1人でその街を訪れた時は、多分季節は冬に近い秋でちょうど今頃の季節だったように思います。
その街の郊外にはおさななじみの友人が住んでいて、子育てに追われて日々忙しそうでした。ある日待ち合わせる時に、この辺にゆっくり話ができるおいしいケーキ屋さんはないのかと尋ねたらよく知らないと言う。普段忙しいので近所を散策する時間もないのでしょう。一緒にショッピングモールを抜けて奥を探検してみると、そこにはこじんまりとした小さなお店があり、ずらりと行列が並んでいました。なんのお店かと思って近寄ってみると、それは色とりどりのスイーツが並ぶパティスリーでした。濃い茶色で統一された落ち着いたインテリアの店内には、センスのいいお菓子と家具があって、私たちは喜んでその行列に並びました。
その小さな街には東京タワーのような塔がありました。
そこは小高い丘になっていて周りは高級マンションやデザイナーズハウスが建ち並んでいました。、タワーのてっぺんにはいつも雲か霧がかかっているから鉄柱の先までは見る事がめったにできず、その外周を通る時はいつもマンションの家々に灯るあかりや、塔の鉄骨をぼんやりと眺めながらポケットに手を突っ込んで歩きました。
そして、しばらくすると友達ができました。
女の人2人。
歳も近くてサバサバしていて、あまり気を遣わなくても済む間柄でしたが、逆にどうしてここまで自分をさらけ出せるのだろうと違和感を感じる程、2人は自由でした。
他にも交友関係が少しだけ広がり、たまにはみんなでパーティーしたり、遊んだりして過ごしました。
そんな短い時間もあっという間に過ぎ去り、最後の日がやってきました。
女子2人と私と、運転してくれた男の子と空港へ向かいました。
その途中、あの塔を通りました。
その日も雲だか霧が塔を覆っていて相変わらずよく見えなかったんですが、もやがかった景色の中に浮かぶ家のあかりはとても暖かくて、車に乗っていてもその流れる景色はまるで静止しているかのようによく見えました。大小さまざまな窓、吹き抜けの窓、マンションの規律正しく並べられた窓、美術館のロビーのような大胆な窓。その窓から静かににじみでるオレンジ色のその灯りは、なぜか分からないけどいつも優しく心をなでるような風景でした。それを見るのも最後だと思うと胸が締め付けられるような気持ちになり、思わずつぶやいた。「この景色、大好きだったんだよね」
2人の友達はふーん、と言っただけで特に気に留めている様子もありませんでした。
運転手の男の子も無言でした。
その風景は、どんどん遠ざかって行き、やがて見えなくなりました。
日本について空港におりました。
2人の女の子も一緒です。
だけど、ここから先はそれぞれ自分たちの家へ帰ります。
お別れです。
ずっと一緒だったので離れる実感が全くわいてこないのだけど、我々が何気なく過ごしてきた瞬間が、あとになって胸を締め付けるような深い思い出になるであろうことを何となく感じた私は、2人に会えなくなるなんて寂しくなるって言い、照れくささにふざけて笑ってお別れしました。
家に帰って、荷物の整理をしていた時に、ふと出発前の記憶がよみがえってきました。
そういえば、家を出る前にある人に小包を送っていたのを思い出したのです。
小さい段ボールになんかいろいろ詰めて、一通の手紙も添えたような気がします。
お礼のメールももらってなかったし、郵便がきた形跡もありません。
でも正直言ってもうそんなことどうでもいいやって思いました。
そこで気付いたのです。
その恋は終わってしまっていたこと。
そして、その人を好きだったことすら、すっかり忘れてしまっていたことを。
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以上、夢の話でした。
今日の夢は上質だったわ。
そしてドラマ仕立てだったので寝がいがありました。
いや~爆睡爆睡。
(ちなみにローマにいる頃は毎日コロッセオの外周を通りました)