり前にならない国は、簡単に物事が運ぶと期待してはならないののは鉄則。信じられるのは自分。


とはいえ、、、、怖い思いをするくらいならやっぱりお願いするべきでは?


自問自答した。
でも結局自力で頑張ることにした。
だって徒歩10分だもん。
スラムって言っても私が勝手にそう呼んでるだけで、自己防衛力が異常に強くなっているだけで本当は大丈夫かもしれない。なんと言ってもキューバはカリブ諸国の中でも治安がいいので有名なのだ。



とはいえ、、、。



を繰り返していたら、その日は全く眠れなかった。。。
怖くて怖くてどうしようと思って。。。


夜明けは7時だとわかっているのに、
もしかしたら6時かもしれないと無駄な期待をする。
少しだけ明るくなればきっと大丈夫。
窓の外に耳をすませると水が滴る音がする。
それは雨なのか、はたまたどこかの排水管から漏れる水の音なのかはわからない。
雨だったらやだなと思う。
湿度も高くて蒸し暑いから一昨日洗って干した靴下もまだ乾かない。
部屋の扇風機を回しても空気は重い。
中庭に面した窓を少しだけ開けて、何度も何度も夜明けを待った。
日本では朝が来るとカラスが鳴くけど、ハバナではニワトリが鳴く。
だから「早くニワトリが鳴いてくれないかな」と本当に思った。
そして、なぜか遠く離れた東京を何度か思い出した。




すると、朝の5時頃にレセプションに灯りがついた。
おばあちゃんが起きたのだ。
すかさず部屋を飛び出して、下手なスペイン語で説明する。
(彼女たちは英語が全くわからない)
するとおばあちゃんの他にお掃除の女性もやってきて二人で私の話を聞いてくれている。

6時
イングラテッラ
ツアー
行く
外は暗い
私一人
怖い


伝わった!

すると二人とも大げさすぎるジェスチャーで「ダイジョーブダイジョーブ!!女一人で歩いたってなーーーーーーーんにも起こらないって」と呑気に言う。

お掃除のおばさんも「私もさっき家から歩いて出勤して今着いたけど、ご覧の通り平気よ」という。

(えーでもこんなこと言ったらなんですが、それはおばちゃんだからとか、、、)


「変な男が寄ってきてもシッシッ、あっち行けって言えばいいのよ」


(えー。。。。)



バルコニーに連れて行かれて「ほら見てご覧。あそこにも女性、あっちにも女性が一人で道端を歩いているでしょ。ダイジョーブだって」と説得される。

(えーでもそれは地元の人だからでしょー。。。)



それでも警戒心が解けず困っていたら、

おばあちゃん
「あなたの姿が見えなくなるまでバルコニーから見張っててあげる」

おばさん
「途中まで一緒に行ってあげる」

と言ってくれた。優しい。。。(泣)



早速用意していたリュックをしょってホテルをおばさんと一緒に出る。まだ夜の帳が抜けない日曜日の朝のスラム街ハバナ。もう起きている人もいるけど廃墟のような住宅街はまだ静か。薄暗い少しだけのオレンジ色の街灯が道を照らす。


おばさんと道の角まで一緒に歩き、何度もハグしてくれてお別れした後も後ろでずっと見守っていてくれている。
バルコニーからおばあちゃんもずっと見てくれている。
何度も振り返っては手を振り合う。


そんな風にしてイングラテッラまで步いた。


おばさんたちの姿が見えなくなる頃には一番不安だったスラム街を通り抜け、もう安全だと思える大通りに出る。

土曜日の夜から夜通し遊んで朝になってしまった若者たちがクラブの前でケンカをしていて、みんなそっちに目がいっているから私に気づく人も少なく、気付いたところで興味もなさそう。




そんなふうにしてやっとイングラテッラに到着した。
旧市街の中心地から少し離れただけでもハバナの雰囲気は変わる。
これも来てみてからじゃないとわからないことだった。



イングラテッラのホテルの前には暇そうにしているガードマンが一人いて、ガランとしたロビーに入ると海スタイルなカップルも発見したのでおそらく同じツアーかと少しホッとする。



外はまだ暗いので危ないからそのままロビーにいたら、6時ちょうどに別のツアーのガイドさんが入ってくる。私をみるとフレンドリーに話しかけてきて日本人?なんのツアー?と聞いてきたので行き先を告げると、「ロビーじゃなくて外で待ってたほうがいいよ。見過ごして置いて行かれちゃうかもしれないから。6時集合で今何時?6時10分だろ?もうもしかしたら置いて行かれたかもしれない」なんていうから慌てて外に出る!



いや~でもあっちは見逃すことがあってもこっちは見逃さないと思うんだけどな。

それにしても時間になってもバスがこない。


海スタイルなカップル(その後コロンビア人だということがわかった)も不安げに外に出てきてホテルのオープンカフェの椅子に座った途端、葉巻を吸いながらフラフラ歩いてきた見るからに怪しいキューバ人二人に絡まれている。頼むからこっちにこないでくれと願い、少し離れたところでバスを待つ。


そうしていると今度は野良犬が私の周りをウロウロし始める。
それを見たタクシーの客待ち運転手が口笛を吹いて犬を追っ払おうとしてくれる。
優しい。




※この写真は普段の夜のホテル前の風景

イメージ 1




待つこと40分。


やっと小型のバスが到着してガイドがやってきた。
そして先に乗っていたツアー客と合流し、海スタイルなカップルと私を乗せたバスは出発したのだった。




7時近くなってようやく白み始める朝。



イメージ 2




ツアー出発前だったけど、もうやりきった感でいっぱい。


ハバナは4泊5日で十分だったと改めて思った。





<追伸>
私と同様イングラテッラを活用している旅行客がおられました。
私との違いは、この方は自力で移動手段を調べてツアーに入らずに個人手配されていることです。

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