世界ふらふら放浪記

雑記と人生の備忘録

シャイン

ディヴィット・ヘルフゴットというオーストラリアのピアニストをご存知でしょうか。
知らない間に来日していたらしく、さっきそれを知って愕然としてしまいました。

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シャイン(1995/オーストラリア)



実話です。
楽家を目指す一人の青年は、天才と呼ばれイギリスへ留学します。しかし父親からのあまりにも大きな重圧の為にコンクール当日演奏の途中で突然倒れてしまい、以来こころの障害を抱えてしまう。それまでの人生がガラリと変わり、彼はいかにしてそれを克服し人生を謳歌していくかを綴っている映画です。

この父親と息子の間に立ちはだかる大きな壁と重い愛情が交差し、それらを孤独にたった一人で受け止めながらコンクール当日に彼が弾く「ラフマニノフピアノ協奏曲第3番」のシーン。その姿に胸が詰まって仕方がなくて、私は毎回泣いてしまいます。
彼がこころをわずらってしばらくしてから立ち直るまで、彼は酒場で再びピアノを弾き始めます。小さい小さいピアノバーでその腕をかわれ、一度は諦めたピアノを再び弾くようになるのですが、一度だけ彼の父親が彼のところを尋ねてはるばるオーストラリアからやってきます。あの頃の面影はどこにもない変わり果てた息子の姿をみて、父親は何を思ったのでしょうか。切なすぎます。

彼がもし、以前のままであったならば、確かに世界的なピアニストになっていたかもしれない。
けれど訪れた逆境はあまりにも衝撃的で、夜の海の深い闇のように彼を覆い、全ての記憶を遠くへかき消してしまった。

しかし結果的には世間体や家族のプレッシャーを感じることもせず、自分らしく生きていける方法を見事に見出しどん底から這い上がったわけだから、やっぱりそれは素晴らしいピアニストであり、一人の立派な人間なんだろうなって思う。どんなにあらゆる逆境に自己を破壊されても、魂はいみじくもちゃんと、自分すらも気付かない場所でひっそりと輝き生き続けている。
"シャイン=輝き"の持つ本当の姿。
ラストで彼はこう言います。
「それでも人生は続いていく。」



一度だけ、彼の演奏を観に行った事があります。
それはローマのシスティーナ劇場というところで、2階後ろの一番安いシートを一枚買い、ドキドキしながら行ったその日の夜。彼が何を演奏したかはもう覚えていませんが、すごく感動して鳥肌が立ったのだけは覚えています。

その時に買ったCDがこれ。
チケットの半券を大切にはさんで、どこに行くにもどこへ住むにも必ずこのCDともう一枚の宝物/Beleza(この人のは既に廃盤になっている)だけは肌身離さず持ち歩いていました。ヘルフゴットのCDを年に数回、ケースを開くたびに、ラフマニノフを聴くたびに、あの日の夜を思い出したものです。

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しかし、数年前にちょっとした事件があり、・・・・このCDが行方不明になってしまいました。
バカみたいだけど立ち直るのに数ヶ月かかり、今でもこれを書きながら暗い気持ちになってしまいます。買いなおす気にもなれなかったけど、今日この記事を書くにあたり国内でも販売していることを知りました。。。


今回の来日で、結婚した奥様と仲良く写真に映っているのをみて、すごく嬉しく思います。
もちろんヘルフゴットさんは私のことなんて知る由もないのですが、私としては随分親しくしてもらった家族に再会したような感覚です。

しばらくこの映画を観ていないけど、また今観たら違う感動があるかもしれないな。