Netflixオリジナルの「アドレセンス」を観た。
あらすじ
13歳の少年が殺人容疑で逮捕された。
殺されたのは同じ学校に通う女子生徒。
一体彼は本当に彼女を殺害したのだろうか。

ちょっと前からかなり話題になっていたので、夏休みを利用して観てみた。
4話完結の短いシリーズですぐ終わる。
感想は、正直に言って後味の悪いドラマだった。
13歳といえばまだ子供である。
それでも一人の人間としてある程度の概念を持って生きていて、その成長過程の中での善悪やプライドを持って生きている個の人間であることを思い知らされる。一方で、学校と家庭という小さな社会の中という閉ざされた世界の中で、常に何かにジャッジされて生きている息苦しさみたいなものも感じた。
個人的に見どころだと思った、まず3話目。

心理学者(女性というところもポイント)と容疑者である少年との会話劇ですべて完了するという設定。彼が未成年だからといって容赦せず少年に切り込んでいく姿はある意味残酷でもあり、堂々としている。そしてこの少年が次第に感情をむき出して挑発してくるあたりには、同じ大人としてなんともいえない恐怖といやらしさがあり、子供だからといって同情したり理解しようとする気持ちよりもむしろ嫌悪感すら感じた。
また、この章では事件の核心が吐露される。彼は亡くなった少女に下心を抱いており(恋心ではなさそう)、彼女がボーイフレンドに送ったヌード画像がネットで拡散されたことによる中傷で傷ついていたところを計画的に近づいたらあっという間にフラれてしまい、そこから彼に対するネットいじめが始まる。ハンサムでもないし男性的な魅力もなく、サッカーも下手な自分は父親の期待にも応えられない。容姿も実力が誰よりも劣っていると感じた少年はコンプレックスを抱えていたのだった。そして、亡くなった少女もそんな彼のプライドをズタズタにし誹謗中傷で彼をいじめ抜いたのだ。自尊心を傷つけられた彼はその告白をするととても攻撃的になり感情を抑えられない。それに対して先生の言葉が印象的だった。「でも彼女は死んでしまった。もう2度とこの世にはいない。あなたはそれを理解しているのか。あなたは彼女の将来を奪ってしまったのだ」と。何よりも恐ろしいと思うのは、殺害動機はなんとなく成立しているように感じても、本人に罪の意識がどこまであるのかということがよく見えないことだ。リアルな人間とリアルに関係を築くことが少なくなり、制裁を下すということが当たり前になり、承認欲求の塊で生きている人たちの現代の闇を感じるような気がした。
今日が最後のセッションだと告げると、初めは何度もしつこいと言っていた少年の態度が急に変わりまだ終わりたくないと告げる(少年がリアルな会話によって感情を爆発させ、挑発し、相手の感情を逆撫ですることに快楽を覚え始めていたからこんなことを言ったのだと思う。それはある意味暴力としか思えなかった)。そして、先生に自分のことが好きかと尋ねる。心を開きかけたと思っていた少年は、何も応えない先生の姿を見て再び怒りをあらわにし、引きずられるように留置所に連れて行かれるのだった。先生がその後、部屋で一人じっと耐えながら静かに涙を流すところが胸に迫るものがあり、なんともいえない気持ちになるのは観ているこちらも同様だった。
次の4話は家族の話。

少年が逮捕されて2年の月日が経ち、辛い道のりを乗り越えながらも家族はなんとか絆を保とおうと生活している。しかし、嫌がらせは後を立たず、近所の野次馬にも耐えながら引っ越しをしようかとも考えるが、結局どこに行っても過去を消し去ることはできないし、好奇の目はどこまでも自分たちを追いかけてくるだろう。そうであれば、この地で生きていこうと決断する。
この最終話の見どころはなんと言ってもラスト。父親と母親が、自分たちがいかに子供達に接してきたか、何がいけなかったのかを省みるのだけど、客観的にみても至ってごく普通の一般の家庭だ。裕福でもないが貧しくもなく、教育がないわけでもなく酒乱でもない。家族は仲が良いし、戸建ての家にも住んでいる。
つまり、犯罪というのは私たちの日常のすぐ隣り合わせにあり、その発端は決して家庭環境が悪いということだけに限らないということ。少年の犯罪についても、彼の未成熟で感情的な怒りの行動がすべてを狂わせてしまったということ。「家に帰ってきて部屋にいれば特に問題はないのだと思っていた」という父親は、その小さな子供部屋の中でネットリンチや許しがたい誹謗中傷でクラスメイトとの社会構造を歪ませ、大事な成長過程である思春期の人格形成に大きな影響を与えているとは夢にも思わなかったのである。
父親は子供の頃、自分の親から叱られるときはベルトで殴られるなどの体罰を受けた。だから、自分の子供には同じようなことはするまいと誓って子育てをしてきた。それなのに、子供は殺人という想像もしていなかった罪を犯してしまった。父親が最後、もうそこには誰もいない少年の部屋に入り、堰を切ったかのように泣き崩れ、「悪かった」と謝るシーンは、子供がいない自分ですら涙腺崩壊してしまったので、お子様を持つ親ならば誰しもが胸を打つことだろうと思う。実際に悪かったのではないのだろうけど、親ならそう思ってしまうのだろうと思う。
誰かが間違っていたわけでもなく、ごく当たり前に生きている日常の中に、ある日突然地獄がやってきてすべてが壊れてしまう。そういうことは本当にあることで、私たちはそういう過酷な状況でも受け入れ、生きてしくしないのである。ただし。そんなふうに割り切るまでの長い道のりは、きっと容易なことではないだろう。
ということで、大変後味の悪いドラマではあったけど社会派ドラマが好きな方には相当見応えのある内容なので、いろいろ考えさせられて欲しいし、そういうドラマもたまにはいいのではないかと思う。ドラマや映画で学ぶというのはまさにこういうことを言うのではないだろうか。
2025年3月からNetflixにて配信中
あと、このドラマの凄いところが、すべてオールワンカットシーンなので、なおさら臨場感が増すところが斬新だった。セリフを覚える人は45分間ノーカットなので全部頭に叩き込んでおかないとならない。