世界ふらふら放浪記

雑記と人生の備忘録

ゆるゆると、「アニー・ホール」

「ウッディアレンって良く聞く名前だけど、どんな映画なんだろう。」
確実に覚えているのはあれは高校生の頃だったということ。
そしてもうひとつ確実に覚えているのは「全然理解が出来なかった」ということ。

考えてみれば17歳の頃の私が40歳のウッディアレンを理解するなんて当然無理な事だし、そんな事ができたらある意味、やばい高校生だったでしょうね(プッ)。というわけで何年もの時を経て観たんですが、これがおもしろかったんですよね。まー、ウッディアレンは賛否両論好き嫌いがはっきり別れるし、見た目もハンサムではないだけに万人ウケはしないのでしょう・・・。




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(あらすじ)
NYに住む一組の男女の出会いから別れまで。以上!

(冒頭のウッディアレンの小話)
ある夫婦の話。レストランでの食事。「ひどい食事だ」「ほんと、盛りも少ないしね」
これが僕の人生観です。人生は短く悲劇的でみずぼらしいしあっという間に過ぎていく。
またもう一つ僕の好きなジョークがあります。「僕を会員にするようなクラブには入りたくない」これは女性関係に言えることなんだよね。あのね、40にもなると考え方も変わってくるんだよ。頭だって禿げてきたし。いや、いーんだよちょっとくらい禿げたって。歳を取るのが怖いんじゃないよ。禿げの方がロマンスグレーよりもちょっと強そうな感じがするだろ?今のところ僕はその中間にいるんだけどね。
アニーと別れた事は今でもとっても未練が残ってる。前はあんなに好きだったのにな。あれこれ考えるけど・・・(慌てるジェスチャーで)でも僕は別に深く落ち込むタイプの人間ではないんだよ!


これを読んで「ウッディアレンおもしろいじゃない?」って思ったら観てください。
「何だか詭弁ばっか並べてつまんない、良く理解できない」って思ったら無理にお薦めしません。

1. NYの恋人同士の会話、リズム
アルビー(ウッディ)はどちらかというと冒頭の小話にもあるように悲観論者。だからアニー(ダイアン・キートン)と本屋さんに行っても「死」に対する本をプレゼントしちゃったりする!
「これが僕の原点でありベースなんだ」(笑)
で、別れ間際に荷物の整理をしていたらその本が出てくるんです。
「あ、これは僕が君に最初にあげた本じゃないか」
「あぁ、ほんとね。あなた死についてはすごく熱かったもんね」彼女は冷静です(笑)。
「別れるって言っても、また付き合いたくなったらよりを戻せばいいんだしな」
「そうよ」大したことじゃない。そういって別れる二人。
あとあとアルビーは彼女に「あんたなんて死ぬことばかり考えてて人生をちっとも楽しめない人間じゃない」ってピシャーンと言われちゃいます。フラれた挙句のトドメで撃沈(笑)!!
このシーンを否定してるわけじゃありません。なんていうのかな、ある種ありがちな会話だと思うんです。一方は何かについてすごく真剣なのに、かたや一方は無頓着、みたいなね。そこがいい。うまくいえないけど人間関係ってそうやって交錯してるし。なんか全体的に会話がおもしろいんです。

2. ブラックユーモア
全編に渡るウッディアレンの知識人とでも言うべき語り。ユダヤに対する当時の世間一般に対する不満、映画館でウンチク語る大学教授に腹を立てるところや一般人を見下しちゃうところなど、ただ淡々と不平不満をぶちまけるブラックユーモア。それに彼のコメディセンスがエッセンス的に入り込んで更に更にアイロニック。笑えます。

3. カットワーク
70年代としてはおそらく珍しかったであろうカットワーク!ここでは語りません(長くなるから)。すごく斬新で非常に興味深いしコミカルですねー。



詳しい事はよく分からないけど、当時映画を作る人って今みたいにいっぱいいたんだと思うんですが、いわゆるインディーズからのし上がってきた人達が自分の自己主張をする場所を映画になぞらえていたような時代背景があるような気がするんです。時代が変化しつつある時代・・・「自分はこういう空気の映画を作りたい!」って一歩脱皮するような。だから当たり前のものが違うものへと変化していく。それぞれの個性や主張を吐き出す、ゴテゴテのエンターティメントを作る人もいれば、「ザ・俺(私)の主張」一辺倒で作る人もいたり・・・デビットリンチ、スコセッシ、スピルバーグ、デ・パルマ、コッポラ、キューブリック・・・調べてないから分かんないけど多分同世代ではないのかな。

そういう意味で考えてみてもこの映画は、ある一人の表現者の世界観としてみても興味深いと思います。それに好きだった女の子の名前が映画のタイトルなんて粋だと思うんですけどね、個人的には。
(ダイアンキートンの歌声がまた・・・素晴らしい)。


「マッチ・ポイント」も観たいんですけど新作なのでいつもレンタル中なんです。
メリンダとメリンダ」も興味深かった。
近所のTUTAYAではこれを「失敗作」なんてコメントしてあったけど、ウッデイアレンの映画を失敗作と堂々と書くには相当の覚悟が必要です。彼の知識の泉に張り合えるほどのインテリじゃないと、口ではあっさりと負けてしまいそうですね(笑)。