世界ふらふら放浪記

雑記と人生の備忘録

公共の場で

先日、朝の通勤電車に乗っていたら、到着した駅に降りようと後ろからサラリーマンの男性がものすごい勢いで人ごみを押し分けて満員の人の固まりから無理矢理出てきた。その時に、重くて頑丈なビジネスバックが私の腰に当たり、あまりにもの痛さに悲鳴をあげそうになった。しかし謝ることもなく、その人は強引に人を押し分けそのまま電車を降りていった。
 
こういうことは日本の満員電車ではよくある風景である。
 
 
だが、イタリアでは満員の電車やバスに乗っている時は必ず前の人に声をかけるのが習慣だ。
「降りますか?」とあらかじめ出口の付近の人にたずねるか、「すみません」と一声かけてから降りるのがあたりまえとなっているから不愉快な思いはあまりすることがない。
ぶつかって人ごみをかきわけるのはむしろ失礼にあたる。
これはロンドンやパリでもそうだった。
 
 
 
 
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ある日、駅のホームで体調を崩し倒れこんでいる女性を、通りかかった外国人観光客の家族が心配そうに介抱していた。しかし彼らは日本語が分からないのでどうしていいのか途方に暮れているその前を、見てみぬふりのごとく素通りしていく日本人の光景は非常にショッキングで、ある意味とても印象的だった。
 
 
 
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こんなこともあった。
 
ある日バスを待っていたら、大勢のシルバー世代の方が並んでいた。私の後ろにも列が続き、私は老人達にはさまれるようにして立っていた。やがてバスがきて、一列に並んだ人々が順番にバスに乗っていく。ようやく私の番になってバスに乗り込もうとしたら、後ろにいたおじいさんが突然私の前にスッと割り込み、バスに乗り込んでいった。
 
 
相手はシルバー世代だったので仕方ないと思うのだが、私は海外での生活で甘やかされたのか、
あるいはどんなおじいさんでもニッコリ微笑んで女性に先を譲ってくれるジェントルマン対応に慣れてしまっているのか、このようなまるで私の存在を全く無視したようなその態度にいささか驚いてしまうのも事実。
なによりも男性優位の日本社会の象徴のような気がして少し怖くなる。
我々のルーツはこうだったんだと思い知らされるような気がして。
 
 
 
 
 
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日本ではつくづく女性は軽視されちゃうんだなと思う。
 
電車に乗り、座席が一つだけ空いていたとしても、男性が女性に譲ることはない。
ドアの扉を後ろに続く人のために開けて待っていてあげることもしない。
エレベーターでは女性より先に男性が下りる。
レストランでは男性が上座に座る。
もちろん日本男性がみんなそうだというわけではないが、こういう光景は頻繁に見かけるので、
私はその度になんだか残念な気持ちになる。
 
 
 
 
 
 
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これらの例をあげてみてもわかるとおり、礼儀正しいはずの私たちは、
顔見知りの人にはそれがきちんとできても全く見知らぬ他人には意外と冷たいところがあると思う時もある。
 
きっと日本人は欧米のような、公共の場での第三者とのコミュニケーションの取り方がとにかく下手というか
不器用なのだと思う。
 
 
 
 
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だけど、日本人のマナーで素晴らしいと思うことももちろんある。
列に並ぶ行儀の良さは世界一だ。間違いない。
人のものを盗むという悪癖がないから忘れ物などが紛失することもないし、お店に忘れ物をしたら走って追いかけてきてくれるほどの親切さも他国を圧倒する親切心だと思う。
人様に迷惑をかけてはいけないという思いやりの精神の表れは公共の場の至るところに溢れている。
 
ただコミュニケーションの取り方があまりにも不器用なだけで。
 
 
 
 
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ドライな風潮がまだまだ主流の日本だけど、時々あったかい心に触れるとホッとする。
 
 
そう感じる瞬間が増えていけばいいなと思うし、自分もそういう瞬間を与えることができる人でありたいと思う。
 
 
 
 
 
 
 
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