世界ふらふら放浪記

雑記と人生の備忘録

エンリケッタさん

私が同居していたイタリア人でエンリケッタさんという人がいました。

エンリケッタさんの家はモンテ・ヴェルデというローマでも比較的土地柄のいいところにあるアパートの最上階に住んでいました(賃貸)。2DK+庭付きでこじんまりとしたとってもステキなアパートでした。ただしエレベーターはありません。

エンリケッタさんは公務員の仕事をしていて忙しく、日中もいろんな人から留守電にメッセージが入ります。
(私はけして電話はとってはならないルールでした)

エンリケッタさんは家でほとんど食事をしませんでした。

エンリケッタさんはカラブリアの出身でした。

エンリケッタさんはイタリア人の割には小柄でした。

エンリケッタさんはあまり愛想のいい人ではありませんでした。

私はエンリケッタさんの育てていた観葉植物をうっかり枯らしてしまいました。

お詫びに新しいのを買ってプレゼントしたらエンリケッタさんはとても喜んでくれました。


ある日エンリケッタさんはこう言いました。
「明日私の姉がカラブリアから上京してくるの。だから家に泊めるけどい?私は明日からしばらく友達の家にいるから明日お姉さんがいてもびっくりしないでね。」
もちろんですと答えました。私に拒否権は当然ありません。

翌日私は遅くまで遊んで深夜過ぎに帰宅しました。
そして朝起きてバスルームに行こうと台所を横切りました。
すると台所の方の人影が視界に入ったので、お姉さんが来ているんだと思って挨拶しようと立ち止まると・・・。




真っ黒なメガネにくちひげを生やした中年男性がランニングとパンツいっちょうで台所に立っていました。


・・・お互い固まったまま長い沈黙。


しばらくしてランパンが口を開いた。

「チャオ。」


あれあれ??
エンリケッタさんは確かに「お姉さんが泊まる( la mia sorella dorme da me.)」と言ったんです。
男だとは聞いてない。
この人は一体誰?
この人はいつまでいるの?
エンリケッタさんはいつ帰ってくるの?
たくさんの疑問詞が頭をかけめぐる。

どうでもいいけど、へん。

面識もない見知らぬ男性とある日突然一つ屋根の下で暮らす。
エンリケッタさん、いくらなんでもそれはないでしょう。
ボーイフレンドを連れ込んだくらいなら全然驚きもしませんが、ある日突然面識もない見知らぬおっさんと同居ですよ。


そのあと一週間くらい口ひげランパン男は沈黙のまま滞在し、エンリケッタさんが戻ってきました。
彼女とこの件についてどんな会話をしたか不思議と全く覚えていないのですが、一ヵ月後にたまたま他のアパートの空きが出たのでそっちへ引っ越しました。



これはエンリケッタさんの家。
うちの両親にあてた写真で、一人虚しくセルフタイマーで撮影したものです。



一人ピースで元気をアピール

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一人勉強のフリで勤勉さをアピール


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エンリケッタさんの家にはトカゲがでました。怖くて部屋の鍵をかけて寝ました。

口ひげランパン男の時は日中でも鍵をかけました。

私の部屋はおそろしく陽当たりが良かったので日中はシャッターをおろして出かけました。
イタリアにクーラーなどない。


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時々登場するこの写真はエンリケッタさんちの台所にある小さいバルコニーの方(洗濯干し場)で撮影したもの。

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良い午後を。ボン ポメリッジョ。