世界ふらふら放浪記

雑記と人生の備忘録

ローマの無銭乗車

私が住んでいた頃、ローマは無銭乗車天国であった。
 
 
 
地下鉄やバスの切符はキオスクのような場所で買うのが一般的であるが、開いてない時は当然買えない。
駅の構内には切符自動販売機もあるけど、なにせイタリアの機械なだけにうかつにお札を入れたらそのまま飲み込まれる危険があり全く信用がならないから滅多に使わないし、第一故障中のこともしょっちゅうだ。
バスなんかは車中で買うこともできないからもってのほかである。
 
 
 
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キオスクはイタリアではタバッキという。Tの看板が目印。
タバコ、切手、フィルム、絵葉書、ガムの他に、地下鉄やバスのチケットも買える。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
そのような不便さもあって、切符を買わない=無銭乗車が増えるわけである。
常習犯も多いし、どうせタダで乗れるなら買う必要もないと思うのはイタリア人だけでなく、在住の外国人やスリ泥棒なども同じだ。彼らは無銭乗車し放題でスリもし放題というわけだ。それを野放しにしているのがイタリアのすごいところ。
 
 
 
しかし、たま~に抜き打ちでパトロールにやってくる。(月末が多いと噂されていた)
その手口もこっちからすると憎たらしい。
始発の停留所でバスが出発する間際に不意打ちでドドっと数人の係員が前後から乗ってきてドアをバタンと閉め、はさみうちの格好になるから絶対に逃げられない。普段無銭乗車には見向きもしない運転手もこの時ばかりはグルだ。そして、切符を持っていない人は、身分証明証の提示を余儀なくされ、当時で1万円くらいの罰金が課せられた。
 
 
だけど、その罰金は果たして正当に還元されるなんて一体誰が保障できる?
彼らのポケットマネーになりうることだって大いにありうる。
それがイタリアだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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バスの中にある刻印機。
これに切符を差して日付と乗車時間を一度だけ記録する。
その印字された時間から数えて90分はバスも地下鉄も乗り放題。
 
 
 
 
 
 
 
 
だけど、私たちが一番怖いのは罰金ではなく「身分証明証の提示」。
当時(今はだいぶ減ったと思うけど)密入国で長い間ビザも滞在許可もないまま暮らしている外人なんてザラだったから、それがばれたら警察沙汰&強制送還にだってなりかねない。私の友人の何人もがそのようにして暮らしていたけど、彼らがつかまったことがないのはラッキーだったとしか思えない。
 
 
 
 
また、システムをよく理解していない外国人観光客が不幸にもパトロールでひっかかり、法外な罰金を課せられている現場を見たこともある。悲しきかな、それは日本人の新婚カップルで、スペイン広場の地下鉄の構内でつかまっていた。役員はイタリア語しか話せず、日本人はイタリア語は理解できず、結局日本人夫婦はニコニコしながら大人しく言われるがままに高額な罰金を現金で払っていた。
どんなに言葉が分からなくても、不当だと思ったことは主張するべきであると思う。
特にイタリアなんかで相手の言うがままに従っていたら、所持金全部巻き上げられかねないし、様子を見ている周りの泥棒に目をつけられかねない。
忘れてはならないのは、彼らにとって言葉が通じない外国人観光客はいいカモであるということ。
 
 
 
 
かく言う私もこのパトロールにつかまったことがある。
その時はたまたま学費のための節約を理由にケチって定期を買うのをやめた月だった。
どうせパトロールなんかこないし、と思っていたらやられてしまった。
それまで真面目に定期を買っているときは一度もつかまったことがないのに、買わなくなった途端にこれだ。
だけど「ウソも方便」という言葉があるように、私は徹底的に嘘をつき通すことを決めた。
まず、身分証明証の提示に関しては、私は正当なローマ在住の外国人として登録していたのでセーフ。
だけど定期を持っていないことは明確な事実である。どうやって嘘の無実を証明しようかと考えた挙句、「定期が入っている財布を今日は家に忘れてきた」ということにした。見えすいた嘘だったのだろう、係員は許してくれず、私の住所を振込用紙に記入し、「この用紙を郵便局に持参して振り込むように」と言われた。
 
だけど、数日後その振込用紙にはどこにも振込先は記入されておらず、日付も係員の名前も連絡先も何もない、全くの白紙であることに気付いた。
 
つまり係員は私を見逃してくれたのである。
 
そんなこともあるものなんだなと、今でも考えるとなんか嬉しくなる。
 
 
 
 
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私がつかまった現場のサン・シルベストロ広場はバスの発着所でもある。
 
 
 
 
しかしこの教訓は全く生かされないまま、ギリシャに行った時も相当無銭乗車しまくってしまった・・・すみません。
ギリシャは切符を買うところがないんだもの。イタリアよりひどい。)
だけどこういう経験をしながら動物的勘を養っていくものだと自分に言い訳しつつ、
次回はバス無銭乗車事件パート2へ続く。