世界ふらふら放浪記

雑記と人生の備忘録

バルカンの余映 | 天羽民雄

 

仲良しの友達がセルビア人ということもあり、旧ユーゴスラビアに関する本をせっせと集めています。現在よりも昔の話を知りたくて、古い本大歓迎なのであります。

 

初版 1988年8月20日

 

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この本は当時ユーゴスラビア大使だった著者の方が経験した当時のベオグラードユーゴスラビアの話です。やはり大使という立場もあるので、あまり国を批判するようなコメントは控えられていて、どちらかというとユーゴスラビアの良い面を丁寧に書いておられました。文体にもどことなく優しさを感じ、もっとバルカン半島が良い国であることを世界にPRしたいという主旨に心から共感しました。

 

著者からみる旧ユーゴ人の特徴

  • 強靭な忍耐精神→ 飛行機や電車の遅延もなんのその、何時間待っても平気
  • 問題の存在無視→「ネーマ・プロブレマ(どうにかなるさ)」
  • 巻尺があてにならない→ 計測が適当(な人もいる)
  • 店員が雑→ 買った服のボタンが一個足りないと言ったら新品から剥がして渡された
  • 言い逃れ→ 著者いわく悲しい過去が原因か
  • 早朝型で午後はフリー→ これは欧州にはよくあることです
  • 飲み食いふかししゃべる→ よってバーやカフェ文化が根付いています
  • 豪雪地帯でもある→ 冬はスキーが有名

 

こちらは自分の個人的な印象

  • スラブ民族なので顔立ちや言語は限りなくロシア寄り
  • セルビア正教カトリックムスリムもいる)
  • トルコに侵略されていた過去がある(トルコって本当に強かったんだ)
  • 文字が2種類存在している(キリル文字と一般の文字)
  • 人見知りが多い
  • 基本的にすごく優しい(いい人が多いしいい人にしか会ったことがない)
  • 親日家が多い(どうしてなんだろう)
  • 筆跡がきれい
  • 音楽愛好家が多い
  • 整頓好き
  • ユーモアのセンスがあっておもしろい
  • 美男美女率がはんぱなく高い
  • 身長の高い人が多い

 

 

欧州からの目線

ユーゴスラビアというかバルカン半島の国々というのは、かつての凄惨な過去や多くの難民を抱えている背景もあってどうしてもうがった目で見られがちであることは事実。そもそも論として、ヨーロッパ大国というのはEUではない近隣諸国を敵視する差別みたいなのはどうしてもあります。それには彼らを悩ませる組織犯罪や難民問題が背景にあるのですが、やっぱりヨーロッパというのは俺様根性があるのはもうしょうがないことなのでしょうね。だからこそ、勉学に励み知識と教養を養っていく自己努力を怠らない近隣諸国の人々の姿勢を心の底から尊敬しています。そのプライドはきっと必ず自分を守ってくれるのだと私も信じてやみません。

 

 

イタリア人の偏見

著者の方がヴェネツィアに旅行に行った時、イタリア人に「泥棒の国からよくいらっしゃいました。ユーゴは治安が悪くてひどいところなんですってねえ。ヴェネツィアはその点安全ですからどうぞゆっくりなさってくださいね」と言われたそうなのですが、著者はベオグラードに4年住んだけれど、お金をぼったくられたり物を盗まれた経験はなく、治安は大変良かったと断言されていました。かくいうイタリアこそ泥棒ぼったくり天国であることは間違いないのですが、私もイタリアに暮らしているときは同じように思っていたし、そういう国なんだと周りがみんな信じていましたから、潜在的インプットというのは恐ろしいものだと感じています。価値観というのはそのような思い込みや誤った情報によって築き上げられるものだから、簡単に周りの情報やメディアに流されないように自分の意見をしっかりと持つことは大変重要だと考えます。

 

 

 

 

 

ベオグラードの川沿いの風景。

こんなふうに日常を過ごせることが羨ましい。

 

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私が訪れたのは2015年の8月。

夏は40度近くなるので、みんなこうやって川辺にきて散歩したりお茶したりしていました。

 

 

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ベオグラードにはドナウ川とサヴァ川が合流するところがあり、市民にとってこの川は永遠のふるさとの風景なんだそう。

 

 

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「あくまでも私的な経験に基づいて書いたこの本が、日本、ユーゴスラビア間の相互理解、特に日本の対ユーゴ認識促進への小さな一助となることを念願する」著者あとがきより

 

 

他にもたくさん旧ユーゴに関する書籍があるので、たまに気が向いた時にゆっくり読んでいきます。