世界ふらふら放浪記

雑記と人生の備忘録

遠藤周作怪奇小説集

先日お伝えしたこの本、読みました。
さすが遠藤周作さん、どんなものでも読ませますね。一気読みに等しい感じでした。


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ご本人はもともと亡霊だとか幽霊の類は一切信じないタイプなそうですが、実体験をすることにより信じるようになっちゃったみたいです。フランス留学時代滞在したルーアンというフランスの小さな町にある安宿で体験した奇妙な深夜の生き物、熱海の宿で起こった不可解な現象などから、実際そういう経験をした人にヒアリングした事実に基づいて書かれているんですが、一番怖かったのが「蜘蛛」という話。


ある日怪談話のサークルに声をかけられ、気が進まないまま四谷の集会場へ赴く遠藤さん。そこで一人の見知らぬ青年がこちらをジッと見ていることに気付く。何となく不愉快な感を受けたものの、先に店を出て家路を急ぐ。外はあいにくのどしゃ降りでタクシーがなかなかつかまらずに途方に暮れていると、さきほどの集会にいたあの青年が一台のタクシーに乗っていて遠藤さんの目の前に止まってこう言った。

「どちらまで行きますか?」


たまたま同じ世田谷方面だったこともあり、同乗させてもらうことにした遠藤さん。
さっきの怪談話は実にバカバカしかったと言うと、その青年はある話をし始めた。

彼の友人の女が外国に旅行に行った時、ある寄生虫に喰われたというのである。
その虫は皮膚の中に潜伏し、どんどん繁殖していくらしい。その女性はそんなことに全く気付かず医者に行ってかゆみ止めの軟膏をもらうのだが一向に良くならない。黒いあざはどんどん大きくなり、しまいには痒さに耐えられずに爪でかくと、グジュグジュに膿んだ皮膚から小さな黒い微生物がたくさん爪について出てきた、という話をする青年。

そしてその青年にも小さなあざがあることに気付く遠藤さん。
突然その青年は「ここで降ります」という。
自宅はまだ先立ったのでは?と声をかけても何も言わずに降りて雨の降る暗闇のかなたへ消えてしまった。当時は何もない田畑が広がる地域である。外は雨足が強まってきてタクシーの窓を叩き打つ。運転手が遠藤さんに話しかける。「なんかあのお客さん、気味が悪かったですね」

そうだね、と言ってふと彼が座っていたシートをみるとうっすらと濡れていてそこには紛れもなく小さな動く微生物が一匹うごめいていたのだった。




こういうのって怖いというより、気持ちが悪いですね。



その他目次

・三つの幽霊
・黒痣
・私は見た(←ギャグでした)
・月光の男
・あなたの妻も
・時計は十二時に止まる
・針
・初年兵
・ジプシーの呪
・鉛色の朝
・霧の中の声
・生きていた死者
・蘇ったドラキュラ(←ギャグでした)
・ニセ学生
・あとがき









そういえば、例の私の人生を大きく変えたといっても過言じゃない遠藤作品のハードカバーを手に入れました!
かなり感動しています。しかも3冊セットでたったの1,500円でした。
最後のページにある「付録」もちゃんとついていて泣きたくなりました。文庫本では読めない特典です。
絶版になってもこうやってAmazonで買えるのですから、本当に良い時代になりました。

これが、まさに私が中学三年生の時に図書館で借りた本そのもの。


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※過去記事はこちらから
「王妃 マリー・アントワネット/遠藤周作
http://blogs.yahoo.co.jp/beabea642001/18897049.html