世界ふらふら放浪記

雑記と人生の備忘録

人間不信

何かチャンスがあったとしてイタリアに半年でも住んでみることになったら直面する現実。


それは、人間不信。


なんでかって。


周りには常にスリ置き引きひったくり空き巣に強盗詐欺ぽん引き脱税ぼったくり売春麻薬ニセ札が溢れているんだからそんなのに巻き込まれたくなかったら近寄ってくる人は疑ってかかるのが鉄則なんですが、たまにやっぱフツーの人もいるのでものすごいファイトでむかってると逆に相手を傷つけてごめんごめんということもあるんです。
この見極めが難しい。

前に空き巣に遭った話をしましたがその時にも書いたけど、プロの空き巣は冷蔵庫のチーズの中まで切り刻んでいくものなんだ(バイト先のボス談)と徹底的に頭に叩き込まれたのでまあもうなんていうか疑いでしかないわけですよ普段は。



そんなもんで以前ちょっと住んでいたロンドンからローマに帰ってきた時。
一年ぶりだったでしょうか。
かつてはローマのフィウミチーノ空港といったらそれこそ白タク詐欺置き引きスリひったくりの巣窟と言っても過言じゃないくらい治安が悪くてほんとにイヤだったんですよね。ジーッとこっちの顔見てきたりして(私は凝視されるのが本当に嫌いなのでとても頭にきてしまうのですが)、アライバルゲートを出てなるべく誰とも目を合わせないようにすり抜けようとしたら。

私の名前が書いてあるネームボードが目にとまる。
そしてそのネームボードを持ってる人を見ると、金髪で背が高くて黒いスーツを着ている見たこともないイタリア人。

あやしい。

どこでどう私の名前をゲットしたのか知らないが、乗ったら最後、身ぐるみ剥がされて現金盗まれてレイプされて麻薬打たれて売春宿に売られる(←すみません、これも自己防衛のための妄想癖です)と思ったら、危険センサーがもうそれはそれは激しく点滅するわけですよ。


しかしなんで見知らぬ人が私の名前の書いたネームボードを持って空港にいるのかは知りたい。


なので、近寄って話しかける。
それ、私だけど。
というと、その青年は「お待ちしていました。お車を用意しております」という。
頼んでないよ
というと、
「いいえ、間違いなくあなたの名前で手配を承っております」という。


これはこれはますますあやしい。
一体この人は何者?
まずは素性を調べなければ。
ウソのドライバーかもしれない。
証拠を出してもらわないと。


ということで、ワタシ言う。

あなたの身分証明書出してみせてよ

すると青年はちょっとビックリした顔をしてポケットを探す。
差し出してきたボロボロの身分証明書は間違いなくイタリア国民。
でもどこのどちら様か知らない。
やだ!
乗らない!



と言いかけたところで、ローマの友達が「おかえり~」といって駆け寄ってきたので、わ~サプライズで嬉しい~助けて~あやしいニセドライバーにつかまってたの~と言うと、友達がみんなえええええ!という。

もうほんとにどうしようもない、さすがローマって感じ。

そう言って立ち去ろうとしたら、友達の1人が「違う違う!」と必死に私を食い止める。

「この人はボスが用意してくれたお迎えリムジンの運転手だよ。サプライズのギフトなんだって」


えええええ~

そうなのーーーー???


電話電話。
あ、すみません、ボス?
チャオコメスタイ?
はい、今着いたばっかで。
シ、シ、ベーネベーネところでさ、なんか金髪の怪しい男がいるんだけどこれってリアルでサプライズ?リムジンとか言っちゃってるけど乗っても平気なの?

というと、ボス大ウケ。
それは俺が雇ったんだ。
いいから早く乗ってこい。


実際のところ、怪しいと完全に疑っていたその青年はまっとうな雇われ運転手に過ぎず、拉致するつもりもなければ言われた通りに待ってただけだったのです。

結局友達みんなと私と気の毒な青年が運転するでリムジン乗って無事ローマ市内へと向かい、いつもの日本食料理店へ行き、モロッコ沖で獲れる新鮮な肉厚のマグロ丼をたらふくごちそうになったのでした(幸せ)。
今回の顛末をボスは大変ご満悦で、「身分証明書見せろは傑作だな」とガハハ笑いをし、ブラーバブラーバと何度も誉められました。そして何年か経ってもそれは「フゥイミチーノ物語」として語り継がれることになったのでした。





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つまり、そういうこともあるんですよね。
自己防衛は基本中の基本だけど、完全に誤解の場合もあるから。
今回のはおもしろおかしい例だったけど、やっぱりシリアスな場合もありますし。


なにもイタリアに限ったことではないし、そういうモラルの違いというのは格差社会であったり人種差別(ヨーロッパも結構根深い)であったりも原因するのだろうけど、やっぱり根本は犯罪組織との深い関係性はぬぐいきれないのだと思います。そこはけして一般人は足を踏み入ることはできないし抵抗することもできない。国の首相だろうが保安警察だろうが政治だろうがあらがうことができないから改善の余地がないというのが何より致命的。そうなると自己防衛を優先せざるを得ないんですよね。だから人間不信に陥りやすくなるという悪いサイクル。
そう考えると日本はよっぽど幸せな国だと思います。


私、いままでにこういう類いで、超が100つくほど怖い経験、2回してます。
そのうち1回は夜も震えて眠れず、一週間は怯えて暮らしました。
けして越えてはならない結界を越えたらどうなるかという話です。

あ、あと幽霊の類いで超が100つく経験は1回。


最後どうでもいいって?

si, si, ciao.