世界ふらふら放浪記

雑記と人生の備忘録

天上の声

私がアムスに行ったのは、薄暗くて単調なロンドン生活に嫌気がさして、往復35ポンドの長距離バスを予約して逃げ出すように飛び出したのがきっかけ。ヨーグルトの容器に書いてある「ベジタリアン向け」という言葉とか「£」の通貨記号とかダウンジャケットとか、なんとなくそんなものを見るのもうんざりしてきたのだ。宿も適当に前日に予約をして周囲には「しばらく出かけてきます」とだけ伝えた。荷物はボストンバック一個にパスポートとスニーカー。まるで家出みたいだ。


やはり、海外といえど相性というものがある。
私はどうしてもロンドンがなじめなかったのである。



深夜長距離バスで明け方にアムステルダム中央駅付近に到着する。

ガイドブックの地図を頼りに、一人ブラブラ歩きながら宿について、宿のご主人に挨拶をして部屋に入り、荷物を整理しながらテレビをつけて、何とはなしに英語の番組にチャンネルをあわせた。
つまんないBGMみたいだけど何もないよりはマシだった。

番組では数人の女性がインタビューを受けていて、売春についての質問に答えていた。
彼女達は海外からアムステルダムに流れてきた娼婦たちだった。
南米出身、アジア出身、いろんな女性達が話していたけど別に興味もないのであまりよく聞いてなかった。テレビってそういうものだと思う。シャワーを浴びようかと思って支度をしながらふと気付く。


アムステルダムは妙に静かである。
なぜだ。


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< 宿の部屋 >  



すると突然、BGMだったはずのテレビの娼婦の会話が耳にスーッと入ってきた。


アムステルダムはとっても魅力的な場所よ。私たちの仕事を一つの職業として認めてくれているの。私たちにはプライドがあり、それを十分に理解してくれているから仕事がとてもやりやすいわ。娼婦や売春を尊敬してくれる場所なんてアムステルダム以外にどこを探してもないわね。」


ちょっとビビっときた。

だって今までそんなこと、考えてみたこともなかった。

テンションがジワジワと上がってきたきっかけはこのテレビの娼婦のセリフが決め手だった。



オランダといえば、風車とチューリップの国。素朴で大人しい北欧のイメージや、旅行代理店あるいはどこかの会社のカレンダーにある写真のイメージはおそらく間違ってはいない。


ただ一つ、アムステルダムという街を除いては。


そこには風俗とドラック、斬新なアイデアや古きものが融合された、ニュー・カルチャーが存在している。




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< 部屋の窓からの景色 >  





ロンドン脱出→アムステルダムの旅。
何に悩んでいたのかよく覚えてないけど不毛な日々にうんざりしていた在りし日の自分。
多分ね~、本当にロンドンが合わなかったんだと思うんですよ(笑)。しつこいようですが。