世界ふらふら放浪記

雑記と人生の備忘録

パリのすてきなおじさん/金井真紀著、広岡裕児案内

パリのすてきなおじさんという本を読みました。

 

実際にパリに住むありとあらゆる職種のおじさんにインタビューして話を聞いてみるという実録本。イラストがかわいいし読者100%女性狙いとはわかりつつ、読んでみたら結構社会派な内容が盛り込まれており、勉強になることがたくさん書いてありました。

 

 

 

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パリに住む人種がいかに国際色豊かで移民が多いかということ、どちらかというと「パリに住む外国人のおじさん」の話が多かった。

 

いくつか挙げてみます。

 

  • この本に登場するイスラムの人たちはフランス各地で起こったテロを境にイスラム過激派と自分たちの宗教をしっかり線引きし、イスラムほかの宗教に寛容であることが大変印象的でした。これも多様化の一部なのだと思いますが、一方でブルカ禁止を唄うフランス人(の一部)がどうも見識が狭いとしか思えないんですよね。自分たちの言論の自由は徹底的に主張するくせに、ブルカぐらい許してやってくださいよと思います。

 

  • フリーメイソンで働くおじさん(広報)のインタビューがありました。印象的だったのは、フリーメイソンは入会は難しく退会は簡単なのだそう。「カルト宗教とは逆なのですよ」。ルーツはスコットランドの石工組合なので、シンボルマークにはその道具であるコンパスと定規になっている。結成はロンドンで、なぜパリに本部があるのかは以前「テンプル騎士団」で読んだような気がするけど忘れました。

 

  • アルジェリアがフランス支配下から独立したのは1962年で、引揚者のことを「ピエ・ノワール」と呼ぶんだそう。当時アルジェリアに住んでいたユダヤ人にだけフランス国籍を与え、その他の民族(アラブ人やベルベル人)には権利を制限し、イスラム教の習慣を捨てさせ、名前もフランス人風に改めさせるような同化政策を行ったのだとか。その背景にはサハラ砂漠にある油田の利権問題があるようで、1966年までは原爆実験もそこで行われていたのだそう。今でもアルジェリアはフランス企業を支える低賃金労働者の一大供給地なんだそうです。そう考えると新疆ウイグルのことばかり言ってられないかもあるかもしれない?近頃話題のSDGsで世界全体のこういった不正問題や悪質な環境が、正式なルールに基づいて是正されていくことはいずれにせよ良いことなんだと、この話を聞いて改めて思いました。

 

 

 

ただ、当時イタリアでは、アルジェリア人に対する一般的な印象はとても悪かったです。彼ら不法移民による犯罪率が高いという印象がとても強いからです。アルジェリア人の風貌をした人を見かけたらいかなる場合においてもけして近寄ってはならないという暗黙のルールが徹底してありました。

 

しかし、フランスやイギリスのようなもともと植民地を持っていた歴史のある国は、不法移民が難民ボートで流れ着く拠点となる南ヨーロッパと異なり、彼らに対する考え方がまた少し異なるように感じています。もちろん、偏見や差別がないとは言いませんが。

 

 

パリやロンドンは、多国籍民族が何世代も暮らして根付いている社会がもうしっかり出来上がっているので、外国人が比較的溶け込みやすい環境にあると思います。一昔前までは、低賃金で雇用でき税金も搾取できる在住外国人は国にとっても貴重な労働力でしたが、そういった理由で外国人を取り巻く環境は昔と変わってもっとより良く変わってきているのではないでしょうか。

 

 

一方で、独自のコミニュティを築き上げ思想と言論の自由を主張されれば迷惑極まりないという懸念が社会問題に発展することも多い中、この本に出てくるパリに住む外国人が、度重なる同時多発テロや宗教差別を経ていかに多様化し柔軟な発想を持ってきたかということに、ちょっと感動すら覚えました。否定し反論し戦うことではなく、融合していこうとする精神論を持つことができるのは、やはり大都会パリならではだなって思います(ロンドンも然り)。もちろん本なんで、ネガティブな発言は掲載できないという忖度はあると思いますが。

 

 

 

あと、パリってものすごい地下道が張り巡らされているのですよね。

以前ブラタモリの海外ロケでもみたことありますが、普通のパン屋さんやケーキ屋さんの地下が厨房になっていて、ドアを開ければ地下道に繋がっていました。昔は地底だったということから地面の地質が海底の物質でできていると聞いて驚きました。まあ、いろんなことを考えれば、ネズミだの疫病だのが流行ったわけですよね。

そんな地下道を研究しているフランス人や、絵に描いたような女たらしのスペイン人なども出てきておもしろかったです。

 

 

<おまけ>

旅先でパリのすてきなおじさんにもし「きれいだね」と言われてお茶に誘われても、ホイホイついていってはなりません。それはあくまでも「おはよう」と同じ、単なる挨拶にすぎないからです。万が一ついていったとしても、そういうおじさんって思ったほどおもしろくないの。