世界ふらふら放浪記

雑記と人生の備忘録

ミッドナイト・エクスプレス

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ミッドナイト・エクスプレス(1978年、アメリカ)

監督:アラン・パーカー
脚色:オリバー・ストーン
主演:ブラッド・デイビス、ジョン・ハート

(あらすじ)
旅先のイスタンブールで麻薬不法所持で捕まったビリー。禁固4年の実刑を受けるも、トルコ政府は麻薬密輸の取締りを強化することを決定しその判決は覆される。国際情勢の狭間で犠牲となったビリー。自由への道とは、そして人の狂気の移りゆく様を取り上げた実話の問題作。


まず、この映画を観るまで、ミッドナイト・エクスプレスが「脱獄」を意味する隠語とは知りませんでした!




1. イスタンブールという舞台
1978年の作品なので当然まだデジタル化される前の映像だし荒いんだけど、そういう品質云々じゃなくて、とにかくカメラワークが非常に印象的。イスタンブールの雑踏や寺院、イスラムな異国情緒がとてもエキゾチックでアメリカ人が上手に浮き彫りされていました。こういうところもいい。


2. 閉塞状態の前にぶらさげられた自由という名のパン
当時のアメリカはあの悪名高きニクソン大統領。とはいえども、トルコに比べたら生活水準に雲泥の差がある国からみたら、トルコなんて本当に第三世界な感じだったんでしょうね。法律とか規律なんてあってないような、そんな国で牢獄での判決を待つその様は、まるでドックレースの犬のように目の前にパンをぶらさげられて走らされるようなもの。夢や希望が実現しないものだということに気付いてくると、いつの日か精神状態が崩壊していく。絶望はおそらくその決定打。(地獄の黙示録を思い出した)



印象的だったのはこのセリフ。

「法とは一体何なんだ。今日合法でも明日になれば違法だと言う。4年の歳月の間、私は罪を十分にあがなったつもりだ。しかし、罪とは何だ。罰とはなんだ。どうやっても答えはまた流されてしまう。」




私もモロッコで似たようなことを思いました。
その不満をイタリア人にぶちまけたら答えはこうでした。
「だってアフリカだもん。」


だってアフリカだもん・・・この一言はなんか重い。その言葉にはどこかイスラム民族に対する卑下的な気持ちも込められているでしょうね。だから素直にそうだねとは言えなかった。しかもモロッコだけじゃなくてイタリアでも同様のことを何度も思ったのですから。「じゃあここもアフリカと一緒じゃん」とつぶやきたくなるのをグッとこらえ。
つまり、理不尽なことが世の中多すぎるから争いや戦になるのでしょうね。そんな気がします(正当性とかが問題ではないのだと思います)。やっぱり国や政府が安定していないとダメなんです。


この映画ではさらに、人が極限状態に陥ったときの精神が破壊されていく様子をとても丁寧に描いています。
まさに生き地獄。

映画の中で囚人役であるジョン・ハートは刑務所の中でこのように皮肉っている。
「ミッドナイト・エクスプレス。でもここにそのエクスプレスが停車することはない。」



刑務所モノで有名なのは「ショーシャンクの空に」ですが、私は断然「告発」が好きです。
クリスチャンスレイターとケビンベーコンのアルカトラズ刑務所で起きた虐待を告発した、こちらも実話となっております。初めて観た時の衝撃的たるや。これも結構いい映画ですよ。人の真価とは何かとか、刑務所の野放しな管理体制などかなりシリアスな社会派ドラマとなっています。死刑を問題視する前に、まずこっちの問題を解決する方が優先かもしれません。
もしよければ参考までにどうぞ。


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でも数年前のイラクでもまた同様のことが起こっているんですから、結局何も変わっていない。
その事実の方が怖ろしいと思います。