世界ふらふら放浪記

雑記と人生の備忘録

川内有緒さんの元気が出る本

川内有織さんというドキュメンタリー作家の本「晴れたら空に骨まいて」がとても気に入ったので、この作家さんの本をコツコツ買い集めて昨日全部読了しました。

 

 

 

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「パリでメシを食う」は川内さんが実際にパリで出会ってきたパリにすむ日本人の話で、

「パリの国連で夢を食う」は川内さんの自伝。

パウルの歌を探しに」は、ネパールにいる伝説の歌唄いを探しにいった冒険日記で

「空をゆく巨人」は中国人のアーティストと日本人の長い交流と軌跡をたどった話。

「晴れたら空に骨まいて」は亡くなった故人との向き合い方。前回書評済。

 

 

 

この著者の本を読んでいると、なんだか元気が湧いてきます。何かに戦っている人や頑張っている人が、ひたむきに生きている姿に感動するのです。NHKスペシャルとかプロフェッショナル観てるような感じです。

 

 

しかし、なぜだか分からないけど川内さんの本を本屋さんで見つけることがほぼ難しい(パウルとパリはほぼ皆無)。こういう良本が人々の目に留まらずにいるのは残念です。インターネットで買う本はあらかじめ欲しい本が決まっている時に買うことがほとんどかと思うけど、本屋というのはずらりと並んだ選択肢からピックアップするという買い方をするので、やっぱり本屋に置いてあってなんぼの世界なんですよね。この方は第33回新田次郎文学賞、第16回開高健ノンフィクション賞を受賞しています。肩書きがあればそれなりに世間からも目を向けられるはずなのに本屋で本が見つからないのだろうと不思議でなりません。

 

 

 

「パリでメシを食う」

一番おもしろくて何となく自分の経験と似てる(←図々しい)と感じたのは「パリでメシを食う」かな。今もそうだけど、パリとロンドンはヨーロッパの中でも群を抜いて大都会そのものでした。それぞれの街を訪れたときはそのスケールの大きさと情報の多さにひっくり返りそうになるほどのカルチャーショックを受けました。当時ローマの日本人コミュニティは5グループくらいしかなかったことを考えると圧倒的な違いです。私が暮らしていた時代とどこまでオーバーラップしているかは分かりませんが、そんな大都会パリで頑張っていた日本人のことをまるで友達の話のように身近に感じて読みました。そして当時夢に向かって歩き始めたもののあっという間に気が変わってしまい、とにかく思いつきで生きていた自分を懐かしく振り返るのでした。な〜んにも結果残さなかったけど。

 

 

継続することは大変なことで、諦めることは簡単。それなりに努力が報われている人の話を聞いて共通しているのはやっぱりある程度信念を貫いて継続し経験を重ねていかないと、物事って好転していかない。もちろん奇跡の偶然で突然駆け上がっていく人もいるけど、そんなのは一握りだから。だけどどんな状況でも変化は必ず訪れる。そこで変わるか変わらないかは、意味が全く違う。その変化が大きな分岐点なんだろうな。そこにたどり着くまでは、やっぱり歯を食いしばるべきなんだと思う。何が正しいかなんてやってみないと分からないけど、間違ったと思ったらいつでも方向転換すればいい。決断ってそうやってどこかに受け皿持っておかないと不安になるものですよね。

 

 

「パリの国連で夢を食う」

元国連職員でパリ本部にお勤めした経験を書いた「パリの国連で夢を食う」も非常におもしろかった。ものすごい倍率をくぐり抜けて国連の正規職員になった著者川内さんのパリでの仕事や生活の話がとにかくリアルでおもしろい。一体どんな仕事をしているのか、何がミッションなのか(前線に行って各国を飛び回る仕事は限られていて実際はデスクワークメインだったので退屈してしまったと言っていた)、国連職員は緑色のパスポートを持たされる、免税カードが発行され特定の場所で買い物ができる(ローマにも同様の施設があり友人が破格で化粧品を買っていたのを久しぶりに思い出しました)、職場の同僚にはどんな人がいるのかなど、知られざる世界と現実の日々をおもしろおかしく綴っています。楽しい本でした。

 

 

あたたかく見守る女性ならではのエッセイスト目線

また、著者の方が自伝以外に書いたノンフィクション、「パウルの歌を探して」「空をゆく巨人」は、日本ではあまり知られていない人たちについて詳しく書かれています。これについては読み手が興味を持てばおもしろいかもしれないですが、どちらかというと何かを大成(あるいは達成)するための過程がとても丁寧に書かれているのでそこが読みどころかと思います。「空をゆく巨人」に主人公となるアーティストが登場しますが、個人的にはあまり好きになれなかったので他の作品よりテンションが落ちましたが、それでも最後までスルッと読めたのは川内さんの文章力がゆえだと確信しています。また文体そのものがとても優しいというか、あたたかく見守る目線が読んでいて心地よい。お人柄と素直な思いがまっすぐ伝わってくるような文体です。ルポタージュについてもしっかりリサーチもされていて、一冊本をまとめ上げるのは膨大な研究量なんだろうと大変感心させられます。もともと好きな分野だったら蓄積されてきた知識が助けてくれるでしょうけど、全く関連のなかった分野を一からとなれば、その苦労は並並ならぬものかと想像します。

 

 

 

とにかくどれを読んでも元気が出る本。

全部まとめて大切に本棚にしまいました。

新刊が出るのが楽しみです。

 

 

 

 

 

わたしも「ローマでメシを食う」でも書いてみようかしら。

は、でももうだいぶ昔のことになっちゃったからもうダメだ。大したことやってないし。

 

 

ちなみにイタリア生活についてはこのブログの書庫「ドルチェ・ヴィータ」や「イタリア悲喜こもごも」に書いてます。

「悲喜こもごも」はイタリアの信じられない話などがメインで大方書き尽くしたけど、ドルチェの方はまだ終わっていません(全く更新してないけど)。ドルチェは大事な思い出がたくさん詰まっているシリアスモードな内容なので何かが憑依してこないと書き上げられません。でもそのうちちゃんとやる予定。