世界ふらふら放浪記

雑記と人生の備忘録

ギリシャ最終章~グリークコーヒーと小さな空~

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/b/beabea-journey/20190816/20190816065405.jpg暑くて休憩

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/b/beabea-journey/20190816/20190816065411.jpgほのぼのおみやげ屋さん

ロス島を訪れた時、ある路地裏にたどりつきました。
先に行ってももう何もなさそうなので、戻ろうとしたところ、
遠くに小さな看板があるのが見えました。

「グリークコーヒー」

何となく引き込まれるように小さな家のドアを開けました。
すると奥の暗闇から、とっても素敵な背の高くてほっそりとした女性が満面の笑みで近寄ってきて
「どうぞ」と言い、中に案内してくれました。
暗闇のだだっ広い部屋を通り抜けると
そこには太陽の光が溢れ、白い壁に囲まれた小さな中庭が。
壁に反射した太陽の光がまぶしくて思わず目を細めてしまう。
その中庭には、木で出来たテーブルと椅子が3セット並べてあり
ブーゲンビリアの花が2階の部屋の窓からこぼれんばかりの勢いで咲き乱れています。
先客はドイツ人の老夫婦で、中庭の端にあるテーブルに座っていました。
「こんにちは」と言ったら、彼らも「こんにちは」と優しく小さな声で挨拶をしました。

さきほどの女性が静かに微笑みながら「ご注文は」と聞いてきたので
私達は看板のグリークコーヒーを注文。

コーヒーがくる間、私と旅友は会話をすることもなく
ドイツ人夫婦もおいしそうな手料理らしき食事を黙々と食していました。
気付くと一匹の猫が私の隣にやってきて、グーと伸び、並んで横に座りました。

その時、風が少し吹いて
壁づたいにぶら下がるブーゲンビリアのピンク色の花が静かにサワサワと揺れました。
その風が吹いてきた方をふと見上げると・・・

そこには、建物の隙間からのぞく小さな空が静かに私達を見下ろしていました。
空は雲ひとつない、果てしなく澄みきった 青。
その下には、風に揺れるブーゲンビリアのピンクと、太陽に反射した壁の白。

老夫婦の食事をするナイフとフォークの小さなカチャカチャという音、
スピーカーから静かに流れる音楽、
ブーゲンビリアを揺らす風の音。
その空間に存在するそれらの「色」「音」は、耳に、心に、染み渡っていく。

時間がゆっくりと、穏やかに流れていく。

隣で寝そべっている猫は一つ欠伸をしてから気持ちよさそうに目を閉じました。

奥から先ほどの女性が現れ、コーヒーをそっとテーブルに置きニッコリ微笑んできたので
私もニッコリと微笑みかえします。

小さなカップに注がれた茶色の濃厚なグリークコーヒーをスプーンでかき混ぜながら
胸が一杯になり、何となく泣きそうな気分になりました。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/b/beabea-journey/20190816/20190816065416.jpg「グリークコーヒー」に続く道


生きていれば今の悩みも先の悩みも当然つきまとってくるけれど、
幸せだなと感じることが出来る瞬間をより多くもてることは素晴らしい事だと思います。

その瞬間をくれたのはギリシャ、私にとってはまさに「奇跡の国」、特別な場所なのです。