世界ふらふら放浪記

雑記と人生の備忘録

孤高の人 | 新田次郎

去年の夏に海で読んだ井上靖さん「氷壁」に続いて、山小説「孤高の人」を読みました。

 

 

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古本で買った為色あせ具合が異なるけど、それよりも上下巻でそれぞれ山が違いますね。てっきり同じかと思ってました。

 

 

いや〜、、またまた衝撃のラストまで一気に不吉な予感のままグイグイ持っていかれ、最終ページでは涙してしまいました。主人公の加藤という登山家の孤独な生き方に、時にヒヤヒヤし時に惚れ惚れし、質実剛健という言葉を絵に描いたようなキャラクターに大変好感が持てました。

 

以下、軽くネタバレです。

 

単独登山家として名を馳せた主人公加藤も結局はパーティーを組まされたせいで不幸な一途を辿ってしまいます。強い正義感と思いやりによって仲間をかばい自らをも犠牲にしてしまうくだり、幻聴や幻想によってこれまで人生で出会った人々を回想し家に帰るあたりは思い出しても涙が出ます。あんなにアルプスを目指して頑張ってきたのに、自尊心と傲慢の塊みたいなおかしな後輩とその父親のせいで、、やっぱり自分なりのルーティーンって崩しちゃいけないんだなと思いました。情にほだされるのもほどほどにな!というメッセージと受け止め(違うだろうけど)、己にも言い聞かせるようにしたいと思います。これからも一人で旅しよっと。

 

人はいつか亡くなるものだしそれは宿命なのだろうけど、タイミングってあるような気がしていて、もういいやと思える時期とそうでない時期では受け止めかたはだいぶ変わってくるんだと思うのです。その悲しみに残された人たちは否が応でも立ち向かっていかなければならないことも宿命なのだとしたら、人生はやはり厳しいものだなと思いました。

 

昭和小説はつくづく人生ドラマにおける秀作が多いですね。